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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第五章

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ゴブリンは洞窟を越えます8

 軽く突いてみても強めに突いてみてもミスリルリザードは動かない。

 体が重たくて沈んでいるので水底で普通に生きているようにも見えてしまう。


 レビスが槍を引っ掛けるようにしてミスリルリザードを動かしてみると水に揺れながらわずかにゆらゆらと動く。


「完全に死んでいるようだな」


 確認で余計に時間もかけたしミスリルリザードはもう死んでいた。

 オルケに魔法を解除してもらってドゥゼアが穴の中に入る。


 魔力で作られた水はなくなっていて動かなくなったミスリルリザードだけが残されている。


「……大丈夫だな」


 念には念を押してミスリルリザードを一度蹴り飛ばしておく。

 ミスリルリザードは動かず蹴った足がむしろ痛くなっただけだった。


「この倒し方は何がいいと思う?」


 ドゥゼアは穴の上を見る。

 穴の上ではみんながドゥゼアのことを覗き込んでいる。


「……倒すのが楽?」


「攻撃しなくてもいい!」


 ドゥゼアの質問にレビスとユリディカが答える。

 どちらの答えも間違ってはいない。


 だけどドゥゼアが目的としているところは違っていた。


「答えは……」


 ドゥゼアはミスリルリザードの口を掴んで持ち上げる。


「綺麗に倒せるんだ」


「綺麗に?」


「そうだ。傷一つなく、傷みもなく、ピカピカだろ?」


 みんなはどうして綺麗に倒せることがいいことなのか分からないでいるようだ。


「山ん中にミスリルがあるといっても少量が分散しているだけだ。大鉱脈があったら今ごろこの山は封鎖されている。だからミスリルがあるといっても採掘なんかして取り出すのは労力ばかり大きくなってしまう」


 岩の精霊はミスリルが山の中にあるというが掘り出して利用できるほどの埋蔵量はない。

 本当にあるといえるぐらいの量しかないのだろう。


 ミスリル鉱脈なんてものがあったら通行になんて使わせるわけがない。


「こいつはミスリルを食って皮にミスリルを融合させている」


 ドゥゼアはミスリルリザードの皮を見る。

 青白いミスリルの特徴をミスリルリザードの皮は完全に得ている。


「岩の中にあるミスリルをこいつらが集めて、柔軟でありながらミスリルの性質を持つ皮を生み出してくれたんだ」


「つまり……ミスリルリザードの皮を利用するために綺麗に倒したということですか?」


「その通りだ」


 岩の中に含まれる少量のミスリルを分離して集めるのはかなり骨が折れる。

 しかしそれをミスリルリザードがやってくれた。


 さらにそのミスリルも皮と融合して普通のミスリルより加工しやすい皮という形になっている。

 こんなもの利用しない手なんてない。


 ミスリルリザードを倒す他の方法もあるけれど破壊力の高い攻撃で皮ごと破壊して倒してしまうとミスリルリザードの皮は損傷してしまう。

 水に沈めて倒してしまえば安全に倒せるだけでなく皮を傷つけることなく倒すことができるのだ。


「引き上げるぞ」


「フック下ろしますよ」


 レビスに金属をフック状に加工してもらっていた。

 ロープが繋がれたフックをドゥゼアはミスリルリザードの口に引っかける。


 流石に口の中まではミスリル化していない。


「よーし、みんな引っ張れ!」


 フックが外れないことを確認して穴の上に声をかけるとフックに繋がれたロープをみんなで引っ張る。

 ミスリルリザードが引っ張られてズルズルと穴から上がっていき、ドゥゼアも壁の出っ張りに手足をかけて穴をヒョイヒョイと登っていく。


「よいしょ」


「おりゃー!」


 ドゥゼアが穴から出てくるのとミスリルリザードが引き上げられるのはほとんど同時であった。


「レビス、どうだ?」


「……うん、通じる」


 レビスがミスリルリザードに手を当てて魔力を流し込む。

 生きている時には生きているためにレビスの能力が通じなかったけれど死んでしまえばレビスの能力も通じるようだ。


「柔らかい状態を保ってくれ」


「ん」


 ドゥゼアがナイフを取り出してミスリルリザードの体に突き刺す。

 金属の状態を変化させることができるレビスの能力は金属を柔らかくすることもできる。


 対象がミスリルでレビスはちょっと大変であるが、レビスの能力だけでは皮を肉から剥ぐことができないのでナイフで剥ぎ取るしかない。

 ナイフでざっくりと肉から皮を剥ぎ取っていく。


 硬くてナイフが通らなかったミスリルリザードの皮もレビスの能力のおかげでサクサク切り裂ける。


「よし、これの形は変えられるか?」


「やってみる」


 剥ぎ取った皮はところどころ肉がついているけれど細かなところは後でちゃんとすればいい。

 レビスが剥ぎ取ったミスリルリザードの皮に魔力を流して形を変えようとする。


「おぉ……皮が一人でに動いて……」


 柔らかくするだけでなくミスリルリザードが死んでしまえば形状の変化もある程度通じるらしい。

 ミスリルリザードの形に不格好に剥ぎ取られていたミスリルリザードの皮が四角い一枚のミスリル皮に加工された。


「不思議なもんだな……」


 ドゥゼアがミスリル皮に触れてみる。

 布のように柔軟に曲げられるのに硬くてレビスの能力無しではナイフで傷もつかない。

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