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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンはジジイと戦います7

 直後トゥゼアとカジオの間を黒いものが飛んでいった。

 ジジイが切り飛ばした黒い魔力の斬撃であった。


『させるかよ!』


 ドゥゼアと一瞬で距離を詰めたジジイにパルファンがバトルアックスを振り下ろす。


『なんだと!?』


 ジジイの振り返るようにして振られた剣とパルファンのバトルアックスがぶつかり合い、パルファンのバトルアックスが大きく弾き返された。

 ここに来てパルファンが初めてジジイに力負けした。


 パルファンは人間に力負けしたということに驚きを隠せない。

 けれどジジイは隙だらけになったパルファンではなくドゥゼアの方を向いた。


「とことん俺狙いかよ!」


 とんでもない力を誇るパルファンですら押し負けた。

 ドゥゼアが力で勝てるはずがない。


 スピードもかなり速いけれどドゥゼアだって極限まで集中しているのでなんとか見える。


「ゔぅっ!?」


 黒い魔力をまとった一撃をなんとか受け流すことには成功した。

 ただし死ななかったというだけでドゥゼアの腕は真後ろまでグルンと弾き飛ばされて肩が外れる音がした。


 上手く受け流せたと思ったのにそれでも流しきれなかった。

 なんとかトウを放さなかっただけ偉い方である。


『ドゥゼア!』


 ジジイの攻撃は一撃で終わりではない。

 片腕の使えなくなったドゥゼアに更なる追撃を繰り出すジジイにカジオが殴りかかる。


 頬にまともに殴られたにも関わらずジジイはそのままドゥゼアに向かって剣を振った。


「グッ!」


 ドゥゼアの胸が深々と切り裂かれた。

 カジオの攻撃がなかったら今頃体が真っ二つになっていただろう。


『トドメだ!』


『主君を倒させはしない!』


 ほっといても死にそうな怪我だが目の前で死なねばジジイは終わりだと考えない。

 最後の一撃を放とうとするジジイの前にカジオが飛び出して拳を突き出した。


『邪魔だ!』


 顔面を殴られながらジジイはカジオを一刀両断し、黒くなった目でドゥゼアを睨みつける。


「ドゥゼア!」


「治せない!」


「や、ヤバいですよ!」


 レビスが矢を、オルケが魔法を放つ。

 ユリディカはなんとかドゥゼアをヒールしようとするけれど深い傷は簡単には癒えてくれない。


『ぬおおっ!』


『かっ!』


『ぐわっ!?』


 パルファンもジジイの後ろから切りかかるが、ジジイはパルファンの方を見もしないで手を伸ばして黒い魔力を放った。

 黒い魔力が爆発してパルファンが吹き飛んでいき、ドゥゼアの目前にジジイが迫る。


「危険な時ほど前へ」


 爆発の影響でレビスとオルケの攻撃も吹き飛び、ドゥゼアを守るものはなくなった。

 だがドゥゼアは諦めていなかった。


 ようやくここまで来たのに諦められない。

 何度もやり直せばいいとゴブリンとしての生を手放してきたけれどこのゴブ生は命尽きるその瞬間まで自ら命は手放さない。


 後ろに下がりたくなるような危険な状況ほど前に出ろ。

 ドゥゼアがゴブリンになる前に剣を教えてくれた師匠となる人が言っていた。


 下がらねばならない時と下がらねばならないと思わされてしまっている時は違う。

 危険を感じて後ろに下がりたくなった時にどちらなのか見極め、時として前に出ることが何かを守るためには必要なのだと言われた。


『ぬっ!?』


 興奮しているせいだろうか。

 ドゥゼアは体の痛みも忘れて前に出た。


 前のゴブ生でもこんなことがあったなとドゥゼアは一瞬思った。

 絶体絶命の状況下で相手に一泡吹かせたくて自ら剣に突っ込んでいったことがある。


 あの時は多分相手を倒せたのだと思ってトゥゼアも限界を迎えてしまった。

 ドゥゼアはジジイの剣のさらに内側まで入り込んだ。


『ウグァッ!?』


 そして口を大きく開き、ジジイの腕に噛み付いた。

 ジジイが鈍い痛みを感じて思わず声を上げるがドゥゼアは深く深く牙を腕にめり込ませていく。


『この!』


 ジジイがドゥゼアの肩を掴んで引き剥がそうとするけれどドゥゼアも必死で食らいつき放さない。

 ジジイの手に力が入って肩の骨が砕ける音がしてもドゥゼアは口を放さなかった。


『うわあああああっ!』


 肉が食いちぎられるのも構わずジジイはドゥゼアを腕から引き剥がした。

 ジジイがドゥゼアを地面に叩きつけるように投げ捨て、大きくえぐれた腕に視線を向ける。


 腕の半分ほどの肉が噛みちぎられてしまった。

 ひどい激痛が走り、腕が全く動かせない。


「くははっ……人の肉は美味いな」


 たとえ何度ゴブリンに生まれ変わろうとも。

 どんなに過酷な状況だろうとドゥゼアは人間を食べなかった。


 元々人間だったという最後のプライドみたいなものである。

 そんなプライドをドゥゼアは捨てた。


 ドゥゼアは噛みちぎったジジイの肉を飲み込んだ。

 かなり魔力を持った相手の肉は体に取り込んだ瞬間から力が沸き起こるようだ。


 両肩をやられ、胸に大きな切り傷があるゴブリンなど脅威に思う人はいないはずなのに、周りにいた獣人を含めて誰もがドゥゼアに恐怖を感じていた。

 生への執着、諦めない心、文字通り絶対的強者に噛みついてでも戦うその姿勢は尊敬を通り越して畏怖の対象になっている。


「バァ」


 フラフラと立ち上がったドゥゼアは馬鹿にするように舌を出して口を大きく開けた。

 食ってやったぞ、とジジイに見せつける。


『……この!』


「後ろだ」


『見事なりドゥゼア』


 ジジイの後ろにはパラファンが迫っていた。

 魔法を受けてバトルアックスの先端は折れてしまい、柄だけになっていた。


 パラファンは棒なったバトルアックスを横殴りに振るい、ジジイの頭を殴りつけた。

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