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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンは獣人の子供に心臓を教えます1


 手を切り落としたので小屋前に血痕が残ってしまった。

 レビスは気づいていそうだったけれどオルケとカジアはなんとか誤魔化してオチミヤコに向けて出発した。


 人が通る道はもちろん通らずまっすぐに突っ切ってオチミヤコの方に行く。

 買ってきた食料もあるがどれも日持ちするものなので無駄遣いしないように狩りをして食料も確保していく。

 

「そうだ……もっと体に血を巡らせるんだ」


 なんでこんなことにとドゥゼアは思う。

 慣れてきたカジアも狩りに参加するようになった。


 そんなに能力は高くないのだけど回り込んで魔物を追い込むぐらいの役割は果たせる。

 頭は悪くないのでジェスチャーでもある程度考えて動けるのだ。


 しかし父親であるカジオはそんな息子の姿に納得がいっていなかった。

 カジオいわくカジアは心臓の力をうまく使えていないのだと言った。


 カジアはカジオの魔力を受け継いでいて持っている素質は悪くないのに心臓の使い方を知らないせいで弱いのだ。

 そしてとうとうカジオは耐えられなくなった。


 口を出さないつもりだったのだがカジアに心臓の力を教えるようにカジオは頼んできたのであった。

 めんどくさいと拒否したドゥゼアであったが頭の中で『頼むぅー! お願いだー!』と響くと非常にうっさいので最終的に折れてしまった。


 なぜドゥゼアが心臓の力のことを、と疑問に思うが何も聞くなと言うドゥゼアの圧力に負けてとりあえず疑問は忘れることにしたのである。

 聞かれても面倒だから真面目な顔して乗り切ろうとしただけだが頭のいい子なので何かを察してくれたのだろうとドゥゼアは思った。


 なので夜寝る前にカジアに心臓の使い方を教える。

 カジアはちゃんと才能もあった。


 心臓の使い方を教えてやるとすぐにカジアは扱い方をマスターし始めた。

 ドゥゼアは未だに心臓の扱いが未熟なのにやはり元々心臓を持つ獣人ということなのだろう。


『すごい……これが僕の力……?』


 力強い魔力をカジアから感じる。


『ううむ……もしかしたら俺よりも才があるかもしれない』


 まだカジアは走り始めたばかりである。

 なのに感じられるカジアの力は自分の幼少期を超えているかもしれないとカジオは唸った。


 カジアの動きも変わってきた。

 狩りの時もやや鈍かったのだが動きにキレが出てきた。


 ドゥゼアもカジアのことは参考にしてみようと思った。


「はっ!」


『うっ! ううううぅ〜!』


「……だいじょぶ?」


 動きが良くなったのでカジアも訓練に参加させてみた。

 流石に動きは良くなっても戦いは不慣れでレビスの槍が腹部に思い切り直撃してカジアは倒れ込む。


 レビスの能力で槍は切れないようにはしてあるけれど当たると普通に痛い。

 純粋なスピード勝負だけでみるとカジアはレビスにも劣らなくなっているが、体の使い方や戦い方の差は大きい。


『まだ……まだお願いします!』


 涙目になりながらもカジアは立ち上がる。

 自分は強くなれないのだと思っていたカジア。


 しかし心臓の使い方を教えてもらって強くなれる希望が見えてきた。

 楽しいし、強くなりたい。


 相手は魔物だけど手加減もして付き合ってくれる。

 もしかしたらオゴンに会ってドゥゼアたちと別れることになればこの力を隠し、鍛えることもまた難しくなるかもしれない。


 今の熱があるうちに少しでも強くなりたいとカジアはレビスにかかっていく。


『うごっ……!』


 ただやる気なのはいいけれどまだまだだ。

 レビスの槍が頭に振ってきてカジアはパタリと倒れて気絶した。


「ふっ、よくやる」


『赤子が歩き始めたぐらいでまだ弱いな』


「お前もよく言うよ」


 ドゥゼアはカジオと同化している。

 そのためにカジオの感情の一部も今では感じられていた。


 口では厳しく言っているもののカジオはカジアの成長を喜んでいる。

 どこか自信がなくて消えてしまいそうな雰囲気すらもあったカジアが今は笑いながら戦う鍛錬をしている。


 目を細めて息子を見ているカジオの姿が見えるようだとドゥゼアは思った。


「一度ぐらい会ってみてはどうだ?」


『……俺にあの子に会う資格など……』


 ドゥゼアはカジオを呼び出す練習も重ねていた。

 あまり負担をかけすぎてもいけないが大きく負担をかけるほどに心臓は強靭になり、ドゥゼアの体に馴染んでいくようだった。


 カジオを召喚することはかなり消耗してしまうがその分心臓の力を大きく使うので短時間で力を使うにはちょうどよかった。

 召喚していられる時間も把握できてきたし、ほんの少しだけど召喚時間も長くなった。


 長い会話をさせてやることはできない。

 けれどカジアと一目会うぐらいのことはしてあげられる。


 むしろ毎晩一目会ってもいいっちゃいいのだ。

 けれどカジオはウダウダと言い訳をしてカジアと会うことを先延ばしにしていた。


 ドゥゼアも無理に呼び出して合わせるつもりはない。

 どうせ一回に会える時間は長くないのだからカジオの気持ちが整理できていなければ何もできずにカジアが混乱するだけである。


「だが覚えとけ。時間は有限だ」


 オゴンに会った後どうなるのかは分からない。

 まだ一緒に旅を続けられる可能性は低いとドゥゼアは見ている。


 となるとオゴンのところに着くまでがタイムリミットである。

 そこを過ぎればカジアと話すタイミングは失われてしまうだろう。


『……分かっている』


 普段は偉そうにしているくせにこういう時ばかりしおらしいのだから困ったものである。

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