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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンは親子の再会を目撃します1

「クッ……」


 長い夢を見ていたような気分だった。

 大酒をかっくらった次の日のような頭の痛みを手で押さえる。


 視界に映るドゥゼアの手は緑がかったくすんだ色の皮膚をしている。


「そうか……」


 思い出した。

 しばらく霞がかかって思い出せなかった記憶がはっきりした。


 何でこんなタイミングで思い出したのかは分からないけれどもしかしたらダメージによって死にかけたからかもしれないなとドゥゼアは思った。


「しかし……」


『ダメです!』


『退けろカジア!』


『嫌です!』


「なんだ、この状況?」


 ドゥゼアは武器を構える獅子族に囲まれていた。

 そしてそんなドゥゼアを守るように仲間たちがいて、先頭ではカジアが手を広げて獅子族の前に立ちはだかっていた。


「ドゥゼア、目を覚ました?」


「レビス……何だこの状況は?」


 見た目は全く違うのになぜか人のレビスと重なるゴブリンのレビス。


「ドゥゼアがゴブリンだってバレた」


「あー……あー、なるほどな」


 レビスの説明を受けて周りの目と自分の状況を改めて確認する。

 ジジイに攻撃された時に犬の獣人の被り物が取れてしまっていた。


 つまり今のドゥゼアはゴブリン丸出しなのである。

 作戦ではジャバーナと獅子族が暴れ回り、ドゥゼアたちがカジアとヒューリウを助け出すことになっていた。


 そして蛇族の町で合流するというはずだった。

 人としての知恵が残るオルケが先導して蛇族の町に着いて獅子族と合流したのであるが、慌てるあまりにドゥゼアの顔が出てしまっていることをすっかり忘れていた。


 ドゥゼアが魔物であるということがバレて騒ぎになった。

 獅子族はドゥゼアを殺すべきだと武器を向けたがそこでカジアが立ちはだかった。


 レビスたちもドゥゼアを守ろうとして睨み合いになったところでドゥゼアが起きたのである。


「ということはそんなに長いこと気を失っていたのでもないんだな」


『大丈夫か?』


「ああ……」


 頭の中でカジオの声が聞こえてくる。


『いくら呼びかけても反応がないから焦ったぞ。ほんのわずかな時だが……心臓の動きも止まった』


 やっぱりか、とドゥゼアは思った。

 奇妙な人の時代の夢。


 ただ気を失って見たわけではなかった。


「悪かったな」


『いや、俺がダメージが受けたら心臓にも反動があったのだろう。謝罪するなら俺の方だ』


「なら、もう少し働いてもらうぞ。この場を何とか収めたい」


『分かった。やるだけやってみよう』


 相手が魔物であるということを受け入れるのは難しい。

 だが今は悠長に時間をかけて説明して理解を求めるような余裕もない。


『静まれ!』


 ドゥゼアの胸から飛び出したカジオが実体化する。

 魔力を込めた咆哮にも近い声がその場にいた全員の耳をつんざいた。


『カジオ……一体どこから……いや、元より奇妙だったのだ! 死んだはずのお前がなぜここに! そしてなぜ魔物を庇い立てしようとする!』


『お父さん……』


 マルヤたちは状況が状況なだけにカジオの疑問も頭の隅に追いやってきた。

 しかしもはやカジオの存在すら怪しく思い始めていた。


『今説明している時間はない。説明もなく理解しろというつもりもない。だが今は獅子族だけでなく獣人全体の危機だ。ここで争っている場合ではない!』


『そうだ! だから危険な魔物は倒しておかねばならないのだ!』


『ここにいる魔物は確かに魔物だが危険な存在ではない』


『危険な魔物ではない? 人間を信じろと言っているのと同じようなものではないか』


『ドゥゼアは良い魔物だ』


『名前まで付けて、良い魔物だと? 魔物に良いも悪いもあるか!』


 マルヤのリアクションが世の中一般のものだろう。

 魔物を信じろと言われても信じられる人などおそらくごくわずかである。


『考えてもみろ。こいつらはここまで一緒にいた。そしてカジアまで助け出してくれた。我々に侵攻しようとしている人間や蛇族なんかよりもよほど行動で示してくれているではないか』


『それは……そうかもしれないが』


 なんだかんだとドゥゼアは獅子族と行動していた。

 そのことを考えると確かに普通の魔物とは違う。


 ずっと姿を隠し獅子族に危害を加えることがなかったばかりかカジアとヒューリウを助け出すのに協力もしてくれた。

 今だって二人を送り届けて合流しているのだから知能や理性の高さは考えるまでもない。


『確かにドゥゼアは魔物だが、魔物であるという偏見を除いて見てみろ。我々は見た目も違うからこそ獣人という名の下に集まった時その心で互いを仲間だと認めた。ドゥゼアには我々を助けようという心がある!』


「……ちょっと感動させるじゃないか」


 思いの外熱く語るカジオ。

 短い付き合いであるがそのように考えていてくれたことは嬉しくある。


『こんなくだらない睨み合いをしている間にも人間どもは追ってきているかもしれないぞ』


 マルヤはカジオの目を見つめる。

 獣人が圧倒的に不利な状況でも燃えるような目をして前を見据えていたカジオはマルヤの記憶のままだった。


 嘘偽りなどなく己の信念を貫いて生きる誇り高き獅子王の姿がそこにはある。


『全員武器を下せ』


『族長……!』


『後で訳を聞かせろ。だが今は獣人が大事だ』


 ドゥゼアを信じるわけではない。

 ドゥゼアを信じるカジオを信じようというのだ。

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