ゴブリンはゴーレムと戦います10
「魔力を使い果たしたな……ユリディカ、まずは俺を治してくれ」
どこが痛いのか分からないほどに全身が痛い。
このままではレビスのこともちゃんと見てやれない。
「わ、分かった!」
ユリディカがレビスをそっと床に寝かせるとドゥゼアに向かって手を伸ばす。
柔らかな光がドゥゼアの全身を包み込んで体を治療してくれる。
折れた骨が動いてくっついていく感覚は結構不思議なものがある。
「意外と危なかったな」
『無茶をしたものだな』
アイアンゴーレムがレビスの方を優先していたからこれぐらいで済んだ。
もしアイアンゴーレムにドゥゼアの方を先に処理するなんて知能があったらドゥゼアは今頃握りつぶされていたかもしれない。
「どう?」
「かなりマシになった。ありがとな」
急激に治したためか全身に重たい気だるさがあるけれど痛みはほとんどなくなった。
「みなさん大丈夫ですか?」
オルケたちも穴から降りてドゥゼアたちのところに駆け寄ってきた。
「これはまずいな……」
レビスの様子を確認したドゥゼアは顔をしかめた。
レビスの呼吸がかなり弱い。
ドゥゼアが声をかけても触れても全く反応がなく、死んでしまいそうに弱々しい。
いや、本当に死んでしまいそうだった。
「俺よりも無茶をしたな」
魔力を使い果たすという限界を超えている。
命に危険を及ぼすほどに自分の中の力を使ってしまってレビスは死にかけていた。
「オルケ、魔力ポーションだ!」
「は、はい!」
このまま放っておくと死んでしまう。
オルケは慌てて穴の中まで戻って荷物の中から青い液体の入ったビンを持ってきた。
「レビス……チッ!」
青い液体は魔力ポーションである。
獣人たちから餞別としてもらったものであり、ここまで使うことなく取っておいていた。
ドゥゼアはレビスに魔力ポーションを飲ませようとするが全く動かないので飲ませることができない。
「ほよ……」
仕方ない。
ドゥゼアは魔力ポーションを一口含むとレビスの体を抱き上げるようにして口づけした。
レビスの口からこぼれないように少しずつ魔力ポーションを流し込む。
飲まないのなら飲ませるしかない。
ドゥゼアの口移しによって流し込まれた魔力ポーションがレビスの喉を流れる。
ユリディカは目を丸くしていて、オルケは恥ずかしそうに顔を手で隠しながらその様子を見ている。
ドゥゼアはまた魔力ポーションを口に含むと口移しをして全ての魔力ポーションをレビスに飲ませた。
これでどうだと思っていると浅い呼吸を繰り返して顔色が悪かったレビスに血の気が戻ってきた。
念のためもう一本魔力ポーションをそばに置いといているけれどもう大丈夫そうであった。
「ひとまずこれで大丈夫だな」
ドゥゼアはホッと息を吐き出して床に座り込む。
見ると固く閉ざされていた扉はいつの間にか開いていて、先に進むことも戻ることもできるようになっていた。
「……危ないところだったな。助かったよ、レビス」




