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ゴブリンは巣立つしかなくなりました3

 レビスはドゥゼアの説明を真剣に聞いている。

 強くなることにも真摯的ならゴブリンといえど成長の可能性もある。


 レビスの血も止まったので巣に帰る。

 狩りも成功して腹も満たされた。


 良い夢でも見られそうな気分だった。


「……まて!」


 しかし良いことは続かない。

 響き渡る悲鳴、怒号。


 駆け出そうとしたレビスをドゥゼアは止めた。

 慎重に巣に向かってみる。


 そこに広がっていた光景にレビスは思わず槍を落とした。


『死ね、ゴブリン!』


 巣が襲われていた。

 襲っているのは人間の冒険者で巣の前にはゴブリンの死体が数多く転がっている。


「いか、ないの?」


 レビスがドゥゼアを見る。

 まだ冒険者は戦っている。


 加勢に行けば助けられるかもしれない。


「……俺は行かない」


 非常に冷酷な判断をドゥゼアは下した。


「ど、どうして!」


「今から行っても間に合わない。


 冒険者と戦ってもただ死ぬだけだ」


 遅かれ早かれこうなることは予想できていた。

 ゴブリンの巣にはたくさんの武器があり、ドゥゼアたちは多くが同時期に生まれた。


 つまりあの巣のゴブリンは人に近いところまで人を襲っていたのである。

 これまでは成功していたようだけど目についてしまえばゴブリンの巣などあっという間に潰される。


 その前に力をつけて抜け出すつもりだったのだけど新しいゴブリンが後を尾けられでもしたのかもしれない。

 あるいは人を襲ったゴブリンが失敗したのかもしれない。


 いずれにせよゴブリンの巣を潰すために冒険者が送り込まれた。

 しっかりと巣を潰すならそこらを歩いている初心者冒険者が来るはずがない。


 命を投げ出せば1人ぐらいは道連れに出来るかもしれないがそうしたところで何も残らない。

 運が良かったのはドゥゼアが外にいた時に起きていたということ。


 死んで次のゴブ生に期待してもいいが死ぬのだって痛いし、このゴブリンたちには愛着などまるでない。


「レビス、どうする?」


 ドゥゼアは生きることを選択する。

 育ててくれた恩はあるが命を投げ出すほどのものじゃない。


 レビスに関しては少し惜しくあるが他のゴブリンと運命を共にしたいのなら止めない。

 そうしている間にまたゴブリンが切り倒される。


 巣とドゥゼアで揺れるレビスは槍を拾い上げる。

 そしてその視線を巣に向けた。


 賢いといってもゴブリンはゴブリンだったかとドゥゼアは思った。

 そっとレビスと巣に背を向けて歩き出すドゥゼア。


 いつまでも巣の周りにいては冒険者に見つかってしまうかもしれない。


「待って!」


「いいのか?」


「私、あなたに付いていく」


 レビスは巣に向かわなかった。

 最後に目に焼き付けていたのだ。


 自分の生まれたところを、そして胸の中で別れを告げていた。

 今からレビスが助けに入っても無駄なことは分かっていた。


 でもこれまで助けてくれたのはドゥゼアであり、まだ恩も返せていない。

 生きる。


 単純な選択であるが残酷で、非情な選択。

 ドゥゼアにとっては少し計画が早まったにすぎないがレビスにとっては大きな選択である。


 こうなったらレビスの命についても責任を持たねばならないなとドゥゼアは思った。

 今回のゴブリンとしての生は一体どうなるのか、それは誰にも分からないのであった。

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