地獄の門番VS殺戮猫
クリスマスイブですねぇ。
仕事でそれどころじゃないけど。
春の大陸に無事に上陸して、港町を出発したところ地獄で門番を長年勤めてたらしいドラゴンの鱗を身につけたケルベロスな神獣さんと遭遇しました。
で、故郷に帰るためには死ぬ必要があるけど、全力を出し切った状態で自身より強い相手にやられたいと言うことで僕が1体1で戦うことになりました。
神獣
ドラグニルケルベロス
名前:シリウス
地獄への入り口を約1500年以上守り続けた伝説級の地獄の門番。
頭と首、背中と前足と後ろ足全体をドラゴンの鱗で覆われ、それ以外の部分を毛皮で覆われた3つの狼の頭を持つ全長50メートル(尻尾を除く)。
全体的に赤黒く、鱗は漆黒に染まり、瞳は深い紫色。
その鱗は、あらゆる魔法をはじき、その毛皮は自身の怪我と状態異常を治し、その鋭い爪は傷つけた相手の魔力を奪い取り、その牙はあらゆる防具を破壊し、その吐息は焦土と化す熱気と極寒地帯を作り出す冷気を吐き、その脚は巨体とは思えぬ速度を産み、相手をへし折りマグマの上でも水の上でも平然と駆けることが可能。
「じゃあ・・全力で楽しく戦おうかぁ!!」
木刀を構え、無属性の魔法を纏わせて笑みを浮かべる。
後にものすごくどう猛な笑みだったと言われるけど気にしない。
「ぐぁぁぁ!!!」(あぁ、良い思い出を作ろうではないか!)
--リリィ--
「・・・・・」
「リリィ様・・・口を開けたままははしたないですよ」
「はっ・・しょ、しょうがないじゃない!」
目の前の光景を目撃して口を開けたままになるに決まってるわよ!
「いやぁ・・本気でチェルニ様は手加減しまくってたんですねぇ。」
そんなのんきな・・。
って言いたいけど、否定出来ないのが悔しい。
正直私は、チェルニと出会ってから力不足だったことを自覚したし、才女って言われててもあくまでも近所ではって言う、異世界人が言うところのいのなかのかわず?ってやつだと認識したわ。
けど、チェルニと出会ってかなり強くなれたと思ってたけど、私はチェルニの実力を大幅に見誤っていたことを深く反省する。
目の前で繰り広げられる戦闘をみて正直そう思った。
見上げるほどの巨体にもかかわらずとんでもない速度で動き回り、一降りの攻撃で辺り一面に爆風が迸り、前足の一降りで地面に深い溝を作り出し、
轟く咆哮によって衝撃波と超音波が同時に炸裂し、周囲を吹き飛ばす。
そして、身に纏う威圧感は正直立っていられるのもやっとと言うほどだ。
そんな化け物級の強さを誇る神獣(神獣だからこその化け物レベルね・・)相手に獰猛な笑みを浮かべながら目視するのもやっとという速度で巧みに死角に潜り込んで目に見えない速度で木刀を振るい数秒で何十もの刀術をお見舞いする。
「ですが、よくよく思い出すとあのくらい出来てチェルニ様は当然でしたね・・。」
「・・・確かにね。」
ぽつりとセバスが呟くことに関して肯定する。
確かに、何体もの災厄レベル(SSランク以上の魔物を世間ではそう呼ぶのよ)を単独撃破しているチェルニが、目視出来ないレベルで動き回って一度瞬きしている内に何十もの斬撃を与えるなんて朝飯前だ。
チェルニは、元々スピードによる連撃戦が得意な戦法で、状況に合わせてヒットアンドアウェイを織り交ぜ、それらを暗殺者のように死角に潜り込んで急所を狙い撃つことを全体の2割くらいに混ぜたような感じだ。
以前聞いたことがある、軽くて丈夫な防具を身につけないのか。
または、他にも武器を用意しないのかと。
重い防具が戦法の邪魔になるのはわかるけど、軽くて動きやすいモノなら支障がないと思ったし、
チェルニの戦法なら投げナイフや小刀を忍び込ませたりしても十分プラスになるし、マイナスにはならないと。
けどチェルニは、邪魔で無駄にしかならないからと速攻で断った。
当時は、良くわからなかったけど無理強いはするつもりはなかったからすぐに手を引いたけど今目の前で繰り広げられる戦いをみると納得する。
チェルニの動きはただ速くて懐に忍び込むのが上手なだけじゃない。
それらの動きは、普通の人の柔軟さでは決して表現出来ないようなむしろ芸術的なレベルのアクロバティックな動きを何度もしてるし、その動きをしながら木刀で攻撃をしている。
普通そんな体勢で無理ダロって言う角度から平然と。
その木刀も巧みに右手から左手、逆に左から右手へ、逆手に持ったり両手で持ったりと状況に合わせて持ち方を変えながら戦っている。
チェルニが言うには、モノによっては二刀流で戦うのも良いかもしれないけれど、今のところしっくりくるのがないからあっても邪魔だそうだ。
だから、チェルニの理想とする2本目の武器があればそれを追加するくらいで、防具に関してはチェルニの属性魔法の関係もあってあると逆に邪魔になるという結論のようだ。
確かにそんな動きをするなら、邪魔の一言になるのも納得だ。
チェルニがもしも追加で身につける防具があるとしたらぎりぎり鎖帷子。(過去に何種類か用意したことはあるけど、それでも動きにくくて邪魔と言われた)
あわよくば肌着で、防御力が高いモノくらいだ。
それもせいぜい1枚下から着るくらい。
そもそも、今のチェルニは肌着の上からあの和服を着ているだけでそれ以外は何も羽織っていない。
と言うよりも、それ以上着るのは動きにくいから却下と言われてるし、今の肌着を厚手にしたり篭手とかバトルグローブとかも同様に動きにくいから却下された。
私からするとあまり変わらなかったけど、チェルニからすると数秒かそれ以下のレベルで動きと思考との誤差は問題で、致命傷に繋がり、動きが1秒以下のレベルで遅くなるからダメなんだそうだ。
チェルニは重ね着をどんなに寒くてもしない。
それは、動きにくくなるからだそうだ。
まぁ、本人の属性魔法の関係で寒さや熱さに強いというのもあるけど。
「チェルニ様の場合は、属性魔法と実戦による修羅場との相性が抜群だったことと、その修羅場の回数と難易度の高さが規格外だったことで、あんな強さになったのでしょうね。」
「あぁ・・・確かに。」
チェルニの属性魔法は、簡単に言うと魔法だろうが物理的だろうが精神的だろうが状態異常関係だろうが何でもジャンルを問わず受けたモノの耐性を作るものだ。
それは、些細な周囲の温度で、寒い場所にいるだけで寒さに強くなり、暑い場所にいれば熱さに強くなる。
他にも、切り傷、打撲、骨折に病気なども一度経験するとその耐性が出来る。
おまけに、チェルニの場合は【自己再生】【自力解毒】と言う、魔力さえあれば怪我も状態異常も治してしまうスキルを持ってる。
更に、それは経験すればするほど、そのスキルを使用すれば使用するほどその効力は高まる。
なので、チェルニの場合は怪我をすれば【自己再生】で怪我を治して、属性魔法でその耐性が出来て、治すスピードが上がり、治せる怪我の上限が上がる。
状態異常にかかれば【自力解毒】で解毒して属性魔法でその耐性が出来、治す速度が上がり、解毒出来る上限が上がる。
そして、それらを後押しするかのような種族特性によって魔力の回復速度のえげつない高さを誇っているため、本来であれば魔力切れになればそれらの効果が切れてしまうと言うのにその欠点もどうにかなってしまっている。
・・・だと言うのに本人は精神面が異常に強い。
本来であれば、どれだけ毒を治しても、怪我を治しても何度も繰り返していくとそれだけ心がすり減ってしまう。
けれど、チェルニはそれでも前に進んで多くの人を守ろうとする心の炎を弱めることすらもなく戦い続ける。
強いというか、受け流してるから精神的ダメージをそもそも受けてないとも言うけど。
そのおかげで土壇場でも根性で精神を保ち、怪我を負っても毒を食らっても動き続けて攻撃し続けながら怪我も毒も治しながら前へ前へ進む。
そうやって、土壇場で戦いながら成長し続けて生き抜いてきたからチェルニは強いんだと改めて実感した。
実はチェルニと初めて出会ったときに最も最初に印象に残ったのは真の通った力強い善なる光を宿したその瞳だった。
何者にも・・そして、どんなことがあっても決して揺らがず、一切の曇りも穢れも存在しない強い強い光。
私はその強い光を知りたかった。
そして、その強い光の正体を知り、優しい心も好きになった。
確かに、チェルニの天然ボケに振り回されるのは大変だけど、正直に言うとそうやって振り回されている時間は楽しくて好きなのよ。
チェルニには内緒よ?
あの子には、自由に羽ばたいて欲しいと思っているから。
そして私はあの子の止まり木になりたい。
「・・私はあの子の足枷になっていたのかしら。」
ぽつりと呟くとセバスはその私の気持ちを汲んで答えてくれる。
「チェルニ様は、基本的に争いを好みません。戦うときは必ず誰かの助けになろうと必死になっているときです。あのお方は、誰かの助けになる正義の心こそが第一優先であり、他人の救いとなったときこそが最もうれしい・・もしくは達成感を感じるお方。それに、あの方が不満を感じているときはリリィ様であればすぐにわかるでしょう?」
「・・・まぁ」
とにかく顔に出やすいし・・あの子。
「それに、リリィ様とじゃれ合っているときはあの方はホントに楽しそうですよ。記憶がないので故郷にいた頃どういう風に育っていたかはわかりませんが、のびのびと自由に羽ばたいている姿に一切のくすみを感じません。リリィ様が感じている気持ちは、劣等感と言うよりは向上心だと思いますよ。」
「ねたみとか罪悪感や劣等感じゃないの?」
「違いますよ。ただの罪悪感であれば毎日必死になって強くなろうとなんてしません。」
「だってアレは、チェルニの隣に立つ存在としてふさわしいようにするための当たり前のことで・・」
「それもそうですが、チェルニ様の隣に立つことにふさわしい存在になりたいと言う気持ちと、チェルニ様の生涯の相棒としてふさわしい存在だとチェルニ様に思われたいという気持ちでしょう?」
「・・・・」
「それに、リリィ様には悪い気持ちなんて私は感じてません。幼い頃からリリィ様のことは知ってますので。」
「・・そうね。」
産まれる前からずっと傍にセバスはいてくれた。
いろんなことを教えてくれたし、間違ったことをすればきちんと説明してくれた。
人の気持ちを見抜くことだって教えてくれたし、間違っていたことなんてなかった。
セバスがそう言うんだからそうなんだろう。
私は、チェルニの足枷にならないように隣に立つ存在としてふさわしくありたいとあがいている状態だ。
この気持ちがなくなればあっという間にダメ人間になってしまう。
そう考えると、この気持ちは持ち続けていることが大事だと思う。
それに、チェルニの不得意な方面を鍛えて支える方法だってある。
そうだ。
私は、実戦もそうだけど、生活面や政治面でチェルニのサポートが出来るように頑張ろう。
戦闘では遠距離が苦手なチェルニのサポートを
戦闘以外の面でもチェルニは色々と幅広い知識や技を持っているけどそれでもサポート出来ることはたくさんある。
と考えている間にチェルニとシリウスの戦いは激しくなる一方だ。
チェルニの災厄との戦いを聞いた話だと数日にわたって戦うことは割と多いらしいけど、今回に関してはそうせずに短期で一気に決めるようだ。
その分一撃一撃、1秒1秒に全力で、全身全霊で挑んでいる。
「と言うか、ずっとスルーしてたけどつっこみ入れて良い?」
「ツッコミマスターなのですから遠慮なくどうぞ。」
「ツッコミマスター言うな。・・・チェルニ・・さっきから怪我が目に見える速度で治ってない?」
「治ってますね。むしろ途中腕がちぎれた直後に手でくっつけてそのまま治してましたが。」
「やっぱりそうよね!?気のせいじゃないわよね!?」
さっきから全身のあちこちに傷が出来てはシューッと音が鳴りそうな勢いで目の見える速度でみるみる怪我がなくなっていくし、途中腕がちぎれた!
と思ったら、すかさずもう片手でちぎれた腕を握ってそのままペトンと本来あるべき場所にくっつけたら、そのままスルスルとちぎれた後がなくなりそのまま何事もなかったかのようにちぎれた腕が元に戻ってる。
「・・・これ、ヘタしたら悪い意味でチェルニが人外認定されるわ。」
「えぇ・・。悪しき存在と呼ばれる魔族の中でも肉体再生速度がえげつない種族の一部だとカウントされ、そのまま悪認定される可能性がありますね。・・人間はいつの時代も自身とは異なるモノを恐れ、排除したくなるモノですから。」
「チェルニは確かに半分以上人間じゃないけど、悪い存在じゃないわ。・・だからこそ私が守らないと。」
「そうですね。その点は私も協力しますよ。」
「えぇ。どんな手段を使ってもそう言う輩は始末するわよ。・・チェルニが殺戮猫と呼ばれてるんだもの。その相棒が似たようなことしてても何の文句も言われる筋合いないわ。」
「チェルニ様ほど、身分を完全無視してるお方もある意味珍しいですからね。・・そのくせ王としての素質があるのですから世の中不思議が多いですね。」
「ホントね・・」
【王の逆鱗】という王様・・つまりは国のトップに立つ存在にふさわしい存在になれる素質のある人しか持てないのに加え、その中でもこのスキルか似たようなワザを持っていると公開されてる情報の中で存在が確認されてるのは300年くらいに1人くらいと聞いている。
「で、神獣側は神獣でチェルニ同様に怪我が見える速度で治るのは良いとして、あっちは腕が切り落とされても生えてきたんだけど。」
「あちらは見た目にふさわしいと思ってしまいますね。」
「それもそうね・・。」
で、チェルニと神獣がなんか叫び合いながらしゃべってるけど、片方がなんて言ってるかさっぱりわからないからシャルとリベラに訳してもらった。
「ぐぁぁぁ!!」(なぜそこまでの力を持っていながら前へ進み続ける!)
「それが僕が決めた人生だから!!この命尽きるまで悪を滅するために自らの信念と正義を貫く!」
「ぐぁぁあ!!」(そこまで貴様がする必要があるのか!この世界に!人類に!!その価値があるというのか!!)
「全部を守ろうなんて思っていない!!他人を思いやる人がいる!自分を犠牲にしてでも助けようとする人がいる!!損得を無視して救う人がいる!そんな人たちが理不尽な目に遭っているのが僕は・・私は許せない!私には力がある!!そんな人を救う力がある!ならば私は戦い続け救い続ける!!
私が決めたことだ!一度決めたことは絶対に曲げない!それが私の命題だ!」
「ぐあああああ!!!」(その瞳に!たましいの籠もった叫びに一切のくすみなし!ならば我を倒して証明して見せよ!!)
「上等!!制御しきれずにこれまで避けてた戦い方をしてあげる!!」
そう言うとチェルニは木刀を両手で握ったかと思いきや、
炎、風、雷、水、氷に毒々しい紫色に、無色透明な光の計7種の魔法が全て同時に
木刀に纏われ、更にチェルニの両肩に
手首に肘、膝に足首、背中に胸元に腰に
それらが纏われていく。
「がぁぁあぁあああ!!!」(かなり無茶をしているが、良いな!良いではないか!!)
チェルニの全身のあちこちに7種の魔法が纏われた状態になってからチェルニの動きは圧倒的に良くなった。
そして、一撃一撃の威力も劇的に高まっているようだ。
けれど、かなり無茶をしているのが私にはわかる。
「・・かなり無茶をされてるようですね。・・チェルニ様が内包する全ての魔力が暴れ回ってますね。」
「えぇ・・暴発寸前の爆弾のような状態ね。・・少しでも失敗すればチェルニ本人がただでは済まないわ。」
破裂寸前の風船のような状態と言えばわかりやすいかしら。
ヘタすれば全身を纏っているあの魔法がチェルニ自身に牙を剥くような状態になりかねないかなり危険な行為だ。
あの纏いと言うワザが・・ではない。
纏いと言うワザ自体は熟練した者たちであれば習得出来る上位スキルだ。
ただし、上級の中でも武器に纏わせるのが初級。
そこから、手足だけに纏わせることで中級レベル。
そして全身にみっちりと纏わせる状態で上級。
チェルニは一見中級のように見えるけど、全身の必要な部分にだけ纏わせるという上級レベルで無駄に纏わせている部分を省いて効率的に改良したモノで言ってしまえば最上級レベルのワザだ。
それを1種の属性を纏わせるだけでそれだというのに複数の属性を持つ人が同時に纏わせることで1種増えるだけで危険性が増すし、失敗したときのヤバさも増す。
そう言えばチェルニが今どれだけヤバいかわかるでしょ?
チェルニもそれがわかっているから普段は1種ずつしか使ってなかったんだから。
一応2種3種と同時に纏わせる練習はちょこちょこしてたみたいだけどそれでもかなり不安定で実戦で使うには周りを巻き込むからヤバいってなってたし。
自分自身が巻き込むかもしれない周りよりも大変なことになるというのにそれでも周りの心配をするチェルニはやっぱり英雄だと思うわ。
そして、戦いに激しさが増し、その状態が続くかと思いきや、
2人揃って向かい合う形で一定の距離をとって互いに武器を構えながら立ち止まっている。
どうやら次の一撃で決めるらしい。
「ぐぁぁぁあああああ!!!!」(この一撃で終わらせるぞ!!)
「こちらの台詞だぁぁ!!」
神獣は、灼熱のブレスと、絶対零度のブレスを同時にチェルニに向かって放ちながら爪で切り裂こうと駆け出し、
チェルニは7種の魔法を纏った状態のまま脇構えと呼ばれる木刀を斜め下から切り上げるような形で構えながら地面すれすれに体勢を低くした状態で凄い勢いで駆け出す。
そして、2人はすれ違った状態のまま動かなくなった。
「・・・・セバス・・さっきの見えた?」
「・・いえ・・全く。」
あの勢いは必ず周りを巻き込むであろうものすごい威力を誇っていたというのにものすごく静かだった。
チェルニが何をどうしたのか
あの神獣がどうやってあの嵐のようなブレスを周りを巻き込まずに無駄のない攻撃に転用したのか
全く見えなかった。
正しくは理解出来なかった。
頭が追いつかなかった。
あまりにも無駄がなさ過ぎて
あまりにも速すぎて
あまりにも芸術的すぎて
「がぁぁぁぁ」(我が産まれてから初だ。これほどの死闘を繰り広げたのは)
「僕もだよ。これまでいろんな大型のエグいのと戦ってきたけど、アレは使命感だった。倒さないとならなかったから命がけだった。けれど、こんなにすがすがしい思いになるような戦いは初めてだ。」
「がぁぁぁ」(確かにな。だが、見事だ。ようやく帰ることが出来そうだ。)
「・・・僕は使命を果たせたかな。」
「がぁぁぅ」(当然だ。・・だが、今になっては惜しいな)
「・・なんで?」
「がぁう」(これほど魂の籠もった強き善人は生まれて初めて出会った。そんなお主の人生を見守りたくなった。)
「光栄だよ・・けど。」
「ぐぁぁう」(あぁ、もう体が保たない。)
2人ともボロボロだけど、神獣の方は明らかに致命傷というか生きることに限界だとわかる状態だった。
確かに2人とも凄くすがすがしいという笑みになっているから、悔いのない戦いが出来たんだと思う。
それに、チェルニの想いを私は改めてあの戦いの最中に叫んだ言葉で実感した気がした。
そして、神獣の体が光り、光の粒子になって消え去ろうとしている中・・
「がぁぁう」(おそらくは我が主と認めるのは一生をかけてもお主・・いや、チェルニだけであろうな。)
「神獣であるシリウスにそう言ってもらえて光栄だね。けど、僕もシリウスともっと楽しい思い出を作りたかったな。」
「がぁぅ」(そうだな。我は地獄の門番ドラグニルケルベロスのシリウス。チェルニ・クリアネスを主とし、一生この身を捧げることを誓おう。)
言葉だけでも最後の思い出としてそう名乗る神獣にチェルニが泣きそうな笑みを浮かべながら涙をシリウスにこぼしてる状態で告げる。
「私はクリアネス王国第一王子、小半妖精のチェルニ・クリアネス。地獄の門番ドラグニルケルベロスのシリウスを生涯の右腕として認める。」
そうチェルニが言った瞬間、どこからともなく突然起きた。
-面白い!認めてあげる!!!-
ん?
なんか凄い楽しげな女性の声がどこからともなく聞こえた。
周りをチラッと見るが私たちしかいないし、セバスもチェルニも神獣・・いや、シリウスもキョロキョロしてる。
そして、ふわりとシリウスとチェルニが光ったかと思いきや、チェルニの手元には1本の短めの刀が現れた。
「・・・・気のせいかしら?」
「気のせいじゃないですね。」
「・・・シリウスの体が光の粒子になって消えようとしてたり致命傷だったりしてたのにきれいになくなったわね。」
--チェルニ--
激しくも楽しい戦いを終え、シリウスとのお別れの前にせめて言葉だけでもと、獣魔契約を果たす言葉・・別名主従契約とも呼ばれるやりとりをしたら、どこからともなく聞いたことのない女性の声で認めよう!って聞こえた。
かと思ったら、僕の手元には忍刀と言われるまっすぐで片刃で40センチくらいの刀が突如として現れた。
「ねぇ、シリウス・・。怪我治ってるね。」
「ふむ・・確かに。更に体も消えなくなっておるな。」
おや?
普通に人間の言葉として聞こえるよ?
「人間の言葉になってるね。」
「・・確かに。もしや、チェルニ・・お主と正式に契約が結ばれたのでは?」
「そうかも?・・あ、ギルドタグに何かのってるかも、ちょっと待って。」
「うむ。」
肩にシャルがぴょんと乗ったところでステータスオープン。
名前:チェルニ・クリアネス(二つ名:木刀の歌姫)
ランク:S★
バディ:白夜
獣魔:
シャル(猫っぽいナニカ)装備:ヘカテのタリスマン
シリウス(ドラグニルケルベロス)
性別:男の娘
年齢:20
種族:小半妖精
身分:クリアネス王国第一王子
職業:魔法侍
副業:歌手、作詞家、作曲家
属性:全耐性
体力:SS+
魔力:S+
攻撃:SS-
防御:A
俊敏:SSS+
練度:S+
攻撃1:【刀術】【木刀術】【足技】【飛刀】【二刀流】
攻撃2:【属性纏い】【衝撃波】【刀舞】【受け流しの極み】
特性1:【脚力強化】【魔力強化】【五感強化】【耐性強化】【打撃強化】【突貫強化】
特性2:【魔力譲渡】【疲労軽減】
補助1:【忍者】【勤勉】【調合】【舞踏】【メイド業】
補助2:【自己再生】【自力解毒】【両利き】【技巧】
自動1:【猫感知】【猫察知】【猫探知】【全魔法耐性】【絶倫(極)】【王の逆鱗】
自動2:【野生の勘】【虫の知らせ】【体験学習】【猫の目】
衣類:アルテミスのキトン、癒しのニーハイソックス、猫好きブーツ、純潔のキャミソール、純潔のストリングショーツ
武器:魔断の神木刀、神狼の忍刀
装飾:結婚指輪、神秘の髪紐、忍の口当て
証:フォレスト王国フォロスト公爵家のコイン、フォレスト王国王家のコイン
加護
神々のお気に入り
称号1
天然ボケ(無自覚)、迷子(不治)、お気楽マイペース、性別迷子、童顔、猫は親友、一途な百合もどき
リリィ・フォロストの夫、フォレスト王国フォロスト公爵家令嬢の夫、神獣の相棒
称号2
愛され男の娘、救いの天使、義賊:殺戮猫、木彫りの黒猫教団教祖、野良猫殿下
神獣を救い者
「契約されてるね。」
「されておるな・・・と言うことは、我は地獄に帰ることなくこのままこちらの世界でお主の獣魔として過ごせと言うことらしい。」
「・・良いの?と言うか大丈夫?今更だけど」
「くははは!構わぬ!まさか、神に最後のわがままを許されるとはな!!」
「どういうことよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
リリィさんの嘆きの声が聞こえる中、僕とシリウスは謎の声(たぶん神様)によって契約して、ついでとばかりに怪我も服も治ったけど、全身くたくただったのでその場でぶっ倒れて爆睡しました。
細かい部分は今度ね。