ゴブリンはダンジョンを閉じました
「ドゥゼア!」
「大丈夫?」
「起きましたか」
ギャナリが水に沈んでいくのと同時に世界が暗くなっていった。
そしてドゥゼアが目を開けるとユリディカ、レビス、オルケが心配そうにドゥゼアの顔を覗き込んでいた。
「……何があったんだ?」
「こっちが聞きたいよぅ」
「うん。それ抜いた瞬間ドゥゼア倒れた」
「それ……これか」
ドゥゼアが手を見るとトウを握っていた。
どうやらトウを引き抜いた瞬間に気を失ったようだった。
「う……くそ、体がだるいな」
変な夢を見たせいか体に妙な気だるさがある。
おそらく夢ではない。
夢というか多分あれはギャナリの記憶だったのではないかとドゥゼアは寝転んだままぼんやりと考えた。
「おう、生きてたか!」
「……なんだこいつ?」
にゅっとドゥゼアの右目をロケットスパローが覗き込んだ。
右目の視界いっぱいにモフッとしたロケットスパローが埋まる。
「丸一日経ったから確かめにきたんだ! 生きていたからあれも持ってきたぞ!」
ドゥゼアは念のための対策も考えてあった。
途中でツタが切れたりして戻れなくなる可能性もある。
そのためにチユンにお願いをしていた。
1日経っても戻らなかったらロケットスパローに様子を見に行かせてほしいと。
もし生きているならと準備しておいたものもあった。
「おー、助かるよ」
グリンと頭を動かしてダンジョンに入る穴の方を向いた。
そこには大量のロケットスパローと大きな葉っぱをツタで繋いだものが置いてあった。
ユリディカに治してもらってもなんとなく気だるさが残っている。
みんなに支えてもらいながら大きな葉っぱを繋いだものの上に移動する。
「それじゃあ頼むよ」
「任せとけぇ!」
葉っぱを繋げたものにはさらにツタも繋がっている。
そのツタをロケットスパローたちが掴んで飛び始める。
ドゥゼアは脱出方法としてロケットスパローによる輸送を考えていた。
葉っぱを繋いでその中に入り、ロケットスパローたちに引き上げてもらおうと思ったのである。
使うとは思っていなかったけど役に立った。
全員いっぺんには持ち上げられないのでとりあえずドゥゼアとレビスが乗って上に運んでもらう。
空気感が変わってダンジョンを抜けたのだと理解する。
「ホーホー、生きて戻ったか」
光が見えて、ダンジョンの外に出てきた。
外ではチユンが心配そうにダンジョンの穴を覗き込んでいた。
ドゥゼアが出てきて安心したようにため息をついた。
「それが刺さっていたという剣か?」
「ああ、そうだ」
鞘はなかったので抜き身のトウをそのまま持ってくるしかなかった。
切れ味が凄まじそうなので刃に触れてしまわないように気をつけながら葉っぱの上から降りる。
「ホーホー……美しい剣だな。手がないから持てないのが残念なぐらいだ」
トウの刃に走る波にも似た模様を見てチユンは感心していた。
想像していた剣とはまた違っていて、美術品のような美しさがあると感じていた。
ドゥゼアとレビスが降りるとロケットスパローたちはまた葉っぱを持って穴に降りていく。
重くて持てなかったし葉っぱが壊れてしまいそうだったので次はユリディカだけが運ばれてきた。
「ちょっと失礼じゃないですか!?」
重たいから降りろとロケットスパローにぶっきらぼうに言われたオルケはちょっとプンプンとしていた。
ただ魔物にそんな配慮求める方が間違っているのだ。
ロケットスパローには重たくて持てないから降りてほしいということ以上の意味はない。
ワーウルフとリザードマン同時だと重たいと言われても仕方ないのである。
ひとまずこれでダンジョンを攻略して戻ってこれた、ということになるのだろうかとドゥゼアはダンジョンの穴を覗き込む。
「おっ?」
地面が揺れ出した。
「ホー、危ない!」
立ってられないほどの揺れに穴に落ちかけたドゥゼアをチユンがクチバシで引っ張る。
「助かったよ!」
なんの揺れだろうと周りを見ているとダンジョンの穴が小さくなっていく。
ダンジョンに変化が見られないのでまだ何かあるのかと思ったけれどそんなことはなかったようだ。
「ホーホー! 穴がなくなった!」
みるみる穴は小さくなっていき、そしてそのまま閉じてしまった。
川の水が流れ出して本来の流れていたところに収まっていく。
穴がなくなったことをチユンを始めとしたロケットスパローたちが喜ぶ。
「ホーホー! 感謝するぞ、ドゥゼア! ゴブリンの友よ!」
チユンが翼でドゥゼアたちをギュッと抱きしめる。
モフッとしたチユンに包まれて、これが寝具だったらなとドゥゼアはぼんやりと思った。




