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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第一章

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ゴブリンは嫌われているようです5

 鈍いトロールであるが痛みを感じないものじゃない。

 通り過ぎる一撃に痛みを感じて振り返ったがそこにはもうドゥゼアはいない。


 代わりにトロールの視界にはドゥゼアを追いかけるジジイがいた。

 仮に傷つけたのがジジイであろうとなかろうとナワバリに入ってきた人間などトロールにとって敵でしかない。


 走り来るジジイに合わせてほとんど丸太のような棍棒が振り下ろされた。


「……済まないがお前の相手をしている暇はないんだ」


 人の倍はありそうなデカいトロールの一撃であったのにジジイはそれを弓で受け止めていた。

 トロールにも力負けをしていない。


 そして剣を抜き、トロールの腕を一息に切り飛ばした。


「なんだよ、あのジジイ!」


 チラリと後ろを確認したらトロールの太い腕が切られてぶっ飛んでいるところだった。

 あんな化け物じみたジジイに追いかけられるほど恨みを買った覚えもない。


 他のゴブリンだってあんなジジイに会ったらひとたまりもないはずだ。

 ドゥゼアは走る。


 後ろからはトロールの悲鳴が聞こえてくる。


「トロールでも時間稼ぎにならないのかよ!」


 もはやどうなっているのか確認する時間すら惜しむ。

 奥に進むにつれて森の木々が密集したようになっていく。


 トロールの悲鳴を聞きつけてか他のトロールの声が聞こえる。

 もしかしたらうまく逃げ切れるかもしれないと思った。


 しかし鳴り止まぬトロールの怒声と悲鳴に何が起きているのか見ていなくとも理解させられる。


「クソッ……」


 さらに悪いことに向かっているのはいつの間にかレビスたちと合流する方向になっている。

 ジジイに追われたままレビスたちと合流するつもりなんてなかったのだけどトロールの痕跡からトロールを避けて移動していたらそうなっていた。


 仕方がない。

 下手にトロールと遭遇して止まってしまえばあっという間にジジイに追い付かれる。


 トロールに遭遇しなそうなルートが1番安全で結果的に速く、生存の確率が高い。

 こうなったら賭けに出る。


 さらに奥に進んでいけば魔物はより強力になる。

 ナワバリに侵入してきた人間がいればどうなるのか考えずとも分かる。


 流石に1人で強力な魔物と戦うこととゴブリン1体を追いかけることを天秤にかけてゴブリンとはならないだろう。

 より奥に、その魔物が魔物に対して寛容であることを願って。


 本来ならレビスたちと進みながらナワバリの痕跡を探して大丈夫そうなら進み、危なそうなら避けるつもりだった。

 仮に危なそうでもナワバリの端を荒らさないように進めば強い魔物がめくじら立てることはないと考えていた。


 今となってはもうどんな魔物がいるかの痕跡を探している暇もない。

 もう少し。


 もう少しだけ見ておくべきだった。

 そうすればこれから何が先に待ち受けるのかは分かったはずだった。


 ーーーーー


「……やはりあのゴブリンは倒さねばならない」


 トロールを真っ二つに切り裂いてジジイはポツリとつぶやいた。

 ジジイが執拗にドゥゼアを追う理由は賢いからだ。


 最初に冒険者を弓矢で一撃で仕留めたところから始まり、わざとらしい痕跡、そしていきなり痕跡を消して逃げ、今はトロールを上手くぶつけて逃げようとしている。

 怖いのは知性だ。


 強くても知性のない魔物はさほど怖くない。

 強くて知性のある魔物は当然に怖い。


 弱くて知性のない魔物など脅威ではない。

 ならば弱くても知性のある魔物はどうだ。


 これこそ時として大きな被害をもたらすことがある。

 弱いからと油断すればその知性によってやられてしまうことがある。


 ゴブリンは決して侮っていい相手などではない。

 ゴブリンには知性というものを感じさせられる時がある。


 今はまだただの弱い魔物であるが何かの原因でより賢く強い個体が出てきたらそのゴブリンは人間にとって大きな脅威となる。

 だからゴブリンは殲滅せねばならない。


「退けろ!」


 ジジイは迫り来るトロールを切り捨ててドゥゼアを追う。

 だいぶ距離が離されてしまったけれどまだ追いつく。


 あの賢さを持ったゴブリンを生かしておいてはならない。

 もしかしたらこの先大化けするかもしれない。


 もう誰もゴブリンの被害者にさせない。

 ゴブリンは厄介な魔物であって根こそぎ消すべきなのだ。


「なんだ……?」


 トロールが現れなくなってこのままいけばさほど時間もかからずゴブリンを捕まえられると思った。

 顔に何かが引っかかってくっついたような感覚がして顔に手をやった。


「糸……?」


 顔を擦るようにしてそれを取ってみると葉の間からさしている光にキラリと光って見えた。

 非常に細い糸のように見えた。


 ジジイは立ち止まった。

 深追いしすぎたかと思ったのも束の間、周りからカサカサとした音が聞こえ始めた。


「……ここで死ぬわけにはいかない」

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