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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンは仇敵に会います4

『よう、オゴン』


『本当に……カジオ兄さんなのか……』


 ドゥゼアはカジオを呼び出した。


『……な、なぜそのような姿に』


 ただしカジオの姿は薄く透けていた。

 これもまた練習の成果だった。


 より長い時間カジオを出していられないか思案して力を抑えてカジオを出せないかと試してみたらこうなったのだ。

 この姿のカジオは通常の召喚よりも長持ちする。


 その代わりにカジオは何にも触れることはできず、何も触れられないゴーストのような存在となっている。

 オゴンはカジオが現れたことにも驚いたがその透けたような姿にも驚いていた。


 だがカジオという存在の異常性はむしろこの方が伝わるだろうと思う。


『これは一体どういう……』


『今質問するのはお前じゃない』


『う……』


 カジオに鋭く睨みつけられてオゴンが怯む。

 透けた体はしているが感じる圧力はさほど変わらないから不思議である。


『なぜ俺を裏切った? 時間がない。早く答えろ』


 長く出ていられるといってもそれは通常の状態と比較しての話。

 召喚時間単体で見た時にはまだまだ短いと言わざるを得ない。


 カジオも本当ならじっくりと聞き出したいところであるのだが答えを急ぐ必要があるのだ。


『それは……』


『答えたくないというのならそれでも構わない。だがモタモタしているとお前はゴブリンに殺されることになる』


 ひどい脅し文句である。


『…………カジオ兄さんは強すぎた』


『強すぎたからなんだというのだ。強いことは俺たちの価値でもある。強くなることに罪などないはずだ』


『当時は違ったんです』


『何がだ?』


 カジオは顔をしかめる。

 力は使い方だ。


 カジオはその力で不用意に人を傷つけることもなかった。

 ただ強いということだけでは殺されるような罪などないはずである。


『当時俺たち獣人は戦争を優位に進めていた。人間の連合軍を破り、正面から相手を叩き潰すことに成功した。

 そこでこれ以上押される前にと人間側から和睦の申し出があったんだ』


『和睦については俺も聞いている。どうしてそれが俺への裏切りに繋がる?』


『人間どもは俺たちがより強い力を持つことを恐れたのだ。国を持ち、安定した軍事力を持ってしまえば止めることなど不可能になると考えた。そして人間どもが最も恐れたのはカジオ兄さん、あなただ』


『俺を恐れただと?』


 カジオとオゴンの会話をドゥゼアは黙したまま聞く。

 もはやドゥゼアのことなど目には入っていないようである。


『獅子王カジオ……戦場で最も多くの人間を殺した英雄。人間どもは獣人が国を持つことを認める一方でカジオ兄さんの強さの下で獣人が団結することを恐れていた。だから和睦の条件として…………カジオ兄さんがいなくなることを望んだんだ』


 恐れ。

 カジオは戦場において無類の強さを誇っていた。


 どのような大軍にも怯むことはなく、多くの人間を倒した。

 そしてまだ国ともなっていない獣人たちの中でカジオは獅子王と呼ばれ始めた。


 強さが絶対的な基準である獣人は絶対的な強さを持つカジオを自然と王としたのである。

 一方でカジオは融通の利かない人物でもあった。


 いかにも獣人らしいといえばそうなのであるが賄賂も懐柔も効かず、強い芯を持っていた。

 そのことを人間たちは危惧したのである。


 獣人が奪った領土を国として認めるがカジオが王となれば獣人たちはより強さを求めて強くなる。

 そうなった時にもはや周りの国で止めることなど不可能になると考えた。


 だから人間たちは獣人が勝ち取った領土のほとんどを明け渡して国とし、そして奴隷となっている獣人の無条件解放や多額の賠償金といった獣人たちに有利な和睦の条件を出す代わりに条件をつけた。


『カジオ兄さんが死んだから……獣人は安定を手にすることができたんだ』


 それがカジオの殺害だった。

 崩れたパワーバランスを元に戻そうとカジオが死ぬことを人間たちは要求したのだ。


 当時カジオは戦場に赴くが交渉のテーブルにつくことはなかった。

 なので本人も知らない、一部の獣人にしか伝えられなかった悪魔の取引、密約であった。


『当時でも意見は分かれた。従わずとも勝利することはできる、カジオ兄さんを殺すことはないと言う人もいた。けれど……みんな疲れていた。

 勝利がなんとか忘れさせていたけれど長く続いた戦争に辟易とした雰囲気が漂い、戦争が終わることをみんな望んでいたのだ』


 大勢のための1人の犠牲。

 むごい話であるが理解できないものじゃない。


 戦争は人の心を蝕む。

 心を疲弊させ、終わりの見えない戦いに嫌気が差してくる。


 それに戦争がどう転ぶかは誰にも分からない。

 一瞬の出来事で戦況が一変することもあり得る。


 獣人にとって有利な条件での和睦は魅力的だった。


『それで俺を裏切って殺したのか……』


『カジオ兄さんが言うようにどこかに静かに暮らしてもらうことも考えた。けれど分かれた意見に折り合いがつかず結局どうするのか決めあぐねていた』


 カジオは戦争の功労者。

 それを犠牲にするなどとんでもない話だと主張する人も当然にいた。


 殺すのではなく仕方なく隠居してもらうなどの折衷案も出ていた。

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