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2前 ゆったりとした服を着るだけで生産性が三倍になるらしい

 お母さんは、「あらあら、くくも大人になったのねえ」といいました。


 お父さんは、「ちゃんと幸せにしてあげなさい」といいました。


 ここは……うん。あんまり分かってなさそうでした。


 今だけは家族のこの性格がうらめしいと思いました。


「よかったのう、義母様も義父様も優しい方じゃった。して、旦那様はどうして頭を抱えておるのじゃ?」


「やってしまったのは私です。たまちゃんはかわいいですし、けっこんするのもいいと思います。でも、急にいわれても困ります」


「いいと思うならいいではないか。わしは尻尾を触った者に嫁入りすると決めておったんじゃ」


 そんな決めごとがあるなら、言ってほしかったです。


「言ったとて、お主構わず触っとったじゃろ」


 否定できませんね。


「あ、それならもうさわりほうだいですか?」


「気付いたか。まあ、どれだけ触っても構わんぞ。もちろん尻尾もな」


「では、今日は一日私のだきまくらになって下さい」


「わしが悪かったから、加減してくれ」


 きょりを取られてしまいました。さわりほうだいじゃなかったんでしょうか。


「物事には限度というものがあるのじゃ。いくら好物でも毎日食っとったら嫌になるじゃろ」


 たしかに、毎日ハンバーグだときついかもしれません。


「それはそうとくくよ、学校はいいのか? 先程誰かが来ておったようじゃが」


「いけたらいきます」


「それ行かんやつじゃろ」


 私のおよめさんになるというなら細かいことは気にしなければいいのです。


「いや、学校は大事じゃぞ。勉強云々よりもな、集団の中でやっていく術を身に付けねば将来生きて行くのに困る……もしや、迫害されておるのか?」


 なんだかかんちがいされてしまいましたが、そういうことにしておきましょう。


「あんまり、学校のことはいわないで下さい」


 まあ、めんどくさいだけなんですけど。


「そうか……配慮に欠けておったな、すまんかった」


 本当に申し訳なさそうにされるとざいあくかんをかんじますね。今更ですけど。


「というわけで、たまちゃん。遊びましょう」


 ふだんの日は、お父さんもお母さんもおしごとに行きます。ここは、ようちえんです。なので、いつも私は一人でした。


 ですが、今日はたまちゃんもいるので一人じゃありません。ちょっとわくわくですね。


「遊ぶといっても、ここには本と謎の板と箱しかないじゃろ。どうするんじゃ?」


 なぞの板と箱はテレビゲームなのですが、それはいいとして私の部屋には服もたくさんあります。お母さんがよく買ってきてくれるのです。


 私は気に入ったものをきつづけるタイプなのでずっと眠っていたそれを、取り出すことにしました。


「む、それは服か。随分かわいらしいのう」


「たまちゃん、服はそれしかありませんよね」


「ああ、あれはわしの妖力で常に清潔に保たれておるから「ずっと同じ服だとあきますよね」いや別に飽きたりとかは「たまちゃんはかわいいので、かわいい服がにあうと思います」はい……」


 この装束もかわいいと思うのじゃがというつぶやきにはさんせいですが、せっかく金色のかみと目があるのでお人形さんみたいなのが絶対にあうと思いました。


 なれていないおようふくにくせんしつつもなんとかきられたたまちゃんは、本物のお人形さんでした。


「やっぱり、かわいいです。ここよりかわいいです」


「そんなにか? うむう、落ち着かんのう」


 むねのところに大きなリボンがついたふりふりのワンピースは、私のサイズなのでたまちゃんにはちょっと大きくて、手がそでにかくれてしまっています。


 それに、もふもふのしっぽがあるので、おしりのところがめくれて見えてて……すごい、いけない気がします。これは私以外には見せないようにしましょう。


「一緒に風呂にも入ったんじゃから、今更じゃろうに」


「それとはちがうんです」


「人間は分からんのう。しかし、そうなるとくくの服は全部無理じゃぞ、しっぽが邪魔になる」


 ふむ。どうせほとんどきないものですから、穴をあけるのもやぶさかではありません。


「今から開けるのか? わざわざそんなことせんでも、別にもとの服で……」


「だめです、今日はいっしょにお出かけするので、へんなかっこうだといけません」


「変……わしの由緒正しき装束が、変……」


 なにやらショックを受けているようですが、これは大切なことです。ご近所さんのうわさになるとちょっとめんどくさいですからね。


 私の服だとどうしてもたけがあまるので、ここのをかりることも考えましたが、さすがにむだんで妹の服に穴をあけるのはいけません。


 ごまかしのききやすいスカートと、ぶかぶかでもださくならないゆったりめのシャツをきせてあげることにしました。


「あと、パンツもちゃんとはいて下さい。これは大きかったらダメなので、ここのやつですけど」


「窮屈なのは嫌じゃ」


「お外でパンツはいてないとへんたいさんです」


 私も、お風呂入る時に気付いておどろきました。


「そもそも、外に行かなければよいではないか……用事でもあるのか?」


「今日は、お母さんにお金をもらいました。せっかくだから、これでおいしいものを食べてきなさいとのことです」


「美味しいものか……油揚げとかかのう」


「ピンポイントですね。では和食のお店に行きましょう」


 おいしいもの、と聞いた時にもふもふのお耳がぴこりとうごいたのを私は見のがしませんでした。


 ごはんの時にも思いましたが、たまちゃんは多分わりと食いしんぼうですね。


「仕方ないのう、我慢するのじゃ」


 かくして、私たちは二人でお出かけすることになりました。

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