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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンは尋問します1

 オゴンは非常に大きなショックを受けていた。

 使用人の女性はオゴンがここに来た時から雇っている人ではない。


 けれど最初に雇っていた獅子族の女性が信頼できる子だからと紹介してくれてもう何年もそばに置いていた。

 裏切りの代償は裏切りなのか。


 獣人は敵対していても暗殺や謀殺のようなことはせず正面から強さを見せるような戦いをすることがほとんどであった。

 しかしオゴンの周りでもいつの間にか隠れて人を裏切り殺そうとするような後ろ暗い側面が大きくなっている。


 まるで人間のようだと頭を抱えた。

 国を起こし、平穏を得た。


 その代わりに獣人は誇りを失ったのかもしれないとオゴンは思った。


『とりあえずクレディアから話を聞かないと……』


 使用人の女性クレディアは今椅子に縛り付けて拘束している。

 なぜカジアを暗殺しようとしたのか、誰がそうさせようとしたのか、いつからスパイだったのか。


 聞き出さねばならないことは多くある。


「俺とカジオがやる」


 ドゥゼアは渡されていた紙に書いて言葉を伝える。


『なに? どうやるつもりだ? 薄く透けたカジオ兄さんの姿を見せるのは逆効果かもしれないぞ』


 カジオを出して話を聞き出すのは悪くないが長く出そうと思えば透けた姿で出す必要がある。

 けれどその姿を見た時に相手がどう思うのかオゴンには予想がつかない。


 効果的に話を聞き出すことができるか疑問なのである。


「考えがある」


 けれどもドゥゼアにはちゃんとそこら辺をカバーするためのアイデアがあった。

 それにすっかり憔悴しきったような目をしているオゴンに任せるのもなんだか不安になった。


 下手するとクレディアを殺してしまうようなことにもなるかもしれない。


『分かった。カジオ兄さんに任せるよ……』


 ーーーーー


 倉庫としてすら使われていないような、何も置いていない空き部屋の真ん中でクレディアは拘束されていた。

 ドアに背を向けて、椅子に縛り付けられたクレディアは脱出の機会をうかがっていた。


 夢を見たのではないかと思えるほどに何があったのか理解できなかった。


『あれはゴブリンだった……』


 気を失う前に最後に見た光景はゴブリンに馬乗りにされたところだった。

 しかし一体どこからゴブリンが出てくるというのだ。


 ひとまずカジアの暗殺に失敗したことは間違いないとしても、そこから先に起こったことは記憶違いなのではないかとクレディアは思っていた。

 誰かに気絶はさせられたのだろうがその時に混乱してゴブリンを見たような気になっているのではと考えていた。


 どの道オゴンがやったことではない。

 だがこうして使っていない部屋まで与えられて拘束されているということはもうオゴンにもバレていると察した。


 抜け出せないかと体を動かすけれどかなりキツくロープで縛ってある。

 動こうとするだけでロープが食い込んでクレディアは顔をしかめた。


 どうにも脱出は無理そう。

 クレディアが大きくため息をつくと足音が聞こえてきた。


 ドアが開いて誰かが入ってきた。


『起きていたか』


 最後に聞こえた足音の位置とは微妙にズレた位置から足音がまた聞こえ始め、カジオがクレディアの前に回ってきた。

 透けた姿ではなくちゃんと召喚された姿であった。


『あなたは一体何者ですか? それにあのゴブリン……うっ!』


『勘違いするな……』


 地の底から湧き起こるような低い声を放ちながらカジオはクレディアの首を掴んだ。

 殺気に胸を、手で首を締め付けられてクレディアの尻尾がブワッと膨らむ。


『質問するのはこっちだ。お前に何かを聞く権利はなく、ただ正直に答えろ。いいな?』


『カッ……あ……』


 イエスにしてもノーにしても答えられないほどに首を締め上げられている。

 本当は答えなんかいらなくてこのまま首を絞めて殺そうとしているのではないかと思えるほどの力にクレディアは恐怖を感じていた。


『分かったら頷け』


 クレディアは死にたくないと必死に首を縦に振った。


『ゲホッ!』


『いいか、答えねば……まずは尻尾を切る』


 クレディアの首から手を離したカジオは少し顔を寄せて最後の脅しを口にする。


『そ、それだけは!』


『正直に答えればいいのだ』


 獣人にとって最も屈辱的な行為はいくつか存在している。

 その中の一つに獣人的特徴の欠損というものがある。


 たとえばツノが生えた種族ならばツノ、尻尾が生えた種族ならば尻尾というように人間と違う見た目上の特徴を獣人は誇りに思っている。

 そしてそれを失ったらどうなるのか。


 ひどい屈辱なのである。

 人間になろうとして獣人としての誇りを捨て去ったとほとんどの獣人から侮蔑的な目で見られることになる。


 一生の恥。

 親子であっても縁を切られてしまうような行いが尻尾の切断なのである。


 尻尾を切られて外に放り出されるぐらいなら死んだ方がマシであるというのが獣人の考えである。

 ドゥゼアはそんなこと知らなかったがカジオにとっては常識。


 その分そうした脅しをすることも本気度が分かるという側面もある。

 一通り脅したカジオはまたクレディアの後ろに回る。


 そこにはもちろんドゥゼアがいて、カジオの召喚を解除する。

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