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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第三章

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ゴブリンは成長します3

 振り向いてみるとレビスが地面にへたり込んでいる。

 ユリディカが治療しようとしているみたいだけどどうやら治療も通じないらしい。


 頭を抱えるようなレビスにドゥゼアも駆け寄る。

 これまでなんの異変もなかった。


 病気も怪我もない。

 急に苦しみ出す理由が分からない。


 その上ユリディカの治療が通じないのもなぜなのか理解が出来なくて何をしたらいいのか判断できない。


「レビス、聞こえるか?」


 苦しそうに顔を歪めているレビスはとりあえず意識はある。

 ドゥゼアが顔を近づけて声をかけるとレビスが顔をしかめながらドゥゼアを見た。


「レビス、どんな状態だ?」


 外から見ても何が原因なのか分からない。

 それならばレビス本人に不調が何によるものなのか聞くしかない。


「耳……」


「耳?」


「熱い……」


「耳が熱い?」


 レビスは頭を抱えているのではなく耳を押さえている。

 不調の理由を聞いてもドゥゼアにはその原因が分からないでいた。


「ユリディカ、レビスを抱えて走れ!」


 不調の原因が何であるにしろダンジョンのど真ん中で動けなくなるのはまずい。

 まだアイアンテールウィーゼルを相手取るのに余裕はあるがレビスを守りながら戦うのはリスクが大きい。


 ここはまず安全なところに撤退せねばならないと判断をした。

 ユリディカがレビスを抱きかかえてドゥゼアたちはダンジョンからの脱出を図る。


「オルケ、ともかく広く攻撃しろ!

 正確さよりも優先だ!」


「はは、はい!」


 一々アイアンテールウィーゼルを相手にしている余裕はない。

 これまでは魔力の消費を抑えるためにちゃんと狙って魔法を打っていたオルケにもっとデカく魔法を放つように指示する。


「悪いがさっさと死んでくれ!」


 片手に短剣、もう片方の手にナイフを持ったドゥゼアはアイアンテールウィーゼルの鉄の尻尾をかわして短剣とナイフを叩き込む。

 ほとんどかわしながらの一撃。


 アイアンテールウィーゼルは短剣もナイフも防ぐことが出来ずに切り裂かれる。

 ドロップ品を悠長に拾うこともしないで真っ直ぐに出入り口に走る。


「よし!」


 とりあえず家に着いて再び洞窟に戻ってきた。


「大丈夫か、レビス!」


 ユリディカがレビスを地面に下ろす。

 相変わらずレビスは苦しそうな顔をしている。


 ユリディカやオルケもどうしたらいいのか分からなくてアワアワとしている。

 ドゥゼア自身もどうすることもできない。


 とりあえず焚き火に火をつけて温めてやるぐらいしかできない。

 

「うっ!

 うぅ……体……熱い」


「光っ……てる?」


 浅い呼吸を繰り返しているレビスはオルケが拾って持ってきてくれていた槍に手を伸ばした。

 何か力を加えても大丈夫なものが欲しかったのだ。


 耳から手が外れたので耳を確認することができた。

 耳の何が悪いのか見てみたらレビスの耳が光っていた。


 もっと良く見てみるとレビスの耳のそのものが光っているのではなく、レビスの耳に着いているイヤリングが光っていた。


「うぅ……うわあああああっ!」


「れ、レビス!?」


 苦しそうに雄叫びを上げた瞬間レビスが持っていた槍が大きくひん曲がった。

 金属製の丈夫な槍なのに柔らかいものかのようにグニャリとレビスの手によって曲げられてしまったのである。


「レビス……レビス!」


 そのままレビスがパタリと倒れてしまった。


「……生きてはいるな」


 口に手を当ててやると呼吸はしていた。

 ひとまず濡らした布で汗を拭いてやってちゃんと寝かせてやる。


「何だったんだ?

 まさか……本当に魔道具……でも魔道具だからって何でこんなことに?」


 イヤリングが光っていた。

 そのことから考えるにレビスの不調はイヤリングが原因であると考えられる。


 フォダエの手紙によるとレビスのイヤリングは魔道具の可能性がある。

 だとしたら魔道具としての効果のためにこうした不調が起きたと考えることができる。


 けれどイヤリングが何の魔道具なのかは分かっていない。

 こんな風に持ち主を苦しめるような効果があるなど一体何の能力を持っているのだろうか。


 オルケに聞いてみるけどオルケも分からないと答える。

 フォダエがいたら分かったのだろうかとため息をつきながらドゥゼアたちはレビスの様子を見ていることしかできなかった。


 ーーーーー


「大丈夫かなぁ……」


 ユリディカが心配そうにレビスを見つめる。

 もう3日もレビスは意識がないまま眠っていた。


 何もできないもどかしさだけが募っていき、不安と心配で重たい空気が漂っていた。


「レビスがこのまま起きない……なんてことはないよね?」


 あまりにも目を覚まさないのでこのような不安な考えまで浮かんでくる。


「大丈夫だと思う……けどな」


 確定的なことは言えない。

 考えたくはないけれど魔道具の中には所有者をむしばむ呪いの魔道具と言われるものもあるにはある。


 もしかしたらそうした類のものの可能性も排除できないと冷静になって思う。

 呪いの魔道具のようなものの効果で眠りに落ちてしまったのならドゥゼアたちにはどうすることもできない。


 残念だけれどレビスをここに置いていくという非常な決断も考えなければいけなくなってしまう。


「……大丈夫だよ」

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