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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第四章

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ゴブリンはトウを手にします1

 ツタもただ結んで伸ばしただけではない。

 登りやすく、降りやすいように途中途中で結び目を設けて掴めるようにもしておいた。


 長さそのものもかなりの確保した。

 いらないんじゃないかと思うほどの長さになったけれど必要な長さも分からない以上は備えすぎなんてこともない。


 ツタは丈夫でユリディカやオルケがぶら下がっても全く問題ない。


「それじゃあ頼むぞ」


「ホーホー、任せておけ」


 ツタロープを近くの木に結びつけて逆側を穴の中に垂らした。

 ツタロープの監視をチユンに任せてドゥゼアたちは穴の中に降りていく。


 一応木の枝に結びつけて登り降りする練習はしたけれどレビスやオルケがちゃんと降りられるか少し心配だった。

 だがゆっくり慎重に降りている様子を見るとそんなに心配しなくてもよさそうだ。


 ドゥゼアとユリディカで先にスルスルと降りていく。


「ん……」


 降りていくと空気感が変わった。

 肌に感じるちょっとした圧力のようなもの。


 ダンジョンに入ったのだ。

 そのまま降りていくと地面が見えた。


 垂らしたツタロープの先が余っている。

 十分な長さがあったようでよかった。


「よいしょ……」


「ぴょーん」


 1番下までなんとか降りてきた。

 まだ降りてきているレビスとオルケのことを見上げてみると暗い天井に丸く開いた穴が見える。


 そこから光が差し込んでいてドゥゼアは思わず目を細めた。

 川の水がどうなっているのかと思ったが川の水も穴の中から流れ落ちてきている。


 流れ落ちた水はまたどこかに流れていっている。


 レビスたちを待っている間に周りを警戒していたが魔物の気配も特に感じられない。

 

「はぁ……結構大変ですね」


「疲れた」


 じっとりと汗をかきながらもオルケは無事に降りてきた。

 レビスも汗をかいてはいるがオルケよりは余裕がありそうだった。


 敵の姿が見えないのなら多少休憩してもいい。

 上から流れ落ちてくる水を飲んで喉を潤し体を休める。


 ダンジョンの中は一本道になっている。

 それ以外の方向は壁に囲まれていて進むことができない。


「よし、行けるか?」


「大丈夫」


「はい、もう平気です」


 レビスとオルケの体力も回復したので先に進む。

 穴の真下は穴から差し込む光で明るいけれどそれ以外のところには明かりとなるものがなくて暗い。


 オルケが火の魔法を使って照らしてくれる。

 ロケットスパローの話では何もいなかったと聞いているがロケットスパローが無視されただけで何かがいた可能性も否めない。


 ユリディカにもちゃんとミミなどを使って警戒してもらっているけれど拍子抜けするほどに何もいない。

 進んでいくと広い空間に出た。


「あれが話にあった剣か……」


 異様といえば異様。

 二つの大きなかがり火があって部屋の中はそれなりに明るさがある。

 

 そしてそのかがり火の間に地面に突き刺さっている剣が見えた。


「うっ!」


「ドゥゼア?」


「大丈夫?」


「ど、どうしたんですか?」


 急にドゥゼアが苦しそうに胸を押さえて、みんなが心配した顔をする。

 心臓が胸を突き破って飛び出してきそうなほどに強く鼓動し始めたのである。


 この感じには覚えがある。


「カジオ……!」


 心臓が勝手に強く胸打つ時はカジオが何か関係している。


『主君……あれは俺の剣です』


「何?」


『俺が生前使っていたものです。とっくに無くなっていたと思ったのに……なぜこのようなところに』


「分かった……分かったから落ち着け」


 何もしていないのに心臓だけ強く鼓動されていると体の調子がおかしくなる。

 最初の頃に比べれば慣れた感じはするけれど完全に大丈夫になるような気はしない。


『申し訳ありません』


 ドゥゼアの不快感を感じ取ったのかドゥゼアにのみ聞こえるカジオの声に申し訳なさが混じっている。

 程なくして胸を突き破りそうな鼓動は落ち着いてきたけどそれでも普段よりもドキドキとしている。


 これぐらいなら許容範囲だから仕方ない。

 小さくため息をついてドゥゼアはみんなに心配ないとうなずいてみせる。


 ともかくあの刺さっている剣の正体は分かった。

 獅子王であったらカジオが使っていた剣。


 おそらくカジオの記憶を覗き見た時にも腰に差していたものだろうと思う。

 刃はやや細めで片刃で軽く湾曲している。


 波にも似た模様が刃に走っていて剣そのものに美しさを感じる。


『あれはシシノキバという名前でトウという武器の種類になります』


「トウ? 初めて聞くな」


『我々獣人に伝わる武器の形で、さらに獣人の中でも一部の職人にしか作ることを許されていません』


「なるほど……」


 ドゥゼアも獣人についてはほとんど知らない。

 人であった時も関わったことはないしゴブ生の中ではもちろん聞いたことすらない。


 カジオよろしく容姿が少し人とは異なるぐらいの知識しかないのである。


「……ドゥゼア、カジオと話してる?」


 レビスが首を傾げる。

 一応カジオのことは話であるがカジオの声が聞こえるわけじゃないのでドゥゼアが1人で何かを話しているような奇妙な光景に見えるのだ。


「ああ、そうだ。どうやらあの剣はカジオのものだったみたいでな」


 ついつい他には聞こえていないことを忘れてしまいがちになる。

 ドゥゼアが説明してやるとレビスも納得したようにコクンとうなずいた。

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