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青と藍

作者: IDくん

書きたいこと書きました。

「少し相談に乗ってくれ」

遠くに女子たちの会話が響く廊下の隅で、友達の柴木が僕にそう言ってきた。

移動教室の帰りで、次の英語の時間までに用をたしておきたいところだったが、彼の目は真剣である。

少し迷惑そうなそぶりをしつつ、僕は話を聞くことにした。

「いや、、な?お前に聞いても仕方のないことなんだけどよ。お前はさぁ、桃乃さんと同じクラスじゃん」

その言葉でなんとなく察した。

柴木はモモノさんが好きなんだと。

「それでさぁ。ちょっと聞きたいんだが、、、」

そこで止まってしまう柴木。

しかしながら、その後に何を続けたところで僕の返事は決まっている。

「、、桃乃さんって彼氏いたりするのかなぁ、、、って」

大方の予想通りの質問であった。

「柴木はモモノさんが好きなのか?」

「いやっ、いやいや!別にそんなんじゃないけど!委員会でたまたま見かけて可愛いなぁって思っただけなんだ」

その返しは無理があるぞ。

目が自由型でバタフライしている。

しかしなんだ。

小学校で仲良くなり、高校で再開した友達が、入学して3ヶ月で好きな人ができたのは、なんだか大人になったと感じてしまう。

ここは誠意をもって質問に答えるべきだな。

確定していた答えを。


「なぁ、柴木」

「ッグ、、なんだ?」

真剣な表情をした僕と、緊張した柴木の間に一瞬の沈黙ができる。

「モモノさんって誰?」



後に聞いた話だと、モモノさん改め桃乃さんは俺の隣の席であった。

長めの黒髪に整った顔立ち、成績優秀、品行方正、社交的であるため、男女問わずに人気である。

今も友達と談笑中なのが横目でもわかった。

いや、まぁ、まだ入学して3ヶ月だ。

知らない人がいてもおかしくはないはず。

、、たとえ2週間前に席替えをした僕の隣の席であっても。

そもそも人を覚えることの苦手な僕は、よく話す男友達ぐらいしか名前が出てこない。

外見は中の中、成績はクラスで5番目くらい、運動はバレーだけ得意、趣味はアニメや漫画やライトノベル。

こんな感じのステータスである僕こと青谷は、数少ない友人を大切にすると決めているため、必要以上に周りに人を置こうと思わない。

決して友達が少ないことを気にしていることはない。

女友達は?

1人はいる。

厳密にいうと1人しかいない。

それが桃乃さんとおしゃべりをしている藍華である。

藍華とは中学からの友達だが、オタク気質なところもあり、ノリもよく合うためよく会話してたように思う。

そんな彼女も、高校入学と同時におしゃれに気を遣い、見事に高校カーストの上位の仲間入りを果たしたため少し疎遠気味なのだが。

柴木のために桃乃さんのことを探るには、藍華を間に挟むのが手取り早いだろう。

そう考えて左隣の桃乃さんと話している藍華に、頬杖をつきながら話しかけた。

「なぁ、藍華」

「でさぁー、この前食べたクレープがめっちゃクリーム多くて、」

どうやら聞こえなかった様子。

もう一度話しかける。

「おーい、藍華さーん」

「一口食べたら鼻のところが真っ白になっててー」

なぜか反応がない。

桃乃さんは気まずそうに少しだけ僕の方を見ている。

シカトされてるのだと思ってるのだろう。

どうやら僕が透明人間であるわけではないらしい。

仲良いと思ってたのは俺だけだったか。

仕方ない。

「昨日、本屋さんでBLの同人誌をファッション雑誌で挟んでた藍ッグ」

「何かな青谷くん?話があるなら、ここじゃなんだしどっか行こうか」

彼女はにこやかな表情ではあったが、僕に放ったあの手刀はガチであった。

僕でなきゃ見逃すほどに。

そんな彼女に人気のない場所に連れられると、男女のドキドキより、ヤンキーと対峙した時のドキドキ感が生まれてくる。

今からカツアゲをされるのであろう。

「最初に聞こう、なぜ知ってる」

彼女からの質問である。

「あの日、本屋には誰もいなかったはず」

「簡単な推理さ。帰り道に本屋の横を通った時、君はファッション雑誌を2冊買っていたが、その間に微妙な隙間があるのが見えてね。それでピンときた」

「なるほど、面白い推理だ。小説家にでもなったらどうだ。証拠はなんだ!証拠は!」

「証拠は、、BLを読むために徹夜したであろう君のその目のクマだ!!」

「グハァッ」

ここで犯人自供のBGMが流れる。

「くそっ、あいつが悪いんだ。面白そうな組み合わせのポップを目立つとこに置いたアイツが!」

恨むような目で地面を見つめながら彼女はつぶやく。

僕はため息をひとつし、彼女に聞いた。

「んで、いつまで続ける?このくだり」

「満足したしもういいわー」

さっきまでとは打って変わって目線を上げた彼女は、中学のときのまんまの雰囲気でそう言った。


「いやー、久しぶりアオ。最近話してなかったけど元気そ?」

「あぁ、透明人間になった夢を見るくらいには元気だよ」

軽く皮肉ってみると。

「いやー、まさかあのアオが女子トークに混ざろうとしてるとは考えられなくて、幻聴だと思ってたんよ」

こいつ、無視していたことを微塵も気にしてないらしい。

「確かに、女子トークに混ざる気は微塵もなかったし、クレープよりもラーメンの話の方が話せる自信がある」

彼女はニヤニヤしながら僕の顔をみる。

「じゃあそのラーメンマンがなんか用事?ラーメンの話がしたいならわざわざ話しかけてこないよね?まさか私に告白ぅ?」

「僕が告白するなら、テスト中に校庭の真ん中で叫ぶか、文化祭の屋上でロマンチックにするな」

真顔で答えると、彼女は「うわぁ、オタクだぁ…」と若干引いている。

「なら、普通に観覧車のテッペンとかでなら?」

「アオが普通に告白してるのは、それはそれでキモいな」

ケラケラ笑う彼女は、将来結婚できなくなればいいと思う。

「それなら藍華ならどうすんだよ」

「私なら、そうねぇ」

少し考えながら僕の正面に立って、指差しながら

「青谷くん、惚れ」

「伝わるのは物語を読むのが好きな人だけだな」

お前も僕と同類じゃないか。

「そんなことないわアオサくん。だってオタクにとって教本みたいなものでしょ。物語を読まないオタクなんて、カニカマを蟹だと思っているようなものじゃない」

「口調を寄せるな、首を傾けるな、例えがよくわからない。そして、僕の名前は青谷だ」

僕はキメ顔でそう言った。

さて、話を戻そう。

「いや、話しかけた理由なんだけどさ。藍華、桃乃さんと仲良いよね?」

「仲良いよー。一緒にけいおん部復活させるくらい。」

その場合、藍華がドラマーだな。

桃乃さんはベースって感じだし。

ちなみに我が高校には過去にも現在にもけいおん部はない。

彼女はエアードラムを叩くふりをしながら尋ねた。

「んでさ、それがどうかしたの?」

「桃乃さんって彼氏いたりする?」

彼女の動きが止まった。

いやよく見ると小刻みに震えている。

「まさか…告白の相手は私じゃなくて桃ちゃんだったとは…」

何か勘違いしているらしい。

「桃ちゃん…かわいそう…」

そして失礼なやつである。

「知りたがってるのは僕じゃない、他クラスの柴木だよ」

「誰?」

僕じゃなくても、3ヶ月で他クラスの男子全員を、知ってるわけがないので、当たり前な疑問である。

「僕の友達。桃乃さんに気があるみたい」

「アオはそのキューピッドになろうと?三種の神器を使おうと?」

「僕はスマブラに参戦する天使になる気はないよ。ただできそうなことだけは手伝いたいかな。」

彼女は納得したようなしてないような感じで頷き、何かを閃いたように僕に言った。

「よし、Wデートしよう」

よくわからなかった。

「まず、桃ちゃんには彼氏はいないはず。だから2人がいい感じになるように、Wデート風に4人で遊ぼうじゃないか」

満足そうに、そして自信満々に提案した。

Wデートなんてうまくいくとは思えなかったが、まぁもうすぐ夏休みだ。

多少エクスプロージョンするぐらいでいいのかもしれない。

この素晴らしき作戦に祝福を、だ。



夏休み開始から1週間後。

例の計画の実行日となった。

場所はベタだが遊園地。

桃乃さんが遊園地が好きという藍華の情報をもと、決まった。

作戦としては、僕と柴木がたまたまを装い藍華と桃乃さんと合流、一緒に周る流れになってしばらくしたあと、僕と藍華がその場を離れるということになっている。

なんとも杜撰なアイデアだが、漫画みたいな展開であるため、僕も藍華もノリノリである。

もちろん柴木には事前に伝えているため、現時点で遊園地の入り口で僕の隣に立つ柴木は緊張しまくっていた。

こんなんで大丈夫なのかと心配していると、藍華から合図の連絡がきた。

僕と柴木が入園すると、私服姿の藍華と桃乃さんがベンチでポップコーンを食べているのを見つけた。

僕たちは少し遠回りをしつつ、偶然を装って話しかけた。

「おっ、久しぶり。藍華と桃乃さんもきてたんだ」

「あれ?久しぶり。2人とも奇遇だね。」

「そうだねーこんな偶然あるんだねー」

「あっ、お、、うっす。」

柴木だけはなんとも言えない感じで挨拶していた。

幸先が不安である。


その後狙ってた通りに4人で行動する流れになった。

といっても、

「でさー、さっきのチョコバナナ味もそうなんだけどさー、甘い味の後に塩味食べて、で、また甘いものを食べたくなる無限ループって抗えないよねー」

「そうそう、この塩味が恋しくなるんだよねー」

と、女子2人がポップコーンの様に弾む会話をしながら前を歩き、後ろを男子2人がついていくという構図になってしまったため、2人の距離は縮められずにいた。

まぁ、隣同士にしたとしても、いつまでも空になったジュースのストローを吸っている柴木には荷が重いのかも知れないが。

柴木の様子を見ながら、もし自分だったらと考える。残念ながら今までの恋愛対象は全て別次元の、画面越しでの恋であったため、イマイチ想像つかない。

しかも3ヶ月に一度、アニメのシーズンごとに変わる恋である。

オタクとはそうもんだとわかってはいるが、少し柴木が羨ましく思う。

藍華もそうなんだろうか。

仮に、僕と同じような恋愛経験なら、やっぱりそうかと一緒に笑えるだろう。

しかし、もし藍華に好きな人がいるのなら?…

僕は考えるのをやめた。

僕の周りに透明な壁ができそうだから。


しばらく乗り物を楽しんだらしているうちに、なんだかんだで後1時間半くらいで電車の時間だ。

最後の目的である柴木と桃乃さんを2人っきりにさせるように、なにかきっかけを探していると、

「…っつ。わかった。頑張ってね!」

と桃乃さんがなにやら興奮した様子で藍華と話していた。

その後急に、

「し、柴木くん。私お化け屋敷行きたいんだけど、藍華が苦手らしくて、よかったら一緒に行ってくれない?」

といい、柴木とお化け屋敷の方へ行ってしまった。

ニヨニヨしながら手を振る藍華を見て僕は聞いた。

「どうやったの?」

「ただ単にお願いしただけだよー。『アオと2人にさせて』ってね」

なんでもないようにいう彼女。

その言葉に心臓が少し強い脈を打った。

「さて、これからなにしようか?ストーキング?」

「いや、やめておこう。話は後で聞けばいいし」

「最近、桃ちゃんを見張ってるんだけど、桃ちゃんストーカーされてるんだって、怖いよね」

「ストーカーはお前だ」

普段通りのやり取りに、心が落ち着いた。

しかし残り時間をどう潰そう。

ふと見上げると大きな観覧車が目に入った。

「あれなんかいいんじゃないか?」

観覧車を指差して藍華に提案してみると、

「あ、、観覧車?」

いつもより鈍い返事が返ってきた。

どうも乗り気ではなさそうだ。

(高いとこ嫌いだったっけ?)

いや、今日乗ったジェットコースターでは楽しそうに叫んでいた。

ちなみに柴木は最初の加速で気絶していた。

「観覧車嫌い?」

「あ、、いや、嫌いじゃないよ」

やっぱり鈍い。

無理強いは良くないなと考え、別のを提案しようとしたとき、藍華が

「スゥーーよしっ!観覧車行こう!」

と僕の手を引っ張って観覧車に向かって行った。

握る力が強いように感じたのはきっと気のせいだろう。


幸い、閉園時間が近いからか、5分も経たずに僕らの順番になった。

待ってる間は会話がなかった。

僕らは正面に向かい合うように乗り込み、少しずつ上がる景色を見ながら、ポツリポツリと会話した。

普段通りの会話をしようとしても、藍華が上の空なのである。

ずっと観覧車の窓から、空と地上を交互に確認してい

る。

やっぱり高いとこ嫌いなんだろうか。

無理させちゃったかな。

気を紛らわすために、話しかけてあげるのが優しさだろう。

僕らの席は時計の2時くらいの位置。

「そういえばさ、藍華」

「うえっ!?」

彼女はビクッと体を跳ねさせ、裏返った声を出した。

やっぱり相当怖がっているのだろう。

「いや、今更なんだけどさ、聞きたいことあるんだ。聞いてもいい?」

彼女はなにも言わずにただ首を縦に振った。

「あのさ、」

彼女の顔は暗くてよく見えない。

「藍華はさ、、」

外のライトが一瞬窓から入ってきた。

「桃乃さんに藍華がオタクなこと隠してるの?」

彼女の顔は真っ赤に見えた。

可愛いと思ってしまった。

「…え?」

「え?はこっちのセリフだぁーー!!!」

「フグッ!」

彼女から正拳突きが飛んできた。

たぶん音を置き去りにしていた。

「な、、なにをする、、、」

痛みに悶絶している様子をみても、彼女が謝る様子はない。

「はぁーまぎらわしい。まぁアオだしそんな度胸ないと思ってはいたけど」

なんでか殴られた挙句、早口で悪口を言われてる。

理不尽だ。

「んで、なんだっけ?」

その笑顔はいつも見慣れた彼女であった。

頂上を過ぎたことで安心したのかも知れない。

「いやさ、桃乃さんの前でBLの話した時に、殴られたなぁって思い出してさ。」

「殴ってないよ、手はパーだったし」

やはり手刀であった。

「まぁ無理に隠してるわけではないけどさぁ。話したところであんま盛り上がらないのわかってるからね。桃ちゃんオタクじゃないし。」

足をバタバタ遊ばせながらそう話してくれる。

「やっぱりそういう話は同志とするのが一番だよ!」

元気よく僕を指差しながらそう宣言した。

胸が温かい。

さっきまでかかっていたモヤがスーッと晴れていった。

僕と藍華は同志である。

それだけのことが僕にとってとても嬉しい。

うっかりすると涙が滲んでしまうほどに。

「…僕はBL好きではないけどね」

そういうのが精一杯であった。


地上と再会するまで、いつも通りの会話が続いて、途切れることはなかった。

僕らの位置は7時と6時の間。

「なぁ、藍華」

「ん?なにー?」

「、、やっぱりいいや」

今は聞かなくていい。

今はまだ。

「そろそろ柴木たちと合流しようか」

「そだねー、早く帰らないと赤鬼出てきちゃうし」

「あいにく僕の時計は友達を召喚できないんだ」

「ルーレットはできるかもよ?」

「まさかのスリーでしたか」

こんな会話を楽しむとしよう。



遊園地から数日後。

遊園地からの帰り道は特に事件も起きずに、いや、事件はあった。

柴木が桃華さんと付き合うことになったのだ。

企画に参加した僕がいうのもあれだが、あのWデートでなにがあったらそうなるのか。

今度じっくり柴木を問い詰めるとしよう。

それはそうと、僕は今、本屋にいる。

特に用事もなかったが、暇つぶしにライトノベルの新刊でも眺めようかと来たのだ。

買うつもりはなかったが、面白そうなポップに釣られ、新しいラブコメものを手に取りレジに並ぶ。

すると、前に藍華が買っていた雑誌がラスト一冊残っていた。

パラパラとめくってみると、あるページに目が止まった。

『夏休み、絶対に彼を虜にするデートコース別デート服特集』

コテコテに古臭い特集であったが、目が離せなかった。

その一つの遊園地コーデに見覚えがあったのだ。

あの日、僕に指を刺したあの姿に。











楽しかったです

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