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やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜  作者: 犬型大
第二章

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ゴブリンはリッチに協力します1

 オルケに見つかり、一応客人として扱ってもらい始めてから3日が経った。

 屋敷の管理はオルケがやっているようで毎日順番に部屋を掃除していっている。


 それでも一日中活動していられるスケルトンであるので暇な時間は多い。

 特に夜中はすることがないようだったのだけど同じく寝ないピュアンが話に付き合ってくれるらしくてすこぶる機嫌はよかった。


「聞いてもいいか?」


「何でしょうか?」


「何で食べ物があるんだ?」


 オルケは食事の世話なんかをしてくれる。

 料理の腕は上手く温かいものが食べられて文句なんて何一つないのだけど疑問はあった。


 どこから食べ物が出ているのか、である。

 この屋敷にドゥゼアたち以外に生きているものはいない。


 当然のことながらスケルトンは食事を取らなくても生きていけるので食べ物を必要としない。

 ならなぜ食べ物があるのか。


「それはご主人様が買ってくるからです」


「……リッチだろ?」


 リッチもアンデッドだ。

 体の構造的にはスケルトンとほぼ同じく骨の魔物である。


 不老不死、不眠不食で生きていく上で必要なものが極端に少ない。

 食べ物を買ってくる理由などないのだ。


「食料品はいらないのですが事情もあるのです。

 ご主人様は人に化けて時々町に必要なものを買いに行ったりもするのですがそうした行いが頻繁になるほど相手に違和感を持たせないような振る舞いが必要だと言っていました」


「それはそうだな」


「必要なものだけ買っていてはどうしても不自然に見えてしまう時があります。

 なのでご主人様はカモフラージュとして色々と買い込んだりします」


「なるほどね」


「そうして買い物をしているのに食べるものを一切買わないというのもまた不自然に映ります。

 だから時々たくさん食べ物を買い込んで生きている人のように偽装したりするのです」


「そうなのか」


 思ってたよりちゃんとした理由があった。

 確かにいかにも実験に使いそうな特殊なものばかり買っては注目を集めてしまう。


 そこで日用品を買って紛れさせたり、食料品を買って一般人に溶け込むことで不用意な注目を避けているのだ。


「食べないんですけどね。

 でももったいないので日持ちしそうなものは置いておいて、そうでないものもご主人様が魔法で凍らせて一応保存しています。


 いつか食べる日が来るかもしれませんし、こんな風にお客様が来ることだってあるかもしれませんからね!」


 食べる日も来ないし客が来ることもない。

 そう思っていたのだけど食事を必要とする客が来てくれた。


 オルケはカラカラと笑う。

 味気ない日常に話し相手と料理の時間まで出来てとても嬉しかった。


 自分じゃ食べないけれど他者のために料理を作って、それを美味いと言って食べてもらえるのは非常に楽しみである。

 それに加えて命令すればスケルトンがカエルも狩って来てくれるので肉については新鮮なものも手に入る。


「それにしてもご主人様も遅い……」


「オルケ、帰ったぞー!」


 ユリディカのおかわりを山盛りオルケが運んでいるとバンと激しくドアが開いた。

 額に黒い宝石のようなものが埋め込まれたスケルトンが入ってきた。


「……ぎゃー!

 我が家に見知らぬ魔物がいて、なんか食事してるぅー!」


「おかえりなさいませ、ご主人様」


「なななな、なにこれ!」


「お客様です」


「いや、私知らないよー?」


 リッチとのファーストコンタクトはどうなるのか心配であったが思いの外軽いものになってしまいそうだった。


「ちょっ……どういうことよ?」


 ーーーーー


「ふぅーん、なるほろねー」


 とりあえず最後の晩餐になるかもしれないから食事だけは腹に詰め込んで、そしてリッチとお話しさせてもらうことになった。

 オルケが間に入ってくれたけれどリッチもすぐに攻撃してくるようなことはなく理性的だった。


 むしろ食べ物を詰め込むのを待ってくれていたりドゥゼアの話を聞いてくれたりと寛大な方である。

 ドゥゼアたちの正面に座ったリッチの名前はフォダエといい、ここに来た経緯を説明するとちゃんと最後まで聴いてくれた。


「な、何という愛……」


 事情を聞いてオルケは感動していた。

 涙の出ない体であるがもし人の体だったならむせび泣いていたかもしれない。


 愛のためにコイチャを止めようとしているピュアン。

 そしてピュアンのためにこんな危険な場所にも飛び込んできたドゥゼアたち。


 なかなかな冒険物語だった。


「ご主人様〜」


「でも意識も何もないのだろう?

 ならばもう死んでるも同然じゃないか」


「なんてことを!」


 サラッとひどいことを言ってのけるフォダエにオルケが激昂する。


「この愛が分からないのですか!」


「分からん。

 愛なんてもの知る前にこうなったからな」


「んもー!

 あんなに恋愛小説好きだったくせしてー!」


「なっ、それとこれとは話が別じゃないか!」


 まあ何というか、意外と良いリッチそうというのが今のところのドゥゼアの感想であった。

 ご主人様というからにはオルケにとってはフォダエは主人なはずなのに関係性的にはかなり打ち解けたような雰囲気がある。


 2人は騒々しくやいのやいのと言い争う。

 少なくともコイチャを返せと言って怒り出すことはなかったので安心した。

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