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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンは獣人の底力を思い知ります1

 獅子族たちは何人か散らばり蛇族に人間が攻めてきたことを伝えながら後退する。

 おそらく間に合わない蛇族もいるだろうが今いる人員で全ての蛇族を助けることは不可能である。


 この事態を招いたのは蛇族自身だ。

 ある程度の犠牲はどうしても仕方のないのである。


 その中でもドゥゼアたちはヒューリウも連れているので早めに逃げていた。


『いたぞ! あいつらを捕まえろ!』


『人間……!』


「チッ、面倒だな」


 もっと速度を上げたいところではあったが獅子族たちももう限界だった。

 カジアとヒューリウを助けるために走り通し、少数で囮として人間たちと戦った。


 もう体力的にギリギリの状況だった。

 どうしても速度を落として移動せざるを得ない。


 そんなドゥゼアたちに人間の部隊が追いついてきた。

 本隊ではない。


 ヒューリウを取り戻そうと一部の人たちを先に送り込んできたようである。

 敵陣深くに突っ込ませることのリスクはあるがヒューリウは人間たちにとっても大きなカードとなる。


 まだ追いつける可能性があるならとリスクを承知で追いかけてきていたのだ。


「カジア、これ使え」


『ドゥゼア? これって……』


 ドゥゼアはカジアにトウを渡した。

 戦うのなら武器ぐらい持っていてもいいだろう。


 それにドゥゼアが持っているトウは元々はカジオのものである。

 カジアにくれてやってもいいと思った。


『ありがとう』


 カジオの物だとは分からないだろうけどドゥゼアの気持ちは伝わったようでトウを受け取ってカジアは大きく頷いた。


『君のことは僕が守るから』


『ありがとう、カジア……』


「うふふ〜なーんかー、良い感じ?」


 誘拐されてからというもの、カジアとヒューリウの距離感が少し変わったような気がする。

 妙な近さというか、妙な遠さというか。


 ヒューリウがカジアに対してやたらとしおらしくなる時があった。

 多分本人たち以外はその理由に気がついていた。


 なぜなのかユリディカもそうしたことの知識はあるようでカジアとヒューリウの様子を見てニンマリしている。

 例のお話好きゴーストのせいかもしれない。


 ドゥゼアもお似合いだと思うので多少の応援はしている。


『防衛陣形だ!』


 マルヤが指示を出して獅子族が動く。

 人数は人間よりも獅子族の方が多いけれど個々の状況から見るに獅子族の方が不利である。


 無理に攻め込まず防御に重点を置きつつ人間を迎え撃つ。

 ドゥゼアもフードを深く被って短剣を構えて戦いに備える。


『ガキ以外は殺してしまえ!』


「オルケ!」


「はい!」


 人間と獅子族が衝突するギリギリのタイミングを見計らってオルケが魔法を放つ。

 獅子族が魔法を使うと思っていない人間たちの何人かはまともに魔法をくらう。


『突撃だ!』


 わずかに人間に隙ができた。

 マルヤはそれを見逃さず獅子族に攻撃を命じる。


「レビス、あの赤い布をつけたやつを倒すぞ」


「分かった」


 獅子族と人間が激しく戦い始めた隙間を縫うようにドゥゼアとレビスは移動する。

 狙いは相手のリーダー格の兵士。


『なんだこいつら! くっ!』


 ドゥゼアとレビスは連携を取って素早く攻撃をリーダー格の兵士に叩き込む。

 体は重たいけれどドゥゼアの感覚は研ぎ澄まされていた。


 人の時代のことを夢に見て体の動かし方も思い出していたのである。

 両手に短剣を持って切りつけてくるドゥゼアにリーダー格の兵士は翻弄され、完全に注意がドゥゼアに向く。


 その隙をついてレビスが脇腹を突き刺す。

 しかし深追いはしないですぐに槍を引く。


 痛みを感じてレビスの方を見た瞬間にドゥゼアは短剣でリーダー格の兵士の太ももを深く切り裂いた。


『クソッタレ!』


「すごいな。だがこれだけじゃないぞ」


 トドメを狙うドゥゼアとレビスの攻撃をリーダー格の兵士はなんとか防いだ。

 けれど最後の攻撃はドゥゼアとレビスだけがしていたのではない。


『く……ふっ……』


 リーダー格の兵士の胸を炎の槍が貫いた。

 最初の一撃を放ってから息を潜めていたオルケは機会を狙っていた。


 混戦の状況で魔法を使うのは危険。

 相手が隙を見せた確実な時を待っていた。


 ドゥゼアとレビスの攻撃を防いだリーダー格の兵士には大きな隙ができていた。

 見事にオルケの魔法はリーダー格の兵士に当たったのである。


「ふおおっ!」


『クソッ、こいつらヒーラーがいるぞ!』


 一方でユリディカも頑張ってくれていた。

 怪我をして下がってきた獅子族を治療している。


 人間からすればダメージを与えたはずの相手がすぐに復帰してくるのだ、かなりの脅威となっている。

 魔法に引き続いてまさか治療までできる相手がいるとも思っていないので深追いを避けたような攻撃になっていたことが獅子族にとって運が良かった。


 リーダー格の兵士もやられて、気づけば獅子族は回復している。

 最初有利だったはずの人間たちはあっという間に不利な状況に逆転された。


『ゴ……ゴブリンだと……ゴブリンが…………なぜ』


 ドゥゼアは足を切り付けられて倒れた兵士の胸に短剣を突き刺した。

 フードを被っていても下から見ると顔が見えてしまう。


 てっきり獣人だと思っていたのにゴブリンの顔が見えて兵士は驚きながら絶命していった。

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