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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンはトウを手にします2

 今一度周りを見回すがかがり火と突き刺さったトウ以外には何もない。

 それならトウを引き抜いてしまえばダンジョンも終わるかなと考えた。


「……あー、そんな簡単にはいかないよな」


 トウの方に向かって歩き始めた瞬間地面から何かがズボッと飛び出してきた。

 それは手だった。


 真っ白な骨の手。

 手をついて骨の体が地面の中から出てくる。


「スケルトンか……」


 ただし普通のスケルトンと違うのは両手にトウを持っていることである。


「くっ……またか」


 少し落ち着いていた心臓がまた激しく鼓動し出してドゥゼアは顔をしかめた。


「今度はなんだ?」


『あれはまさか……』


「知り合いか?」


『そんな……ギャナリ……』


 なんなのかドゥゼアには分からないけれどスケルトンのことをカジオは知っているようだ。

 スケルトンを見ただけで元々の人が分かるはずはないから持っているトウに見覚えがあるのかもしれないと考えた。


 スケルトンはドゥゼアたちの方を向いたままダラリと両手を下げている。

 しかしドゥゼアが一歩踏み出した瞬間に腕を上げてトウを構える。


 相手はドゥゼアの中にカジオがいることなどお構いなしのようである。

 もちろんスケルトンがドゥゼアの中にカジオがいることを知っているはずもないが。


 まだスケルトンは武器を構えただけで攻撃してこない。

 一歩下がると腕を下ろし、また一歩前に出ると武器を構える。


「近づくと攻撃してくるみたいだな。みんな、戦う準備を」


 しっかりと落ち着いて戦いの準備をする。

 ドゥゼアは剣を、レビスは槍を、ユリディカはチクートを、そしてオルケは杖を構える。


「まずは俺が行く」


 ドゥゼアは胸の高鳴りに体を任せる。

 鼓動を抑えつけるのではなく、それを受け入れて全身に血を、魔力をたぎらせていく。


 頭から足の先まで力が満ちていく。

 

「カッコいい……」


 集中を高めて真っ直ぐにスケルトンを見据えるドゥゼアの横顔を見てレビスが頬を赤く染める。


「きょーか!」


 ユリディカがドゥゼアを強化する。

 ゴブリンの体ではあり得ないほどの力強さを感じる。


「いくぞ!」


 ドゥゼアがスケルトンに向かって走り出す。

 一歩踏み出した瞬間にスケルトンも動き出してトウを振り下ろす。


「はっ!」


 ドゥゼアはトウをかわして剣で切りつける。

 スケルトンは剣をもう一本のトウで防ぐ。


 スケルトンなら力で押し切れるかもと思っていたけれど思いの外力も弱くない。

 自ら引いて鍔迫り合いを終わらせたスケルトンは素早く攻撃に転じる。


「クッ、速いな!」


 2本のトウから繰り出される攻撃は回転が速く、ドゥゼアでも防御でいっぱいいっぱいだった。

 適当に振り回しているのではない。


 技術に基づいて2本のトウを操っている。

 強化した身でも倒すのは難しいかもしれない。


 ドゥゼアだけだったなら。


「やっ!」


「おりゃああ!」


 後ろに回り込んでいたレビスとユリディカが同時にスケルトンに襲いかかる。


「わっ!」


「にゃに!」


 スケルトンはトウを一本ずつ使って体を回転させながらレビスとユリディカの攻撃をいなす。


「危ない!」


 防御から攻撃に移るのが速い。

 攻撃を受け流されて体が流れたユリディカの背中を切り付けようとした。


 ドゥゼアが間に割り込んでスケルトンの攻撃を受け止める。


「あ、ありがとう」


「このスケルトン油断できないぞ!」


『あの戦い方……やはりギャナリです』


「だからどうしたってんだ!」


 目まぐるしく繰り出されるスケルトンの攻撃をドゥゼアはなんとかガードする。

 悠長にカジオと話している暇なんてない。


「スケルトンと対話なんて基本は無理だ! 知り合いだってなら倒して止めてやるのが1番だろうさ!」


『……そうですね。どうかあいつを倒してやってください』


 レビスが後ろから突き出した槍を跳んでかわして上からドゥゼアに切りかかる。

 なんだかドゥゼアばかりが狙われている。


「うっ!」


 トウが頬をかすめて血が飛ぶ。

 切れ味が鋭く切られれば危険だ。


「ドゥゼア!」


 ユリディカがドゥゼアの頬を治す。

 戦いながらでも治療ができるユリディカの能力はありがたい。


 しかしスケルトンの動きは段々と洗練されていく。

 ドゥゼアの動きを先読みするように攻撃を加えてきて防ぐのが辛くなってきた。


「レビス、お願い!」


「ん!」


 オルケの声に応じてレビスが大きくスケルトンの足元を槍で払う。

 範囲の広い足払いをスケルトンが飛び上がって回避する。


「食らえー!」


 そこにオルケが放った火の玉が襲いかかる。

 いかに優れた能力を持っていたとしても空中では動けまい。


 スケルトンはトウをクロスさせて火の玉を防ぐが衝撃までは受けきれずに大きく吹き飛ばされる。


「ふふん! おりゃあ!」


 吹き飛ばされた先にはユリディカが待ち受ける。

 鼻息荒いユリディカが思い切り右腕を振るう。


 スケルトンは空中で体をねじってかわそうとしたけれどそれも叶わずユリディカの鉤爪が背骨に直撃した。

 鈍い音がしてスケルトンの体が二つに叩き折られた。


 上半身と下半身がそれぞれ飛んでいく。


「トドメだ!」


 スケルトンの右腕を踏みつけて封じたドゥゼアが頭のど真ん中に向かって剣を突き立てた。

 頭蓋骨が真っ二つに割れて、抵抗しようとしていた左腕がパタリと力なく地面に落ちた。

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