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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第二章

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ゴブリンはリッチに協力します6

 双剣使いの冒険者はユリディカと距離を詰めると激しく剣を繰り出す。

 二本の剣から繰り出される絶え間なき攻撃に襲われてユリディカは必死に防御する。


『やるな……だが!』


「うっ!」


 なんとか防いでいたが相手は騎士ではなく冒険者。

 格式ばった剣術の使い手ではない。


 変化に富んで意識のないコイチャのものよりも柔軟に攻めてくる。

 双剣をギリギリで防いだけれどバランスを崩したユリディカの腹を双剣使いの冒険者が蹴った。


 転がるユリディカ。

 どうしてもコイチャが安全が見ていたいと肩に乗っていたピュアンも同時に地面に落ちてしまった。


「やああああっ!」


『な……なんだ……と』


 ユリディカにとどめを刺そうと双剣使いの冒険者が迫ってきた。

 一瞬の交差、双剣使いの冒険者の剣がユリディカの頬をかすめた。


 代わりにユリディカの爪は双剣使いの冒険者の腹を貫いていた。

 油断していたのではなかった。


 なのに対応できなかった。

 なぜなら急にユリディカの動きが速くなったからである。


『ク……ソ……』


 ユリディカが手を引き抜くと双剣使いの冒険者はどさりと地面に倒せた。


「きゃあああっ!」


「ピュアン!」


『なんだこれ?

 これも魔物か?』


 落ちたピュアンを冒険者が見つけてしまった。

 動く不思議な猫の石像だがこんなところにいるのだからリッチの手下だろうと思われた。


 見逃してしまうよりとりあえず倒しておけば危険はなくなる。

 ピュアンの前で冒険者が剣を振り上げた。


 とっさのことに逃げられないピュアン。

 助けに向かおうとしたユリディカだったが少し距離が空いていてしまって間に合いそうにない。


 コイチャをちゃんと止めてあげられていないのに。

 せめてもの抵抗に体を丸めて守ろうとしたピュアン。


 頭を前足で覆うように守っていたピュアンはいつまでも衝撃が訪れずソーッと手をどける。


「ピュ……アン」


「コイチャ……?」


 冒険者の胸から剣が突き出ている。

 その後ろにはスケルトン。


 ボロボロの姿をした中でも奇妙なスケルトンはコイチャであった。


「コイチャ……まさか」


『こいつ!』


 仲間を倒された冒険者たちがコイチャに向かう。

 コイチャはピュアンを抱きかかえると振り向きざまに冒険者たちの剣を防ぐ。


 明らかにコイチャの動きが変わった。

 固い動きだったものに柔らかさが出てきた。


 そしてすぐさま冒険者の1人の首を浅く切り付けて後ろに下がる。


「これは一体……いや」


「コイチャ、あなたなの?」


 フォダエによって縛られていた場所から無理やり解放されたコイチャは宙に浮いたような存在だった。

 目的を失い、だからといってその中にあるコイチャが失われたわけでない。


 コイチャの魂を縛り付けていたものがフォダエによって幸か不幸か解放されたのである。

 そして愛する人の危機によってコイチャの目が覚めた。


「そうか……ピュアン、僕だ」


「コイチャ……!」


 コイチャは確かに骨の体の中にいた。

 大海を漂うようにぼんやりとしていたけれどちゃんと意思は存在していたのである。


 この状況はなんなのか。

 思い出そうとした瞬間ひどく長い記憶が一気に再生された。


 アンデッドになってまでピュアンを守ろうとした記憶。

 その後も場所を守ることに固執して長い時を過ごした記憶。


 最後にピュアンたちが訪れた後リッチに連れられてここに至るまでの記憶。


「ひとまず君は離れているんだ」


「嫌よ!

 もう離れ離れになるのはたくさんよ!」


「そうか……ならしっかり掴まっていろ!」


 猫の石像を抱えるスケルトン。

 非常に奇妙な取り合わせであるが意識を取り戻したコイチャは強かった。


 通常でもスケルトンとして異常な個体であったが今はリッチの統制下にあってさらに能力が高まっている。

 そこらへんの冒険者ではとてもコイチャに敵わなかった。


「なんて化け物なの……」


 一方でフォダエは苦戦を強いられていた。

 ジジイの周りには打ち砕かれた骨が散乱している。


 フォダエの周りにも倒れた冒険者の死体が転がっている。

 フォダエのスケルトンが多くジジイに向かう間に冒険者たちはフォダエに向かった。


 スケルトンと冒険者がそれぞれにやられて戦場はひどい有様であった。

 リッチであるフォダエはまだわかる。


 死者の王とも言われ、膨大な魔力を誇る強力な魔物であるから。

 しかしジジイは人間だ。


 なのに波のように押し寄せるスケルトンを傷ひとつなく全て倒してしまった。

 それでいながら疲れは見えず、目の奥に燃える闘志はより一層激しくなっている。


『次はお前だ』


 その言葉はフォダエに向けられたものか、あるいはドゥゼアに向けられたものだったのかもしれない。

 冒険者の数もだいぶ減ったけれど今残っているのは一定以上の実力を有する実力者になる。


 一方でフォダエの使役するスケルトンももはや長くは持たないぐらいの数しかいない。

 フォダエの中で思考が駆け巡る。


 大きな魔力を持つリッチであるが無尽蔵とはいかない。

 フォダエの魔力もかなり減ってしまっているがジジイの疲労具合は一切分からない。


 このままじゃ負ける。

 全てを失う。


 これまで行ってきた研究も全てが無駄になってしまうかもしれない。

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