表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/324

ゴブリンはワーウルフに感心しました2

 癒しと強化も通常魔物が持つことは少ない力である。

 自己再生力が高く、人よりも魔物の方が能力も高い。


 群れをなしたり共闘したすることはあっても他の魔物を支援するという意識はあまり強くない。

 共生しているような魔物で弱いものなら他の魔物を代わりに戦わせるために支援することはあるが一般的な存在ではない。


 まして癒し、つまりは他の魔物を癒すことなんてまずしない。

 ユリディカは不思議な魔物だ。


 そもそも出自がダンジョンから生まれたというところから始まり、理由も不明だけど他のダンジョンの魔物とは違って意思を持っている。

 何度もあるゴブ生の中でワーウルフにあったこともあるけれどワーウルフってやつは割とプライドが高くていけすかないのも多いのだけどユリディカは違う。


 言葉を選ばずにいうなら能天気。

 のほほんとして明るく前向きで良い魔物である。


 普段はやや闘争本能に弱いような感じがするけれどいざとなればちゃんと戦う。

 

「そうだな……いつかどっかいいところでも見つかったらそのアリドナラルって神様のこと祀ってあげよう。


 信仰者がいなくなれば神様は力を失うけどまた広まることがあれば復活するかもしれない。


 ……まあゴブリンに信仰されて復活するかは知らないけどさ」


 おそらくユリディカに受け継がれた以上はそこから人に信仰が広まることはない。

 だけど魔物の間で宗教や信仰が広まっているだなんて話も聞いたことがない。


 ほぼほぼ途絶えるとこが確定している感じにはなるけれどこの力が助けになったあかつきにはゴブリンで祀るぐらいはしてもいい。


「ドゥゼアァ……」


 パァッとユリディカの顔が明るくなる。

 まだアリドナラルが復活する希望はある。


 ゴブリンも何かを信仰することはないけれど強いものを神のように崇拝したりすることがないこともない。

 その点から考えると他の魔物よりもゴブリンの方が神様の信仰的には合っているかもしれない。


「とりあえずここから出るか」


 こうした出来事があった以上もう他には何もない。

 ドゥゼアたちは来た道を戻って古代遺跡からの脱出を図る。


 一つ前の部屋。

 像に襲われたのでどうしても少し慎重になる。


 こちらの像は倒れておらず、元の位置で静かに佇んでいた。

 

「うっ!」


「ユリディカ、どうした?」


 急にユリディカがその場にうずくまった。


「胸が熱い……」


 体の中にあった力が突然熱を持ったように熱くなり、そして体に広がっていく。


「だ、大丈夫?」


 レビスが心配そうに顔を覗き込む。

 ユリディカの中の熱は体中に広がっていき、手にもっている杖にまで流れていく。


 きっと力がユリディカの体に適応しようとしているのだとドゥゼアは思った。

 それなら大人しく見守ってやるのがいい。


 グニャリとユリディカの持っている杖が曲がった柔らかく、意志でも持っているように動いてユリディカの腕に絡みついた。


「ドゥ、ドゥゼア!」


 レビスがドゥゼアの方を振り向く。

 これは大丈夫なのかと目で訴えかけてくるけどドゥゼアもこれが本当に大丈夫だと言い切れる自信がない。


 ユリディカの右手に絡みついた杖はニョロニョロと動き、ユリディカの体を伝って左手まで伸びた。

 何をしているのか理解できない。


 だからといって体に密着して巻き付いている杖を引き剥がすこともできなさそうである。

 もし仮に何かしらに意識でも飲み込まれて暴れるようなら。


 ドゥゼアは短剣を抜いて構える。

 いざという時はユリディカだって倒してやるぐらいの覚悟はする。


 杖が広がってユリディカの両手を包み込む。


「ううう……はああああっ!」


「な、なんだと……!」


 遠吠えのような雄叫びを上げるユリディカ。

 両手の杖がボコボコと動いで形を変えていき、そして最後にはまるでユリディカにあつらえて作った鉤爪の武器のような形になった。


「ユリディカ……?」


 ぼんやりとした目をするユリディカにレビスが声をかける。


「気・分・爽・快!」


 ああ、ユリディカだ。

 ドゥゼアは安心したように大きく息を吐き出して剣を下ろした。


「うわあああっ、何これ!」


 ユリディカは自分の両手を見て驚く。

 杖は大きく形を変えてユリディカの両手を包み込む手甲型の鉤爪武器へと形を変えていた。


 ユリディカが元々持つ爪をさらに保護して強化するようになっていてもはや杖とはとても呼べなかった。


「ユリディカに合わせて形を変えたのか?」


 ユリディカには魔物としての身体能力がある。

 自分が戦おうと思った時に杖を持ったままでは戦いにくい。


 けれどサポートだけに回すにもとてもじゃないが惜しい。

 ユリディカの意図を汲み取ったようにユリディカが使いやすい形に杖は形を変えたのである。


「す、すごい……!」


「ユリディカ、体は大丈夫か?」


「うん!


 すごく体が軽い感じ!」


 ユリディカの中にあった力がユリディカに馴染んだようだ。

 杖までユリディカに合わせてくれて至れり尽くせりで羨まし限りである。


 とりあえず害にはなっていない。

 ユリディカもユリディカのまま。


 大丈夫そうならそれでいい。

 ドゥゼアは短剣を鞘にしまって小さくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ