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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンは獣人の少年に出会いました3

『この、ゴブリンが!』


 ひとまずゴブリンがワーウルフといる理由を考えるよりもゴブリンに対処することが優先だと黒いヒョウの獣人は足を上げドゥゼアを蹴ろうとした。


『なっ……くそっ!』


 ドゥゼアは剣で蹴りを防ぎ、トウで足を突き刺した。

 鋭い痛みを感じて黒いヒョウの獣人の顔が歪む。


 ドゥゼアも蹴りを受けて飛んでいくがダメージはほとんどない。


「ほら!」


 ぶっ飛びながらドゥゼアが剣を投げる。


『くっ!』


 足に突き刺さったトウを引き抜く暇もなく黒いヒョウの獣人は投げられた剣をかわした。

 けれど剣は囮だった。


 黒いヒョウの獣人の腹から槍先が突き出してきた。

 振り返るとそこにレビスがいた。


 ドゥゼアとタイミングをずらしてユリディカの後ろから飛び出してきたレビス。

 逆側から攻めようとしていたレビスにまだ気づいていないことを察したドゥゼアは乱雑に剣を投げつけて、よりレビスから意識を逸らしたのであった。


『お、お前ら……何者なんだ……』


 燃え上がる火の槍が黒いヒョウの獣人には見えた。

 後ろに控えていたオルケが発動させた魔法で黒いヒョウの獣人の目が動揺に揺れる。


 おそらく真正面から戦ったらドゥゼアたちは負けていただろう。

 だが連携の取れた奇襲は黒いヒョウの獣人に考える余裕を与えず、力を発揮する前に大きなダメージを与えた。


 ここで冷静になってもすでに足をやられ、腹部をやられてしまえば立て直すことも難しい。

 今はもう冷静さもない。


 得体の知れない魔物たちに恐怖すら感じてしまっている。


『死にたくない……!』


 逃げ出そうとした黒いヒョウの獣人。


「オルケ、やるんだ」


「……はい」


 恐怖の色が浮かんだ目を見てオルケは攻撃をためらってしまった。

 けれどここで慈悲をかけて黒いヒョウの獣人を逃してはいけない。


 おそらく逃してしまえばドゥゼアたちのことは周りにバレて次に追われて命を奪われるのはドゥゼアたちの方になる。

 反撃される可能性もある。


 ためらえばそれだけリスクが大きくなってしまう。

 背を向けた黒いヒョウの獣人の胸を火の槍が貫いた。


 慈悲を施すのならばそれが出来るほどの強者になるか、そこまでの強者でないのなら苦しまずに相手を逝かせてやることだ。


『嫌だ……簡単な仕事のはずなのに……』


 胸を貫かれても黒いヒョウの獣人は死んでいなかった。

 手を伸ばし、はいずって逃げようとしている。


『ぐわああああっ!』


 ドゥゼアは黒いヒョウの獣人の足に刺さったトウを抜く。


『クソ……お前ら……なんなんだよぉぉぉぉ!』


「さあな、お前にとっては不幸な敵だったんだろうさ」


 ドゥゼアは黒いヒョウの獣人の言葉が分かるが、黒いヒョウの獣人はドゥゼアの言葉が分からない。

 決して交わることはない。


 ドゥゼアはためらいなくトウを振り下ろし、黒いヒョウの獣人の首が飛んだ。

 トウの切れ味は凄まじく柔らかいものでも切るように簡単に首を切断してしまった。


 ここで普通の魔物なら獣人でも食うのだろうがドゥゼアは人を食わない。

 元々人だった時のことを忘れないための最後の守るべきラインみたいなものである。


 レビスたちが食べるというのなら止めるものではないがドゥゼアが食べないのならレビスたちも食べはしない。


「オルケ、燃やしてやってくれ」


「……うん」


 ドゥゼアは飛んでいった頭を拾って体の側に置いてやり、燃やすようにお願いする。

 オルケも元々は人なので人を食べるつもりはない。


 死体を燃やそうとするドゥゼアの配慮にオルケは密かに感動している。

 けれどただの配慮だけではない。


 他の魔物に食い荒らされたりしないようにというほんの少しの思いやりがないこともない。

 だが大きな目的としては証拠隠滅という理由があった。


 通常ならばこの黒いヒョウの獣人にも仲間というものがいるだろう。

 帰ってこない時に探しに来ることも考えられる。


 死体が残っていたら仇を探すことは間違いない。

 そこからドゥゼアたちにたどり着く可能性は限りなく低いけれど無いと言い切れない以上はリスクを減らしておく。


 死体を燃やしておくべき理由がいくつもあるのなら燃やしておけばいい。

 オルケが火をつけると死体が燃える。


『あ……ああ……』


 そしてその間も獣人の子供は恐怖におののいて動けないでいた。

 ギリギリの奇襲攻撃であったのだが獣人の子供から見ればあれほど脅威だった黒いヒョウの獣人が魔物にあっさりとやられてしまったのである。


 ドゥゼアたちのことがとんでもない化け物に見えていた。

 もはや腰が抜けて動けない獣人の子供は絶望的な状況に泣きそうになっている。


 ドゥゼアが近づいてきて、次は自分を殺すつもりだと恐怖で心臓が締め付けられる。


「どうするつもりなの?」


「知らない」


 助けたのはいいけれど言葉が通じない以上意思の疎通も取れない。

 ユリディカとレビスが不思議そうな顔をしている。


 助けるだけなら立ち去ればいいのに何かをしようとしている。

 ドゥゼアは獣人の子供の前でしゃがんでトウを動かす。


 後ろから見ているみんなには何をしているのか見えていない。

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