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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第三章

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ゴブリンの心臓は鼓動し始めました

「はっ……!」


「……ドゥゼア!」


 目が覚めて、また自分が死んで新たなゴブリンに転生したのではないかと思った。

 ぼんやりと天井を見つめているとレビス、ユリディカ、オルケが顔を覗き込んで生きていたと実感し始める。


 それでもまだ頭がかすみがかったような気分でみんなの顔を眺めていると少しずつ頭がはっきりとしてきた。

 そしてドゥゼアは何が起きたのか思い出して胸に手をやった。


 心臓が胸を突き破ったはずなのに胸には傷もない。

 段々と夢のような、カジオとの会話も思い出してきた。


「大丈夫……?」


 いつまでもぼんやりとしているドゥゼアのことをレビスが不安そうに見ている。


「ああ……ここは?」


「ドゥゼアがそのまま気絶しちゃったから安全のためにここまで運んできたんだよ」


 オルケが答える。

 宝箱の中は心臓以外に入っていなかった。


 回収できるものもないので宝箱は放っておいてオルケは一度ダンジョンから撤退する判断を下した。

 元人間でもあるオルケはちゃんとドゥゼアの作った簡易地図も読めるのでユリディカがドゥゼアを背負って慌ててダンジョンから脱出した。


「良い判断だな」


「そうですか?

 ならよかったです」


 留まっていたら危険なこともあっただろう。

 一度退くという判断ができたのは良かったと思う。


 ドゥゼアに褒められてオルケは誇らしげに胸を張る。


「ちょっと水をくれないか……」


 気づいたら口の中がカラカラだった。


「うん!」


 ユリディカがサッと近くにあった水筒を差し出した。

 行儀は悪いけれど寝転がったまま水をガブガブと飲む。


 口の端から溢れて流れるけどそんなことも気にしない。


「ふぅ〜」


 水が体に染み渡っていく。

 少し火照った体にひんやりした水は気持ち良くもある。


「何があった?」


 外から見ていてもドゥゼアに何が起きたのかレビスたちには分からなかった。

 またあんなことがあると、と心配している。


「何から話していいものか……」


 ドゥゼアは体を起こすと宝箱から見つけた心臓が魔道具だったことと魔道具に宿ったカジオの意思と話したことを説明した。


「そんなことあるんですか……?」


「あるもないも知らん。

 だが俺に起きている以上はあるとしか答えるしかないな」


「じゃあドゥゼア強くなった?」


「多分そういうことになるな」


「確かに……ドゥゼアもっと良いにおいがする……」


 クンクンとユリディカがドゥゼアのにおいを嗅ぐ。

 元々ドゥゼアのにおいは好きだったけど今はもっとワイルドみがあってさらに強いオスの香りがドゥゼアから漂っている。


 ドゥゼアが体を匂ってみるけれど相変わらずどんなにおいなのかは分からない。

 しかしもしかしたら獅子王の心臓から来るにおいなのかなと思った。


「よいしょ……くぅ……!」


 立ち上がって体を伸ばす。

 あんなことがあった割には体の調子はすこぶる良い。


 これまでにないほど絶好調。

 すごく体が軽いように思える。


 獅子王の心臓の効果だとこちらは確信を持って言える。


「……ドゥゼアおおきくなった?」


「ん?

 ………………確かに」


 レビスが不思議そうな目をしてドゥゼアを見ている。

 ドゥゼアとレビスはほとんど同じ背の高さをしていた。


 ゴブリンはオスだろうがメスだろうがほとんど体型的な違いはないのだが今ドゥゼアの視線はレビスより少し高くなっていた。

 ドゥゼアの体は一回り大きくなっていた。


 変化の量としては小さい。

 けれど確かに変化していたのである。


「ジー、ドゥゼア変わったね」


「おお、お前もいたのか」


「ずっといる」


 水の精霊も顔を出してドゥゼアのことを見ていた。


「変わったってどう変わったんだ?」


「魔力増えた。

 体の中を魔力が巡っている」


「なるほどな」


 やはりこの好調も獅子王の心臓のおかげである。

 ドゥゼア自身でも感じられる力強さがある。


「どうにも落ち着かないな。

 ユリディカ、少し付き合ってくれ」


 体の調子を確かめたい。

 病み上がりであるが少し体を動かしたくてうずうずとしていた。


「分かった」


 短剣を鞘をつけたまま構える。

 ドゥゼアが体勢を低くしてユリディカと距離を詰める。


「うっ!」


 ほんの少し油断していた。

 ユリディカは慌ててかわすが短剣が腹をかすめる。


「う、にゃ、わっ!」


 隙を見逃さずドゥゼアが苛烈に攻める。

 反撃もできずにガンガン押されていくユリディカ。


「あっ、そこは……」


「ほっ……ぎゃー!」


 ボチャン。

 ドゥゼアの攻めに下がりすぎたユリディカは水があることを完全に忘れていた。


 ドゥゼアの短剣をかわして後ろに飛んだユリディカは足を踏み外して水の中に転落した。


「……怒るよ?」


「すまん……少しばかり熱中してしまった」


「…………今回だけ」


「た、助けてー!」


 予想通り、というべきかユリディカは泳げなかった。

 バシャバシャと沈まないように手足をバタつかせるユリディカをみんなで協力して助け出す。


「はははははっ!」


「むぅー……」


 濡れて一回りユリディカが小さくなった。

 それを見てオルケが爆笑している。


 しょんぼりとするユリディカは火に当たって毛を乾かそうとしている。

 レビスもオルケほどではないけど面白くてクスクスと笑っている。


「すまないな、ユリディカ。

 少しばかりやりすぎた」


 体の調子が良くて周りの状況が見えていなかった。

 ユリディカだけじゃなくドゥゼアにも非はある。


「とりあえずどれぐらいものかは分かったからありがとうな」


「うん……」


 ユリディカの犠牲があって能力的には微増ぐらいで強くなったことが分かった。

 けれど大きくなった影響で手足も少し長くなり、戦いやすくもなった。


 もう少し心臓が体に慣れてくればもっと強くなれるかもしれない。

 今回のゴブ生に関して希望が見えた気がするドゥゼアであった。

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