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放浪の木刀使い~記憶喪失は主に周囲の人が気にするらしい~  作者: ミコト
春の大陸へ(当事者はどうでもよさげ)
17/44

春の大陸到着

船旅は、色々楽しいことも面倒くさいこともあったけど、無事にどうにかこうにか春の大陸に到着しました。

春の大陸の港町で色々と消耗品を仕入れることも出来たし、食べ歩きとか観光もしっかり楽しめた。

あ、教会にお祈りにもしっかり毎日行ったよ?

僕とリリィさんは神様に関する加護があるからご挨拶はね?

セバスさんは加護はないけど、神様への挨拶は大事ですねって言って一緒にお祈りする。

と言うより、元々リリィさんもセバスさんも教会にお祈りは生活の習慣としてあって当然だったらしいけど。

僕も一応教会に立ち寄ったときはお祈りしてたんだよ?

加護のことは気付いてなかったけど、色々とやっかいごとに首を突っ込んでたから願掛け的な感じで。

そのおかげで全身血まみれになってたりえげつない種類と濃度の毒を食らっても今こうして平然と五体満足で生きてるんだと思ってる。

まぁ、属性魔法がフル稼働してたのもあるけどそれでも限度があると思ってるし。


まぁ、僕がお祈りするたびになぜか僕に向かって祈る人がいたのは気のせいってことにしてるけど、最近はリリィさんに向かって祈る人もチラホラいる。

それに関してはリリィさんは引きつった顔で見ないフリをしてるけど、横でセバスさんが笑いをこらえるように軽くプルプルしてた。



「でも、セバスがいて助かったわ。荷物もそうだし、無駄にたまるお金も良い感じで消費出来たし。」

「こちらこそお役に立てて光栄です。そして、あれだけ消費させるためとはいえ、良い買い物が出来ましたのでこちらも満足です。良いモノを提供出来そうです。」

「お野菜からお肉、果物に調味料とか茶葉とかコーヒー豆とかかなりの種類を買ったのに加えてお値段もかなり良いモノを選んだんでしょ?」

「えぇ。値段に有無を言わさずに良い品のみを選んで購入しましたのでお店側からも大変好評でおまけとして情報も色々と教えていただきました。」

「そっか・・そう言う方面でのメリットもあったわね。」

「それにしても・・良くもまぁ、そんなにため込みましたね。」

「・・チェルニが色々と過去にやらかした分とかがメインよ。まぁ、あの船のことみたいに解決してその分の報酬をどかんともらっちゃったというのもあるけど。」

「左様でしたか。ですが、借りを作ることが出来ましたし、良い意味で顔を覚えていただきました。それだけでも十分ですね。」

「まぁ、身分的なことや後々のことを考えると顔を覚えてもらってて損はないわね。」

「何かあったときに頼れる場所は作っておいた方が良いよね。」

「えぇ。セバスがいないとそこまで回らずにまた貯まるところだったわ。」

お金の有効活用(寄付含む)から、友好関係を築いたりと今後の旅をより彩るための準備まで凄くセバスさんがいて助かる。

僕たちだけだと、そこまでうまくいかずにお金がまた貯まってるところだったし。

お買い物して減らそうとしてもなぜかおまけしてくれたり割引してくれたりするし。

たま~に、ゲスな笑みを浮かべたのがお店側だったり割り込み的な感じでお客さん側から沸いて出たりするけど、うるせぇ邪魔すんなと言わんばかりのシャルのビームが炸裂するから全員へっぴり腰で逃げます。

後、それを目撃した人が大抵周囲にいるからその町では大抵そう言う人はいなくなります。


・・本来ならお金は貯まった方が良いだろうに使うことに困るからと言うのも不思議な話だと思う。

「ですが、さすが春の大陸ですね。リリィ様の故郷の島とやはり比べものにならないですね。」

感心した感じでセバスさんがそう言うと、リリィさんが首を傾げて尋ねる。

「春の大陸は確かに家の島より広いから品揃えも凄いと思うけどそれほど?」

「えぇ。リリィ様がおっしゃるとおり、島と大陸という土地の面積の広さや、大陸自体の知名度の違いもあって品揃えの豊富さも圧倒的ですが、春の大陸独自の強みもかなりありますね。」

「春の大陸の強み?」

僕が首を傾げながら尋ねる。

なんか聞いたことがあるような気もするけど。

「おそらくリリィ様との勉強で伺ったとは思いますが、春・夏・秋・冬の4つの大陸は、それぞれの強みがあります。冬の大陸は宝石が豊富、秋の大陸は食べ物の収穫量が圧倒的、夏の大陸は温泉や鉱石が豊富、そして春の大陸は薬草や山菜、花が大変豊富な土地になります。」

「チェルニ、つまりは薬草や山菜の種類の多さもだけど、1つ1つの質の高さも比べものにならないくらいこっちの方が上ってことよ。」

「あぁ、なるほど。言われてみると匂いが凄く強い。」

セバスさんが買ってた薬草の1つの匂いをふんふんと嗅いで頷いてるとリリィさんが苦笑いしてる。

「相変わらず人離れした嗅覚ねぇ。」

「さすがチェルニ様ですね。何気に果物や野菜を買うときにチェルニ様が選んでいたモノはあの中で圧倒的に質の良いモノばかりでしたよ。」

「そう言うセバスさんも見聞き?が出来るんだね。僕の場合は匂いが良いのを選んだだけだけど。」

「私の場合は長年の感と経験ですね。」

「なるほど。」

個人的には僕のよりもセバスさんの分の方が凄いと思う。

「ちなみにチェルニとシャルとリベラは何食べてんの?」

「ん?イカっぽいのを干したやつ?」

普通のイカではなく、魔物のイカのようなナニカなのでとんでもなくでっかいのでそれを短冊切りされたりするやつです。

まぁ、リリィさんがぼそっとそれクラーケンとか呼ばれる類いのやつでは?とか言ってたけど。

簡単に言うと、イカだとかタコだとか言われてるけどどっちだと判別がつかない魔物でとんでもなくでっかいのは確かで、海で出会ったら大半のお船は沈むと言われてるSランクは軽く超えるヤバい生物です。

おいしいけど。

「にゃう」

「がう」

「チョイスが渋い・・・なんでそんなのを・・」

ちなみに、にゃんこにイカさんはダメだったりするけどシャルはにゃんこの姿をしたナニカなので普通に雑食なのです。

なんで、タマネギも普通に食えます。

「もらった。」

おじいさんが腰を痛そうにしながら作業してたから腰の一カ所を少々強めに突きを一撃放って6割くらい治した後、腰の塗り薬(僕お手製のお薬)をプレゼントしたら、自分で作ったらしいそれをお礼代わりにもらいました。

ちなみにそのお薬、リリィさんとセバスさんに協力してもらった特別品でタダの腰痛用のお薬ではなく、腰痛になりにくい体にするためのお薬なんです。

ようするに、今、大半の症状は治してる状態だけど、一番酷くて今の状態を維持して、その人の生活習慣(食事とかの栄養管理も含むよ)次第ではもっと軽減されるし、腰痛になる元凶のようなモノを常時ほんのりと強化するように補助するようなやつです。

なので、あのおじいさんは今後の生活習慣次第で腰痛とは無関係な人生を歩めるというやつです。

凄い量だけど、長年腰痛に苦しんでたらしいので大変うれしかったらしい。

で、中々おいしいけど、味と歯ごたえはイカとタコの中間くらいなので少々悩まされます。


ちなみに、大袋でがさっと大量にもらったのでおやつ用で一部抜き取って残りはセバスさんにお料理にでも活用してもらおうかと渡してます。

まぁ、おやつ代わりにセバスさんも軽くつまんでるし、僕もおやつにするもお料理にするも好きにどーぞと言ってるけど。

「おいしいよ?」

「そうですね。さすが港町ですね臭みやえぐみもなく大変丁寧に処理されていますね。」

「ってセバスも食べてるの?」

「料理くらいにしか使ったことがありませんでしたが、以外と癖になりますよ?どうぞ」

「ありがと・・・なるほど」

僕がもそもそと食べてるのもわからなくはないとリリィさんがぶつぶつ言いながらモグモグしてる。


「さて、チェルニ様、いつもであれば日々の習慣で歌を歌うと思いますが、場所が場所故に歌えてませんでしたよね?」

「うん。宿屋の中だと声が響いちゃうし。」

なぜか、大抵隣の部屋に泊まってる他人の方々は喜ぶけど。

「そこで提案ですが、ストリートライブをしてはいかがでしょうか?」

「お外で歌うの?」

「えぇ。私も良くしておりましたし、そうすることで周囲の反応で自身の良さや悪さが良くわかりますので、良いと思いますよ。それに、チェルニ様の場合身分が身分ですので知名度を上げておくのは将来的にも強みになると思います。」

不要でしょうが日銭を稼ぐことも可能ですしとセバスさんが言う。


そう言えば昔、セバスさんストリートライブをして日銭を稼ぐ旅をしてたらしいし。

「確かに・・それに面白そう。」

「そうね。どうせ歌うんなら反応がわかる方が後々のためになるわね。」

で、港町の中央の広場にやってきました。

ここは、モノを広げて商売をするもよし、キャットファイトをするもよし、告白合戦をするもよし

そして、ストリートライブをするもよしなところです。


僕たちが楽器を広げたりして準備をしているところをみて邪魔にならない程度の微妙な距離を開けて注目され始め、人が集まり出す。

と言っても僕は、歌う専門なのでマイクだけだけど。

セバスさんはおなじみのギターで、リリィさんはストリートライブなのでキーボード。

「チェルニ様、ジャンルはいかが致しましょうか?」

「最初はしっとり系で様子見で周りの反応次第でノリ良く?」

「そうですね。それが良いかと思います。」

「そんな感じね。わかったわ。」

ちなみにこの2人、僕が作った歌は一通り目を通して自分たちの得意な楽器で一通り弾けるようにしている猛者です。

なので、楽譜がなくてもいけます。

リリィさん曰く、元々音楽は好きだし、学ぶことも嫌いじゃないからそれほど大変じゃないんだとか。

そう言うモノなの?

と尋ねてみたけど、リリィさん曰く

「チェルニの楽譜って、なんて言うか娯楽用の小説を読んでるような気分になるのよね。」

とのこと。

おまけに、つい自分の得意な楽器で表現したくなると言うおまけ付きだと言われました。

そう?

と、セバスさんにも聞いてみたところ

「リリィ様の気持ちはわかります。楽しい歌ならこちらも楽しくなりますし、悲しい歌でしたら同じように悲しい気持ちになります。ですが、嫌な感じではなくむしろ心地よく感じてしまう大変不思議な気持ちになれるんです。そして、その気持ちを自分の得意な楽器で表現してそれを聞いて共感して欲しくなるんです。」

だそうです。

リリィさんもまさしくそんな感じ!って言ってたけど。


まぁ、喜んでくれるのはうれしいけど僕としてはなんとなく思いついたモノをそれっぽく描いてるだけなんだけどね。

後余談だけど、そうやって褒められたり崇められたりすると最近背中がムズムズするんだよねぇ。

物理的に。

なんでだろ?

リリィさんに背中をみてもらったけどきれいな卵肌ねとしか言われないのでナニカが生えてるわけではないらしい・・・返事になってなかった気がするけど気にしない。



で、僕たちが歌う準備が整うと周囲に集まってた人たちもなぜか静かに一切の音を消して注目する。

・・どうしてそこまでして集中して聞こうとするんだろう?

まぁ、興味対象になるならそれはそれで構わないんだけど。


そして、2人の演奏に合わせて僕は歌い出す。





そんな歌を聞いてる周りの人たちはと言うと

「わぁ・・」

「やべぇ・・アレはヤバいわ」

「あぁ・・あれはいかん・・惚れる」

「それになに・・この沸き上がる気持ち。」

「この広場に来たときからつい目で追ってたけど、見た目もやばかったけど歌もヤバいな。」

「それ思った。・・妹ちゃん可愛すぎない?」

「そっちもヤバいけど、あっちのお姉さんの方もヤバすぎだろ。」

「確かにあの胸であの美貌は反則だわ。」

「でも私としては、あっちのおじさまがヤバい。」

「確かに。あっちもヤバいね・・かっこいい。」

「頼れる紳士!って感じだよね!」

「って言うか、ギター上手すぎ」

「わかる!」

「いかん・・・耳が蕩ける。」

「あの美貌でこの歌声は反則だぁ。」

「ていうか、あの美男美女グループはどこの子たち?ここらであまりみた記憶ないけど」

「確か、どっかの島から来てたはずだぜ?」

「それってアレ?なんかどっかの島で船が事件化なんかの巻き添えで大量に壊れてしばらく交流してなかったとかの」

「そうそう。そこの船が直ったとかで来たやつ。」

「へぇ・・そんな船に1番乗りで乗ってきたってことはかなりのご身分?」

「じゃね?っていうか、あの美貌とこぎれいで品のある格好が庶民なわけないだろうよ」

「それもそうね。・・・にしても、癒し要素が半端ないわ。」

「わかる」

「って言うか・・黒猫を連れてる木刀を持ってる美少女で歌がうまいって・・」

「あ!そうだ!木刀姫だ!」

「マジだ!確かに言われてみればぴったり一致する!」

「本物の木刀姫だ!!」







まぁ、とにかく好評ではあるみたい。

その後も、しっとり系からノリノリ系にゆったりしてるけどどこか楽しくなる感じの歌と色々歌った。

結果として大変楽しんでもらい、おひねり代わりに色々おごってもらい、最終的に広場が宴会会場になったけど気にしない。

色々とおいしかったし。

・・・その結果、僕の・・と言うか木刀の歌姫に対するファンみたいなのがいた気がするけど気にしない。

気にしないったら気にしない。

僕はただ、木刀の歌姫様ですか?って大変おめめをキラキラさせた状態の人にステータスの二つ名にはそう書いてありますねって答えただけです。


嘘ついてないもん。

自分でそう名乗ってるつもりはないし、実際そう書いてあるからそう自覚してるだけだし。

証拠として、ステータスでその部分だけ見せてわかってもらったし。

まぁ・・そのせいでサインちょうだい攻撃が超連発して、必死でサインをいっぱい書いてあげたよ。

セバスさんがサインを書けるようにした方が良いですねって言ってたから練習して普通に書けるようになったところでこれだし。

地味に大変だったよ、あんなうねうねしゅしゅしゅって感じのやつを手軽に書けるようになるの。

ただ描くだけじゃなくて、なんかオリジナリティ的なのを云々って言ってたからサインの隣に

木の年輪の柄をした尻尾の長い猫のシルエットを描いておいたけど。

木彫りの黒猫教団って言うのがいつの間にか出来てたから一応・・って言うか、それっぽいのを思いつかなかっただけだけど。

大抵の人はそれを見てあ!殺戮猫キリングキャット!ってならないし、普通は珍しい柄の黒猫だなぁ・・あ、尻尾が長いからいつも連れてる黒猫かぁくらいにしか思われないし。

年輪の柄って言わなければ、そう言う柄のにゃんこだってことで探せばいなくはないって感じで変に疑り深く考えるような珍しいモノでもないからね。


まぁ、それはさておき結果としてその初ライブをしたのがお泊まりした1泊目で、その町を出発する日まで毎日ライブをすることになり、そのたびに宴会もどきが開催され、そのときだけはただご飯状態だった。

まーそのおかげで地元料理とか、現地でしか食べられないというか例えばお魚を釣る人しか食べられない食べ方ってあるじゃん?料理にすらならないようなタイプ。

あぁ、言う料理も食べることが出来たので大満足です。

特にお金が発生したり報酬とかおひねりがえげつないほど飛んでくるわけでもなく、好きなものをただで食べさせようと言うことが報酬代わりって感じになったのでお互いWinWinでした。






「さて、色々と楽しいところでしたが出発しましょうか。」

「そうね。じゃあ、リベラ次の町までとりあえずよろしくね。」

「がう」

僕たちは、また来てねーって言う港町の人たちの声に手を振りながらリベラの背に乗って出発しました。

楽しかったしおいしかったからまた来たいな。







とまぁ、そんなこんなで港町を出発したわけですが、目の前にはでっかいわんこが通せんぼしてます。

「いや、わんこじゃなくてオオカミだから。って言うか、毛皮って言うよりドラゴンの鱗っぽいのを纏ってるからオオカミと言うべきかも謎だけど。」

「いえ、リリィ様。頭が3つあるのでオオカミというのは誤りかと。それと、オオカミ型のドラゴンと言った方が正しいような気がします。」

で、普通なら魔物が襲ってきたから倒しましょう何だけど・・・

「敵意とかないよね?」

「そうね・・けど、避けてくれそうにないわね・・。」

「そうですね・・何か目的があるのは確かですが、敵意や殺意はありませんね。」

「ぐぁう。」

「・・ダメだわ。私の魔道具で翻訳されないわ。」

「私も推測出来ませんね・・チェルニ様はわかりますか?」

「わかるよ?」

「ホント・・あんた何なのよ。」



とりあえず、わんこさんにご挨拶して話を聴いてみたところ、元々地獄という悪人を裁く場所

つまりは、天国とは対となる場所に裁く側として過ごしていたらしい。

聞くと、死後、天国に行くか地獄に行くか決定したときに地獄へ向かうときだけ開かれる門を守り、逃げようとする相手に罰を与えるという大変重要な役割を持った門番さんなんだとか。

で、自身と同じ責務を果たすこととなる存在が1体ようやく現れ、そんな後輩的な存在に地獄の門番の役割を引き継いだ直後に、こちらの世界へと強制的に召喚されたらしい。

「おそらく、違法な召喚魔法でしょうね。」

僕が聞いた内容を説明するとセバスさんがそう言った。

「違法?」

「はい。ただの召喚魔法であれば問題はありません。ただ難易度が高いだけですので。ですが、地獄の者たちを呼び出すと言うことが、そもそもいけないことなんです。」

「悪い人だから?」

「というよりは、悪い人を裁く側が1人でもいなくなればそこから悪人として裁かれるはずのやつが、こっちの世界にやってくる可能性があるからよ。むしろそこを基点に沸いて大量にやってこられたら、その大陸はあっという間に滅ぶ可能性だってあるわ。」

「軽い小悪党であれば対したことありませんが、伝説になるような大悪党だったりするとそれだけで被害は増大ですし、地獄から訪れている時点で肉体は無駄に頑丈なアンデッドのようなモノですので、生物としての急所は致命傷になりません。」

「・・ヤバいってことはわかった。」

「それでいいんですよ。」

で、話の続きを聞いたところ、周りには自身を手駒として奴隷にしようと企む悪人ばかりで、自身が呼ばれたと思われる魔方陣はただ呼び出すだけで元の場所へ帰ることが出来ないことが判明。

しかも、そこからわらわらと裁かれるべき悪人たちがやってこようとしたので、あふれた者たちを全員殺し、魔方陣を破壊し、自分を捕まえようとした相手も徹底的に殲滅したらしい。


で、自由の身になったはいいが、どうやって帰るのか調べたところこの世界で死ぬことが出来れば帰ることが出来ることが判明したらしい。

だが、自身は地獄の門番としての誇りがある。

既に引き継いでいるため、地獄での仕事はなくとも故郷に帰りたい。

そして、ただ帰るために無抵抗で死ぬのは嫌だ。



と言うわけで、自身と全力で戦って全力を出せる相手に自分を倒して欲しいと言うことで僕たちと言うことらしい。

「つまりは、全力で戦って自分の力をフルで出し切りたい。そして、その状態で倒して欲しいってことね。」

「らしいよ?」

おまけで言うと、1体1じゃないとダメらしい。

まぁ、確かに1体複数は純粋な戦いとは言えないよね。

卑怯な感じに見えるし感じるし。


で、直感?で僕と1体1で戦いたいと思い、通せんぼしてるらしい。

「良いよ。僕も全力で戦いたいと思ってたから。」

「ぐぁう」(感謝する。勝利した際には褒美も渡そう)

「無理しない範囲で良いよ?」

「ぐぁう」(無理はしない故に気にするな)

「と言うわけで、2人とシャルは目一杯下がっててね・・・その前に自己紹介をお願いしても?」

ズテン!

って、音が近くから聞こえた。

どこの公爵家令嬢だろう?(気のせい気のせい笑)

このタイミングでそれを言うの!?ってツッコミが聞こえる気がするけどどこのツッコミマスターだろう?(すっとぼけ)

で、わんこさんは苦笑いしてるような雰囲気を醸し出しつつも教えてくれた。





神獣

ドラグニルケルベロス

名前:シリウス

地獄への入り口を約1500年以上守り続けた伝説級の地獄の門番。

頭と首、背中と前足と後ろ足全体をドラゴンの鱗で覆われ、それ以外の部分を毛皮で覆われた3つの狼の頭を持つ全長50メートル(尻尾を除く)。

全体的に赤黒く、鱗は漆黒に染まり、瞳は深い紫色。

その鱗は、あらゆる魔法をはじき、その毛皮は自身の怪我と状態異常を治し、その鋭い爪は傷つけた相手の魔力を奪い取り、その牙はあらゆる防具を破壊し、その吐息は焦土と化す熱気と極寒地帯を作り出す冷気を吐き、その脚は巨体とは思えぬ速度を産み、相手をへし折りマグマの上でも水の上でも平然と駆けることが可能。





通常、地獄の門番は300年くらいで交代するらしいけど、そのわんこさんは1000年守り続けたらしい。

しかも、その1000年は正式に門番として勤め始めてからであり、下積み時代と言うか、先代の手伝いもしくは補助はそれとは別で700年は軽く経過するほどらしいので、かなり地獄の方でも有名らしい。

そんなすごいわんこさんは、地獄界の最上位でもある閻魔さんという、神様ポジション?な人物よりシリウスと言う名前をもらったらしい。

天国を管理している天界所属の神様と、

地獄を管理している神様ポジションの閻魔さんという感じらしく、閻魔さんは主に死んだ人が天国か地獄かどっちに行くのか判別する役割を持ってるらしく、天国の方は天国行を決めた後は天界側にお任せらしいけど、地獄行になった場合は罪の内容からどの地獄に行くのか決めるんだとか。

罪の内容や重さによって地獄界に何種類もある地獄のどこに行くことになるか変わってくるんだそうな。


で、たまにそのお仕置き部屋的な地獄を生き抜いて無駄に強くなった人が暴走して地獄から出ていこうと地獄の門を抜けようとするらしいけどそれから守り抜くのがわんこさん・・いえ、シリウスさんポジションの地獄の門番なんだそうです。

なので、とにかく強く、そしてどんな状況でも周囲の状況を察知し、あらゆる隙をなくすことが重要なんだそうな。

「いや、そこ勝手に納得してないで説明しなさいよ。あんた以外誰も何言ってんのかわかんないんだから。」

「シャルとリベラはわかってるっぽいよ?」

「にゃう」(よろしくー)

「がう」(よろしく・・俺と似たような立場の生き物初めて見た)

「ぐぁう」(よろしく。・・ふむ、確かに似た立場との邂逅は初だな)

「にゃう」(私は自分の立場よくわかんないけど)

「ぐぁう」(確かに、我等と似ているようで似ておらず、更にそこらの獣や魔物とも似ているようで異なるな)

「・・・私ら人間側を言ってんのよ!」

ちなみに、聖獣なリベラと神獣のシリウスさんは役割は違えど似たようなポジションらしく、お互いなんとなく波長が合ったらしく軽くよろしくとあいさつしてた。



で、リリィさんがさっさと言えって脅迫・・げふん、説明を求めてくるので説明しました。

「・・・・」

「・・・なるほど、地獄界の神獣でしたか。道理で高位な存在感があると思いました。」

絶句してるリリィさんの隣でうんうんと軽く頷くセバスさん。


「そう言えば、神獣って何?」

「軽く説明しますと、獣の姿をした神様とされており、観測者であり、断罪者でもあると言われてます。」

「??」

わかるようなわからないようなと首をかしげてると苦笑しながらセバスさんが教えてくれた。

「神獣が留まる土地の行く末を見守ることが主な神獣の役割ですが、そこに住まう者たちの態度と言いますかやらかしている内容次第では、始末することもあるということです。」

「神獣が住んでる場所で、悪い人は始末していい人は放置するって感じ?」

「大ざっぱに言えばそういう感じですね。そのため、神獣が住まう土地は治安が良いので大変人気がありますし、毎年神獣様へと報酬代わりに多くの食べ物をささげるお祭りが開催されることが多いですよ。あくまでも、神獣だと存在が知られた場合はと言う話ですが。」

「バレたらお祭り、ばれなければなぜか治安の良い謎の土地?」

「そんな感じでしょうね。まぁ、神獣を探してそうホイホイ見つかるようなことはありませんが。」

そりゃそうだ。


「じゃあ、僕はチェルニ。よろしく」

「ぐぁう」(よろしく頼む。)

「それじゃあ、楽しく悔いの残らぬ戦いを!」

「ぐぁう!」(そうだな!)



それじゃあ、はじめようかぁ!

っていうのがお約束だってシャルが言ってたけど、どこの誰が言いだしたお約束なんだろ?

と言うより、シャル・・・どこからその情報持ってきたの?

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