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【完結】遠くて近きは幼なじみ  作者: カムナ リオ
第五章
21/23

第21話「翔太の決意」

 翔太は、今日の夕食を見て唖然とした。


「なんで、この季節に鍋⁉︎ てか、何これ? ズッキーニ入ってるんだけど……」


「大学の農耕菜園サークルから、ズッキーニ大量に貰ったんだけど、何にしていいかパッと思い浮かばなくて、そーゆー時は鍋にしとけば間違いないから! ほら、座れ!」


 翔太は呆れて返事が出来なかった。もうなんでもいい……そう思いながら食卓についた。


 翔太は恐る恐るズッキーニ鍋を口に運んだが、普通に美味かった。もう少し暑くなったら、鍋自体しんどいが、これはこれで全然ありだと思った。

 兄はよく破天荒な料理を作るが、その型にハマらない料理が割と美味くて、何だか悔しい。自分にはない特技だ。


「落ち込んでる時とか、頭に来てる時とか精神的に不安的な時、他の欲求を満たしてやると、案外落ち着いて来るもんなのよ」


「……え?」


「腹立った時とか、やけ食いしたりすんじゃん?泣くほど悲しくても、眠って目が覚めたら、少し落ち着いてたりとか……人の体って上手く出来てるの」


 確かにそうなのかも知れない……兄なりに俺を気遣っての事だったのだ――


 そう思うと、本当に自分が子供の様に思えて、翔太は情けなくなった。


「で、何があったわけ? もしかして、華ちゃん絡み?」


 翔太は一瞬、兄の鋭さに「うっ」となったが、ムキにもなれなかった。


「……うん」


「やっぱそうか。お前が、そんな感情剥き出しになるのって、昔から華ちゃんの事ぐらいだもんな。それで何?やっぱ、フラれたの?」


 ケタケタと可笑そうに、陽太は鍋の具を小鉢に注いだ。


「……多分、そう」

「え? マジで? てーか、お前に告る甲斐性があった事にちょっと驚いたわ」

「どーゆー、意味だよ」

「言葉通りの意味だけど。お前、フラれるの怖くて自分の気持ち、絶対言わないだろうなと思ったから」


 兄に完全に見透かされていて、翔太はぐうの音も出なかった。


「てか、多分ってなんだよ?」

「伝えるも何も、友達以外に思えないって言われたから……」

「なんも言ってないのかのよ⁉︎ やっぱ、ヘタレじゃん!」

「今まで自分自身、華に対してそう言う気持ちだって、思ってなかったし……なんて言うか、その……」

「ただの性欲だと思ってたとか?」

「⁉︎」

「性欲の延長線上に恋愛感情があるから、まあ切っても切り離せないし、概ね同じ様なもんだろうけど……」


 陽太は、鍋用の小鉢をテーブル置いた。


「その人じゃないと嫌だって思うか、思わないかかな?翔太はどうなの?」


 翔太はそう聞かれて、言葉に詰まった。


「特定の誰かに特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置く事……が、恋らしいよ?」


「……何それ?」


「なんかに、そう書いてあった。」


 確かに、一緒いると楽しいし、二人きりでいるとドキドキするのに嬉しくて、一緒の気持ちならいいのにと思いつつも、そうでないと分かっているから、やるせなくなる……


「ハァ」と翔太は大きく溜息をついた。


 もう、分かった、分かってる、自分が華を「好き」な事は……


「お前、そんな中途半端なままでいいの? 腹括ったら? ちゃんと気持ち伝えて、それでダメなら……」


 陽太は具の少なくなった鍋に、ご飯を入れて、溶いた卵を割り入れる。


「更に、押せ!」

「引くんじゃないのかよ」

「引いて何とかなる子じゃないでしょ? 分からせろ、お前がいかに好きかって事。てーか、押し倒す勢いで行け」

「……」

「そこで引いてるから、お前はダメなんだよ! お前のその、物分かりが良すぎる所、長所かもしれないけど、裏を返せば短所だから!」


 押し倒すのはやり過ぎだが、自分に意気地がないのは本当だと思った。


 ずっと大切だったから、思い出だけでもいいと、心の何処かで思ってた。

 あの嵐の夜、華からメッセージが来なければ、今でもその思い出だけ抱いて生きてただろう。


 でも、やっぱり――


 あの日メッセージに返信した自分は、本当はもう一度華と繋がりたいと、思っていたのだろう。


 そして今は、この先も華と繋がっていたい。昔の様なただの幼馴染としてじゃなく――


 たとえ、そうなれない結末だったとしても、翔太は華に、自分の気持ちをちゃんと伝えようと思った。



つづく

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