ゴブリンはウルフと戦います3
レビスが放った矢もウルフに刺さっている。
倒すことまでは出来なかったが相手に当てられたのなら十分な腕前だ。
コボルトの方の矢はヘロヘロで当たりもしなかったことと比較すれば凄さもより際立つ。
「次を準備だ!」
なぜウルフが転んだのか。
そんなもの仕組みは単純である。
ウルフたちが立ち上がって地面を見ると草に隠すようにロープが張ってあった。
ドゥゼアは冒険者たちの荷物から見つけたロープをいくつかに切り分けて適当に地面と並行に張っておいた。
勢いよく走ってくれば足が引っかかって転倒することになる。
転んだ隙に石を当てられなかったウルフもいるが派手に転んだのだ、足を痛めたようにひょこひょこしているものもいる。
ロープを警戒して慎重になっている間にドゥゼアたちは少し下がりながら石を装填する。
「放て!」
1度目で石を当てて倒したという自信がついた。
倒せるかもしれない希望はコボルトたちにより大胆に石を投擲させた。
ウルフもバカではないので石を投げるのを見て回避しようとするけれど足元のロープも気になる。
先ほどよりも速く飛んできた石が直撃してウルフの悲鳴が上がる。
一際体の大きなウルフが怒ったように吠えた。
ウルフたちがロープを気にして引っかからない程度の速さで前に出る。
ロープも無限にあるのではない。
少し進めば簡単にロープ地帯は抜けられてしまう。
ロープが無くなったことを確認してウルフたちは怒りの目をドゥゼアたちに向けた。
コボルトやゴブリンの浅知恵で仲間がやられた。
絶対に許さないと再びウルフは駆け出す。
「浅いのはお前たちだ」
分かりやすく見えているロープが一本。
ウルフはそれを飛び越した。
今度は先を走るウルフが消えたように他のウルフには見えた。
コボルトたちにはケモノのような性質もあり、実は穴掘りが好きであったりする。
趣味みたいなものでそれを何かに活かすことはしないのだけど今回ドゥゼアはそれを活かすことにした。
活かす方法とは古来より罠として使われてきた落とし穴として活用するのである。
言えば喜んで穴を掘ってくれた。
木の枝や葉っぱで覆い隠した落とし穴は人が見れば容易く見抜けるだろうけど落とし穴の知識もないウルフにはそれを見抜くことができない。
仮に地面の状態に違和感を覚えても落とし穴があるとは考えられないのである。
底にはゴブリンのところでもらってきた武器で使わないものや木の枝の先を尖らせたものを立てて置いてある。
落ちたウルフはまず助からない。
助かっても意外とコボルトが深く穴を掘ったので自力で出てくることも叶わない。
いくつかの落とし穴にウルフが落ちていくがそれでは止まらず穴を飛び越えてウルフたちはコボルトに襲いかかる。
「あとは命かけて戦うぞ!」
本当は柵を作ったりもっと色々やりたかった。
だけど時間もなかったしコボルトは手先が器用でないために断念した。
ウルフは残り9匹。
なんとかロープと投石と落とし穴で半分以下まで持っていくことができた。
しかしもう用意してある罠はない。
ここからは総力戦である。
「ユリディカ!」
「きましたー!」
ただ罠はなくても隠し玉はある。
木の上に隠れ続けていたユリディカが飛び降りながらウルフにその鋭い爪を振り下ろす。
「攻めろ!」
思わぬ乱入者が後ろに現れた。
ウルフに一気に動揺が広がって、その隙にドゥゼアはコボルトを率いて突撃する。
数的優位はさらに大きくなり、自分たちが設置した罠や投げた石でウルフを倒せた。
勝てるかもしれないという希望が見え始め興奮に恐怖を忘れたコボルトたちは勢いよくウルフに殺到した。
コボルトたちの戦いも少しだけ指導した。
爪や牙がコボルトたちの主な攻撃手段となる。
ゴブリンに比べれば十分な武器となると言っていいのだけどあくまでも比較対象がゴブリンの場合である。
ウルフと比べてみたらどうか。
コボルトとウルフの爪や牙など比べ物にならない。
死ぬ気で噛みついたりすればコボルトでもウルフにダメージを与えられるけれどウルフは死ぬ気でなくともコボルトぐらい簡単に噛み殺せる。
つまりコボルトの爪や牙ではウルフに対する有効的な攻撃手段とはなりにくいのである。
だから武器を使うことにした。
だけど問題もある。
コボルトの手はケモノに近くて武器もあまり上手く扱えないのだ。
知能レベルでは武器も扱えるが手の問題から難しい。
投石器の時も同じような問題があったのだけど今回は無理矢理解決することにした。
そもそも武器の取り回しを教えている時間もない。
だから1つに絞った。
突撃による突き刺しの1本のみでコボルトには戦ってもらうことにした。
ゴブリンからもらった武器の中にあった槍や木を削って先を尖らせたものを槍として使う。
肉級でギュッとして持つことはできるけど振り回すのにはちょっと厳しいところがある。
だから両手で槍を持ち、脇でさらに固定する様にして構えてもらい、体ごと突撃する特攻スタイルを考え出した。
体ごと当たっていけばコボルトの力でも深く槍を刺すことが出来る。
かわされる可能性も大いにある。
持ち方の都合上交戦距離も短く応用もきかない戦い方である。
しかしリスクを負っても相手を倒せなきゃ結局反撃を受けるだけなのだから威力を重視した。




