表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

194/324

ゴブリンは獅子王を呼び出す練習をします1

 獣人たちの国はトウゲンという。

 カジアがいた町はその中でも田舎の方の小さい牧歌的な町である。


 そしてオゴンがいるのはこの町ではない。

 別の田舎町に住んでいるとカジアは言った。


 首都などの大きな町に住んでいなくて助かったなとドゥゼアは思っているがカジオにはどうやら腑に落ちないことがあるらしい。

 それはオゴンが田舎町に住んでいるということについてだった。


『奴の口ぶりでは獣人たちのために俺を殺したようだった。だがあいつの目には野心が燃えていた……』


 獣人のためというのもいくらかは本心だろう。

 けれどもオゴンという人物を知っているカジオからするとただ大義のために動いたとも考えにくかった。


 むしろ現在の獣人の王にはオゴンがなっていてもおかしくないとすらカジオは思っていた。

 それなのに首都どころか田舎に引っ込んでいるだなんて納得がいかない。


 獣人の誇り云々気にして引っ込む人でもないし、そもそも気にするのならカジオを殺したりはしなかっただろう。


「まあ何にしてもオゴンのところには行ってみよう」


 引っ込むには引っ込むなりの理由がある。

 もしかしたら何か改心したのかもしれない。


 理由がどうあれカジアが頼れるような相手はオゴンしかいないのならオゴンのところに連れて行くしかない。

 今の状況では中までついていけない危険な大都市より田舎町の方が都合がいい。


 ドゥゼアたちは町を中心にグルリと回るように移動して道を探して見つけた。

 適当に進んで迷子になってもいけないので道に沿って歩いて行く。

 

 道を行くと獣人に見つかってしまうかもしれないので道には出ないで少し離れたところから道を確認しながら進む。


「心配か?」


『まだ子供だというのに……不便をかけて申し訳ないと思っている』


 カジアは地面に横になって寝ている。

 小さい焚き火に照らされているカジアの顔を見ながらドゥゼアは胸にカジオの色々な感情が渦巻いていることを感じていた。


 カジアはよくやっている方だ。

 言葉も通じない魔物に囲まれながら気をしっかりと持って必死についてきている。


 その疲労から焼いた肉を食べてすぐに眠ってしまった。

 殺されかけた挙句の逃避行なのだ、精神的にも疲労はしているはずなのにカジアは諦めることなく頑張っている。


 時々弱音は口にするがそれぐらいは許容範囲である。


『主君は子供を成したことはあるか?』


「いや、ないな」


 ゴブリンは生殖活動も積極的な魔物である。

 弱いがゆえにゴブリンという種を残すためにはたくさんの子供を作り、ゴブリンという種が生き残る可能性を高める。


 そのためなのか妙にムラムラとする時もあるがドゥゼアはゴブリンの体では生殖行動に勤しんだことはない。

 生殖活動をすると体力も時間も取られる。


 それにゴブリンでありながらゴブリンを増やすということに抵抗感も覚えていた。

 ただ今は少しだけそうした行為に及んでも悪くないかもしれないと思う。


『俺はこうしてカジアに会うまで本当に自分が子供を残したのだと信じられなかった。俺の人生は戦いの日々であって、子を持って親になるということを考えたこともなかった。今こうして自分の子供を前にして、俺はどうしたらいいのか分からないのだ』


「……その気持ちは少し分かるよ」


 ドゥゼアも今を必死に生きている。

 ゴブリンは人と同じように愛情込めて子供を育てる魔物ではないけれど、自分に子供ができた時に自分は、あるいは子供との関係はどうなっていくのかと考えたことがないとも言い切れない。


 人のように子供と接するか、それともゴブリンのように子供と接するのか。

 非情になり切れるのか自信がない自分がいた。


 カジオは今親として何かできることはないかと思い悩んでいた。

 何もしてやれなかった息子に何を残せるのだろうとひたすらに胸を痛めていた。


「親になるって……簡単ではないからな」


 子を産んでただ育てればいいというものではない。

 ゴブリンならばそれでいいのかもしれないが、そこにもわずかな人としてのプライドや情がある。


「だが今できることはカジアを助けてやることだけだ」


 何かを残してやるにしてもまずはカジアの身の安全が保証されねばならない。

 むしろ安全に暮らしていけるようにしてやることがカジオのすべきことではないか。


『それについて一つ相談がある』


「なんだ?」


『俺のことを召喚してみてくれないか?』


「そういえばそんなことできるんだったな」


 獅子王の心臓はカジオと会話できるだけのものではない。

 カジオを呼び出すという能力も獅子王の心臓にはあった。


 獅子王の心臓がドゥゼアの体に馴染んで魔力が増えるまではカジオを呼び出すことはできないのでドゥゼアはそのことを忘れていた。

 かなりドゥゼアの体に獅子王の心臓は馴染んできたと思う。


 そのためかいつの間にかカジオの声も鮮明に聞こえるようになったし感情も強く感じられるようになった。

 平常時にはあまり感じないが戦闘に際して全身に力を巡らせると魔力も増えたことも感じていた。


『もしかしたら俺を出すことができれば話が進むようなこともあるかもしれない』


「確かにあるかもな」


 これから何があるかは誰にも分からない。

 カジオがいれば変わるような状況がある可能性も十分に考えられる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ