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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第一章

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ゴブリンはワーウルフと出会いました5

 声に従ったらどちらかが死ぬまで戦わねばならない。

 せっかく話せる相手にまた出会えたのに殺したくはない。


「殺して……私のこと、やっぱり……」


 黒い殺意が胸に湧き起こってくる。

 なんとか抗おうとするのだけど抵抗すればするほど頭の中で声が響くのだ。


「ドゥゼア、どうする?」


 外から見ていてもワーウルフの雰囲気は異様だ。

 激しく頭を振って何かを振り払おうとしているようにも見えるがレビスの目にはワーウルフが苦しんで泣いているかのように見えていた。


「まあ、一回ぐらい止めてやろう」


 せっかく一瞬前を向こうとしていたのに殺してしまうのも惜しく感じた。

 諦めないで行動する意思を持つならチャンスは与えられるべきである。


 ドゥゼアはスタスタとワーウルフに近づく。


「殺さないなら……早く逃げて」


「ごめんな」


 すでに意識は朦朧とし始めて近づくドゥゼアに歯を剥き出し始めるワーウルフだったがドゥゼアはなんてこともないように後ろに回り込んだ。


「うっ、グッ!」


 ドゥゼアはすっと手を伸ばした。

 一瞬抱きしめるのかとレビスがムッとしたがドゥゼアはそんな情に訴えかけるやり方などしない。


 抱きしめはした。

 ただドゥゼアは腕を首に回して全力で締め上げた。


 ただの抱擁ではなく首をガチガチにホールドしてみせたのである。

 精神を乗っ取られたのか、それとも苦しいのか知らないけれど苦しそうな声を上げて抵抗する。


 力が強くてなかなか辛いが後ろから首を絞められることに対する対抗の仕方を分かっていない。

 体を振ったりドゥゼアを掴もうとするけれどうまく身をかわして解かせない。


 こうしたやり方は元人間であるドゥゼアの方が上手い。

 しかし毛が生えているせいか締め付けが弱くて思った通りの効果が出ていない。


 多少の長期戦を覚悟してワーウルフの首を締め上げ続ける。

 すると段々と抵抗する力が弱くなっていく。


「カッ……」


 口の端から泡を吹いてワーウルフの手がパタリと地面に落ちた。

 完全に気絶したのを確認してドゥゼアが腕を離す。


「死んだ?」


「死んでない」


 毛深くて時間はかかったがその分爪が引っかからなくて腕を離さずに済んだ。

 無傷とはいかずに腕は爪による切り傷だらけになったがワーウルフを気絶させることができた。


 今回もなんだかんだと体はボロボロだ。

 気を失って動かなくなったということは強制的な体の支配というより精神的な支配をされている。


 完全に支配できるわけではないのかもしれない。

 もしかしたらダンジョンにいる魔物は精神的に支配されている可能性もある。


 そう考えるとダンジョンブレイクも魔物が増えすぎて支配が出来なくなって起きると考えると一定の辻褄は合う。

 魔物と話せるからの考察であり、立証しようにも方法もないのでただの予想にしかすぎない。


 考え事をしながらもドゥゼアは手を動かす。

 ドロップ品の毛皮をナイフで切って裂いて細長くする。


 いくつか細長い毛皮を作ったら適当に結んで繋げて簡易ロープにした。

 それでワーウルフの手足を縛る。


 起きた時に暴れられると困るからだ。

 もし冒険者が来たら終わりだけどその時はワーウルフを置いて逃げる。


 縛られたワーウルフとゴブリンならどちらを狙うかなどいうまでもない。

 ワーウルフが起きるまでの間に食事を取っておく。


 ケガの治りを早くするためにも食べるのは大事である。

 けれど盗んできた食料ももうあまり残っていなかった。


 ふと見るともう冒険者の死体はなかった。

 死ねばダンジョンに吸収される。


 早いなとは思ったけどそのうち吸収されるものだから仕方ない。

 不思議なもので人だけが消えたように装備やアイテムが落ちている。


 死体が残らないからダンジョンで死ぬことは最も避けるべきことされている。

 ついでだから残された冒険者の荷物も漁る。


 食料品でもないかなと思ったけどそんなに長く潜るダンジョンでもないせいなのか、簡単なおやつぐらいしかなかった。

 剣は未だゴブリンには過ぎたる武器なので残念ながらまだ使わない。


 しかし1人短剣を持っていたのでそちらはありがたくいただく。

 鎧は革のもので柔軟性が高く、少しベルトを加工すれば胸当てぐらいは使えそう。


 とりあえず1番小さいサイズのものを1つ持っていく。

 あとはお金とか冒険者が持っていた魔石も回収する。


 お金を使う機会が来るかは分からないけれど少量なら邪魔にもならないし持っていてもいいだろう。


「んん……」


「起きたか」


「あぬ……うぇ?


 な、何ですかこれー!」


 口からよだれを垂らして目をしばしばさせていたワーウルフは頭が覚醒するにつれて手足が動かないことに気がついた。

 目の前にはドアップのゴブリンの顔もあってひどくびっくりした。


「どうやら精神支配は今のところ及んでいないようだな」


 手足を自由にしようとバタバタと動いているが虫レベルにしか動けていない。


「た、助けてー!


 いや解いてー!


 私に何するつもりですかー!」


 うるさく騒ぎ立てるワーウルフは正気じゃないけど正気のようだ。


「ハッ……あれですね、ゴーストが言ってました……獣タイプの魔物に発情する変態がいるって!


 私酷いことされるんですね、ゴーストの話のように!」


「しねぇよ!」

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