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1後 まさか拾ったもふもふの女の子が私の嫁になるなんて

 どれだけがんばっても、報われないことはあります。大切なのは、経験を次につなげることだと思います。


 でも、それはそれとして悲しいものは悲しいものでもあります。


「のう、そんなにか? そんなにわしの尻尾がモフモフしたかったのか?」


 あれから、必殺の「最近のお風呂の入り方、分かりますか?」で勝利をもぎとった私でしたが、もふもふのしっぽが水を吸ったらしなびてしまいました。


「わしの耳や尻尾のどこがそんなにお主をかき立てるのか、さっぱり分からんのう。はあいい湯じゃ」


 そんなに大きくないお風呂でも、小学生の私ともっと小さいこの子なら一緒に入って余裕があります。


 そういえば、名前ってあるんでしょうか。


「おなまえ、ありますか?」


「ん、わしはたまと呼ばれることが多かったのう」


 猫みたいだと思いましたが、言うのはやめておきます。


「失礼なことを考えておる気配がするから説明するが、昔で言う玉は宝石のことを指すんじゃぞ」


「なるほど、たしかに宝石みたいにきれいですね」


「そうじゃろうそうじゃろう。して、お主はくくで良かったかの?」


「はい、くくです。よろしくお願いします、たまちゃん」


「たまちゃんか。くふふ、悪くないのう」


 たまちゃんは笑った顔もかわいいです。きっと、久しぶりにしゃべったので色々と楽しいんでしょう。


 お風呂から上がったら、妹のここも帰ってきていました。うちからちょっと遠い公園に行ってたみたいですね。


「おお……おおー!」


「くくの妹かの? ふむ、あんまり似とらんのう……こゃ!?」


 ここはとても活発で、てんしんらんまんという言葉がにあう子です。予想通り、たまちゃんのお耳に食いつきましたね。


「もふもふー!」


「頷いとらんと助けてくれんか!」


 二人の身長は同じくらいなので、とてもかわいらしい光景が広がっています。子猫のじゃれ合いを見ているような気分です。


「はむ……はむ……」


「こゃー!? 待つのじゃ! わしの耳は美味しくないのじゃ!」


 ああ、せっかくていねいに洗ったお耳をはむはむし始めてしまいました。さすがにはがした方がよさそうですね。


「ここ、たまちゃんがそろそろ泣いちゃいそうですから、やめてあげて下さい」


「んー」


「な、泣いとらんし。どうしてくくの家族は揃いも揃ってこうなんじゃ……」


 ぐしぐしと目をこするたまちゃんのお耳はここのよだれでぺっとりとしてしまいました。またきれいに洗ってあげないといけませんね。


「ひっ、一人で洗えるのじゃ。じゃからその手を下げよ」


「えんりょはいらないです、ここをお風呂に入れてあげるついでですから」


 その後、うちのお風呂場にはいたいけなたまちゃんのひめいがひびいたとかひびかなかったとか……





 その後帰ってきたお父さんもけいかいしていたたまちゃんでしたが、お父さんは少しなでなでしただけでした。その時、なんとなく物足りなさそうにしていたのを私は見逃してはいません。


「なんというか、緩い家庭じゃな。わしが言うのもなんじゃが、もっとこう、驚かれたりするものと思っておったが」


 たまちゃんはふしぎな子ですが、わるそうには見えません。それに、もふもふしてるので、大丈夫なんだと思います。


「まあいいか。くくよ、ここがお主の部屋か?」


「はい、好きなようにくつろいで下さい」


「色々なものがあるのう。こっちは本棚か? 最近の書物は彩り豊かじゃな」


 私の部屋は、物が多くちょっとせまいですがとてもおちつく場所です。


 特に多いのは本で、たまちゃんはそっちにきょうみがあるようですね。とはいえ、あまりむずかしい本は持ってないんですけど。


「読みますか? 私のおすすめはこれとこれと……」


「おお、多いのう。本が好きなんじゃな」


「はい、こっちの作品はぜひ一回見てもらいたくて、あっ、こっちも二回全部読んでほしいです」


「分かった、分かった。また読んでおくとするかの」


 家族では誰も話せる人がいなかったので、これで一人増えますね。今から楽しみです。


「それと、その一帯はなんじゃ? 黒い板やら、色んな形の箱が置いてあるようじゃが」


 テレビゲーム類ですね。これはちょっと説明が面倒かもしれません。


「うーん、めったにこわれないので、適当に触っても大丈夫ですよ」


「そう言われると怖いんじゃけど……ふむ、ふむ?」


 ゲームの本体を持ってひっくり返したりしげしげとながめています。面白いのでこのままにしておきましょうか。


 というか、今ならしっぽをさわってもばれないのでは?


 もふ……


「こゃん!?」


 ドゴッ!


「うぐっ……」


 めちゃくちゃぐーでした。今までで一番痛かったかもしれません。


 涙目になってせきこんでいると、たまちゃんはぽろぽろと涙をながし始めました。


「ご、ごめんなさい。泣くほどいやだったなんて……」


「……わしの尻尾は、誰にも触らせる気はなかったのじゃ」


 なぐられた所がじんじんといたいですが、それよりもたまちゃんの方がやばそうです。私は、とんでもないことをしてしまったのかもしれません。


「触れたからには、責任を取ってもらうぞ。旦那様」


 ……私は、とんでもないことをしてしまったのかもしれません。

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