セバスの両親・・一方、クリアネス王国
お船に乗ってたらセバスさんがどこからともなく登場し、そのまま一緒に旅することになりました。
「セバスさんって僕と同じで半分は人じゃなかったんですね。」
「そうですね。父がエルフで、母が農民の娘で人だったのですよ。」
「不思議な組み合わせね。どういう風に出会ったかとか聞いても良いのかしら?」
「構いませんよ?出会いは、母が言うには唐突だったそうです。」
「唐突?」
「エルフのお父さんが落ちていたところを農作業をしていたお母さんが拾いましたとか?」
「そんなむちゃくちゃな・・」
「いえ、その通りの展開だったそうです。」
「なんでエルフのその人は落ちてたのよ。」
「聞いたところによると、エルフの里に引きこもるのに飽きて1人で世界を放浪している最中にうっかり食料調達を忘れ、食べられそうなものが周囲に何もないところで体力切れになって倒れたところが偶然母がいた村の近くで、そこを偶然通りがかった母が美形だったからとりあえず拾ったそうです。」
「理由はわかったけど・・拾った理由・・」
「母は面食いだったのに加えてちょうど、自称婚約者が集まりだして鬱陶しかったのでよさげな人を探してたそうです。そこで、ちょうど良い感じに見た目が好みの男性が落ちてたので助けた後、そのまま既成事実を作って結婚してしまえと思ったそうです。」
「凄いお母さんね・・。」
理由も凄ければ、助けた理由も凄い・・。
「で、目を覚ましたところで父はせっせとお世話する母にうっかり惚れてしまい、その隙に食べ物と飲み物全部に媚薬と精力剤を重複して盛りに盛られまくったそうです。」
「・・・」
「そして、その辺りはきっちりとしていた父は村に3つほど存在するお風呂場の1カ所を貸し切ってどうにか宥めようとしたところで死角から母がそのまま押し倒してそのまま・・・だったそうです。」
食われたんだ・・そのままお風呂で。
「・・・」
「で、後は一方的に母に絞られ1晩経過し、気絶して目を覚ましたときには翌日の昼間。記憶とすることしたときの感覚もしっかりと残っていたので責任をとることにして結婚したそうです。」
「・・・あなたのお母さん・・いろんな意味で大丈夫?」
「えぇ。一途な方でした。」
「そう・・」
色々と凄いお母さんだったようだ。
見た目は、清楚で凄く引っ込み思案な感じの幸薄い美少女系だったそうです。
でも、超肉食系だったもよう。
エルフのお父さんも見た目に騙されて油断したらしく、不意打ちにやられたそうです。
「ちなみにその押し倒したときですが、最初からそこを借りると場所も事前に予測済みだったらしく、内側から鍵をかけられるようになっているのにもかかわらず、中に先回りして入り込んでたそうです。」
「・・・徹底的にそこで仕留める気満々だったのね。」
「父が大変遠い目をして語ってくれました。今となっては良い思い出だと語ってましたが、どこか苦笑いしてましたね。母は照れくさそうにしているだけでしたが。」
パパさんはうっかりさんだったらしい。
一方ママさんは確信犯っと・・。
そして、悲しい事実が発生しました。
主にリリィさんだけど。
「ねぇ・・どう責任をとってくれるのかしら?」
「僕の相棒なんだから必然だし責任も結婚してるからこれ以上は無理では?」
「うっさいわ。」
え?
何があったかって?
これみたらわかると思うよ。
名前:リリィ・フォロスト(二つ名:水神天使)
ランク:A★
バディ:白夜
獣魔:リベラ(聖獣:フローラドラゴン)装備:ガーディアンリング
性別:♀
年齢:18
種族:人間(淫魔)
身分:クリアネス王国第一王子の妻
職業:修道女、魔法解析師
副業:ツッコミマスター
称号:元フォレスト王国フォロスト公爵家令嬢、チェルニ・クリアネスの妻
わかる?
なんか混ざってんの。
リリィさん本人は副業扱いしたことないけどいつの間にか増えてた。
で、僕にお仕置きというか八つ当たり?・・いや、僕はボケらしいからお仕置きかな?
とりあえず、お仕置きとしてリリィさんのお胸で窒息の刑に処されました。
追撃で抱きしめてグエッの刑もされたけど。
それと余談だけど、この世界での結婚って実は名字というかファミリーネームは変わったりしないんだよね。
その代わり、身分のところに~の妻とか~家夫人みたいなのが追加されるだけで、
後は、元~家令嬢とかそういう元々~家の人でしたーと頭に元が追加されたりするだけ。
それと、最新版が身分のところに載って、それ以外の部分は称号欄にうつるよ。
だから、リリィさんはフォロスト家の名前のまんまだけど身分的にはクリアネス王国の王子の妻ってことになるの。
--クリアネス王国陛下--
ワシはクリアネス王国で国王をしている。
元々はこの国の公爵家の次男だったのだが、なぜか前陛下に
「今度からこの国よろしく」
と凄く軽く任され、気付くと陛下になってた。
あまりにもゆるっと頼まれてしまい、ツッコミを入れる暇もなくなってしまった。
ちなみに、当時王子や姫だった方々はと言うと、王位を継承する気が全くなかったらしくラッキー程度にしか思っておらず、笑顔でこの国でやりたいことをやって貢献して日々楽しく過ごしてる。
そんな上の立場が適当なのに実力主義で身分は後回しな国として長年続く大国だというのだから不思議なモノだ。
で、ワシにはとんでもなく美人でスタイルの良い妻と可愛い子供が三人いる。
王子が2人に姫が1人だ。
まぁ、その内の王子の1人が何度みても我ながら息子には見えず娘にしか見えないのだが・・。
「陛下、定期報告です。」
「おう、どうだったか?」
「進捗はよろしくないですね・・。」
「やはりそうか・・。チェルニ・・どこに行ったのか」
ある日突然この国の第一王子であるチェルニがいなくなった。
普通であれば、この国の次の王となる者がいなくなれば当然大騒ぎになるし、誘拐疑惑も当然疑われる。
・・・だが、あの子は何というか
「野良猫殿下ですからねぇ・・・・姫にしか見えませんが。」
「やっぱりそう思うよな?」
定期報告をしてくれてる女性近衛騎士の1人の呟きに答えると頷かれた。
それはもう力強く。
「あのお方・・可愛すぎません?」
チェルニは、大変美人な妻に瓜二つレベルで似てるのでとんでもなく可愛い。
・・ワシも男だと忘れることはしょっちゅうだが、チェルニを男だと知ってても未だに信じない!と現実逃避する連中は非常に多い。
「わかる。我が息子ながら、ホントに息子なのか毎回疑問であふれるし」
妻も毎日不思議そうにしながら幸せそうに抱きしめて撫で回しながら男かどうか毎回確かめている光景を良く目にしていた。
で、野良猫殿下というのはチェルニのこの国での呼び名だ。
あの黒い猫といつも一緒にいるからと言うのもあるが、仕事や勉学などの学びごとはきちんと全てスケジュール通りに終わらせるのは良いとして、突然いなくなるのだ。
ふらっと。
その先が、城下町で食べ歩きだったり騎士たちに混ざって訓練してたり、料理人たちに混ざって料理だったり
メイドたちに混ざって掃除してたり(なぜかメイド服だったが)
で、きちんと食事の時間だったり風呂の時間だったりと次のスケジュールにはきちんと戻ってくる。
で、そんな行動の読めないところから野良猫のようだとこの国に住む住民たちも呼ぶようになりそうなった。
「いつもなら、10日もしないうちに帰ってくるのに・・。」
「過去に騎士たちの遠征にシレッと混ざってることはありましたが、そう言う目撃情報もありませんからね。」
普通なら、護衛もなしであちこちを1人でウロウロする王子は大変危険なのだが・・・。
「あのお方は、なんと言いますか気配を消したりするのがとんでもなく上手いんですよね・・家のモノたち総出で探しても見つけきれませんよ。」
「うむ・・魔術師団たちも総出で探したが毎回見つけきれずにひざから崩れ落ちる光景を良く目撃されてたな。」
「途中、その魔術師団の中に混ざってませんでした?」
「混ざってたな。本人は大変楽しそうだったが、周りは顔が引きつったまましばらく寝込んだそうだぞ。」
あまり迷惑のかからないイタズラがお気に入りの第一王子だった。
だが、見た目もどこからどう見ても美少女だったのでファンが異常に多かったが。
そんな王子が、ある日突然いなくなった。
何の前触れもなく突然。
そのときはいつもの放浪かぁと思ったが、どこからも目撃情報が来なかった。
そして、ホントにいなくなったことが判明し、全員が慌てて捜索したが見つからなかった。
誘拐も考えたが・・・
「あのお方を誘拐って出来るんですか?」
「・・・騎士たちからの情報だと、突然出現したワイバーンの群れを1人で半分以上殲滅させてたらしいしなぁ。」
ちなみにそのときのワイバーンの数は100は軽くいたらしい。
妙に強いんだよなぁ・・チェルニ。
魔術師団(騎士の魔法バージョンの集団)に混ざって魔法や魔力の訓練を行い、
騎士団(物理戦闘をメインにしてる)に混ざって接近戦の訓練を行い、
研究員たちや司書たちと色々話し合って知識を補い、
メイドや執事、料理長たちと話し合って家事全般を学び、
こちらが着けた優秀な家庭教師にまんべんなく学んでいた大変優秀な子だ。
家庭教師以外の部分に関しては、チェルニが勝手に学びに現地に向かい、勝手に混ざってただけだったりするが。
と言うよりずっと疑問だったのだが、なぜにあの子は混ざる場所に合わせて、その場の制服に着替えてるの?
というよりは、現地のメンバーがわざわざチェルニサイズの制服を事前に用意してチェルニに着せて、本人は特に気にせず、その場ではそう言う者と認識して普通に受け入れてるし。
・・・可愛いし似合ってるけど。
そんな感じだったので、幼い頃からいろんな方面で鍛えられていたのでかなり強い。
それもあって1人で放浪してても誰も文句は言わなかった。
むしろ、城下町に遊びに行っては教会に勤めるモノたちに浄化や、教会で行う関係の祈りやその他諸々を学んでたり、
冒険者たちと情報交換してたり一緒に訓練したり、たまに一緒に依頼に出かけたりと大変フットワークの軽い王子だった。
・・・一部はチェルニが王子だと知らず、ただの腕白な貴族令嬢だと勘違いされて、正体に気付いた後全員がフリーズするのはいつものこと。
それに、妙に勘が鋭かったから悪人に騙されてもない・・・となるので、ホントにいなくなった理由が謎だ。
寝てても悪意には超敏感で速攻で目を覚まして敵を殲滅させちゃうような子なのに・・。
「それで・・あの噂に関してですが」
「確か、殺戮猫だったか?」
「はい。調べたところ最初にその呼び名が広まり始めたのはこの国でした。」
「何だと!?」
殺戮猫
突然噂されるようになった影の英雄だ。
証拠がなく捕まえることが出来ないモノたちをどうにか捕まえようと考え、調べても出来なかったモノたちは蔓延る中、突然その内に1人がボロボロの状態で公園の広間に転がっていた。
たっぷりとそいつがやらかした証拠の塊とセットで。
それと同日、被害者の元に砂で「殲滅完了」と言う文字と、果物と魔石が転がっているという情報があった。
最初は偶然かと思ったが、それは数日おきに何度も同じことが発生した。
そして、捕まえた犯罪者から情報を吐かせたところ、
唯一わかったことは黒いナニカが突然襲ってくると言うことと、
猫の目のようなものが暗闇からきらっと光った、それがトラウマになったと言うことだけだった。
刺される寸前に刃がキラリと光るような感じと似たようなモノだろうか?
そして、あらゆる捕まえようにも出来なかったモノたちが軒並み殲滅され、そのたびに被害者宛に果物と魔石がプレゼントされ、捕まえたモノたちに猫の目恐怖症?と言う謎のトラウマにされると言うことが繰り返され、巷では、義賊:殺戮猫と呼ばれるようになった。
「木彫りの黒猫教団という宗教集団まで出来る有様ですからねぇ・・」
「殺戮猫のファン集団だったか?」
ただただ、殺戮猫を崇め、偽物を始末して回るだけという大変平和な集団で他人に迷惑のかからない集団だった。
だって、大抵の集団は自分たちのグループに強制的に引きずり込もうとするけど、それすらもなくただただすごーいと楽しむだけな集団なのだから。
「えぇ。ファンと言うより崇拝者ですが。」
「・・・・確かに、彼?彼女?には、こちらも救われたわけだが。」
捕まえられなかったモノたちを軒並み捕まえることが出来たのだから・・だが、どこの誰かわからないので褒美を渡すことも感謝の気持ちを伝えることも出来ない。
と、目撃情報というか同じような被害?にあった場所のトップから同じ嘆きの声が良く響く。
また、偽物の殺戮猫で、通称、偽キャットが出没したがその崇拝者集団が自主的に潰して回ってた。
「そして、殺戮猫が、チェルニ様であることが判明しました。」
「何だと!?それは誠か!?」
「はい。」
確かにあの子、強かったし、気配消すの上手だし黒猫連れてたけど。
それだけで、義賊様だって決めるのは良くないと思うんだ。
「何か証拠があったのか?」
「偶然被害者となったモノたちと話すことが出来、話をしたところ判明しました。」
「ちなみにどういう被害に?」
「確か、町に住んでいる町娘で商人の娘だったのですが、その町をエンシェントウッドマンが襲ってきたそうです。」
「エンシェントウッドマンだと!?」
簡単に言えば、木造のゴーレムだ。
ただし、姿形を人型から動物型へと自在に変えることが出来ることと、町を軽く覆い尽くすほどの巨体で、木製のくせに燃えず、魔法関係に非常に強い耐性を持つSSランクの魔物だ。
「はい。それをたった1人で黒猫を連れた美少女が討伐して、一言もしゃべらずに町を去って行ったそうです。」
「そうか・・」
普通ならここで、女の子なんだから家の子じゃないだろと言いたいけど、見た目が美少女なのはあってるのでそうは言えないという微妙な悩みがあるけどとりあえず頑張ってそんなツッコミを飲み込む。
「そのとき、全身を血まみれになりながらフラフラしてせめて手当だけでもしようと近寄ったそうなのですが、連れていた黒猫が口からビームを発射して近寄ることが出来ずそのまま去って行ったそうです。」
「ん?猫の口からビーム?」
凄い記憶のある光景が聞こえた気がする。
主に、チェルニに強引に迫ってきたどこぞの国のアホ貴族相手にチェルニが連れてる黒猫のシャルが同じことをしてたような気がする。
「はい」
「・・・うん、とりあえず続きを頼む。」
とりあえず聞かなかったことにしよう。
頑張って気のせいということにしよう。
口からビームを発射する猫が偶然2匹目がいただけだ・・うん。
「はい。そして、姿を認識阻害するタイプの魔道具か何かを使っていたようなのですがそれが偶然外れ、姿を後ろ姿ですが見ることが出来たそうなんです。」
「ほう・・それで?」
「若干ではなくさりげなく、紫・・と言うより藤色がかった銀髪のストレートロングで非常に小柄で和服で木刀を腰に下げていたそうです。」
「っ!!」
それは疑うこともなくあの子の!チェルニの正装!
あの子の服はメイドたちが勝手にオーダーメイドで作り、魔術師団が勝手に魔法の付与を行い、服を作るための素材を騎士団が勝手に集めて作られた中々優秀な装備だ。
後、さりげなくその服の裾の端っこに我が国の家紋を小さく絵柄に紛れさせて描いてもらってる。
で、幼い頃に突然どこからともなく黒猫を拾ってそのまま一緒に過ごすようになった猫もそうだが、
木刀は我が国の宝物庫にいつの間にか転がってほこりを被っていたモノだ。
いつからそこに存在するかも謎な品物。
とんでもなく硬くて何をどうしてもヒビすら入らないどころか燃えることもしなることもないというタダの頑丈な木刀で、普通より若干軽いだけという良くわからない品だった。
おまけに持ち歩いても気付いたら宝物庫に勝手に転移してしまい、持ち出すことすら出来ないと言う謎の品。
それをよたよたと歩けるようになった幼い頃のチェルニが何をどうしたのか不明だが大変楽しげに木刀を握って普通に持ち歩いていた。(当時の扱いはほとんど歩く際の補助具だったが)
当然勝手に宝物庫から持ってきたことを叱る以前にどうやって持ち出したかも謎なのだが、あの子が涙目の上目遣いでこれが欲しいと言ってしまい、全員があまりのかわいさにノックアウトされ、そのまま怒ることも出来ずチェルニのものになった。
しかも不思議なことにいつものように宝物庫に転移されなかったからと言う理由もある。
後、あの子・・すっごい物欲がないから欲しいと言ったことが大変珍しかったから叶えてあげたいという親心もあった。
そして、その髪色はなぜか我が国の王族にしか存在しない髪色だ。
確かに似たような色はあるにはあるが、比べるとやはり全く違うのだ。
とはいえ、この髪色でないと王位継承権はないというワケではないが、子供は全員・・と言うよりクリアネス王国の王族の血が混ざると必ずその色になるのだ。
さすがに、クォーターより先になると色が混ざって違う色になるが、ハーフの子供までは必ずその色になることは先祖代々続く情報なので確かだ。
「で、では・・・チェルニは少なくとも無事なのだな!?」
「はい。定期的に殺戮猫が始末して回った残骸情報が回ってくるので確かかと。それと、ちょうど数日前に追加で殺戮猫の情報が上がってきましたよ。」
「場所は!」
あの子が殺戮猫というとんでもない影の英雄になってたことも驚きだが、数日前と言うことは少なくともその周辺にはいるわけなので、追跡して場所を特定することが出来る!!
「秋と冬の大陸の間にある島だそうです。そこに秋の大陸を騒がせた人身売買のトップの息子が逃げてたらしくそれを始末したそうです。」
「なぜそんなところにいるのだぁぁ!!」
頭が痛い・・なんであの子はそんなところをほっつき歩いてるのかぁ!
おとなしく帰ってきなさい!!
「それが、逃げた相手を確実に始末するためにそんなところまで追っていたそうです。」
「あぁ・・あの子はなぁ・・責任感が強いというか最後までやり遂げないとダメだという使命感が強いからなぁ。」
「そうですね。おまけに正義感が強いお方でしたので、困る人がいれば最後までやり遂げないとダメだと思ってそうです。」
そうでなければ、殺戮猫と呼ばれるようなことはやり続けないだろう。
「はぁぁ・・」
「それと、我が国・・と言いますか陛下宛にお手紙です。」
「手紙?誰から?」
「その島のフォレスト王国からです。」
「ふむ?確かに貿易は定期的にしておるが何か問題でもあったのだろうか?」
「さすがに私が確認するわけにはいきませんので」
王族の印で蝋で封されてるのだから当然と言えば当然だ。
とりあえず手紙を読む。
「陛下・・恐れ入りますが内容を差し支えない範囲で構いませんので教えていただけないでしょうか?チェルニ様の目撃情報がその島からあったので関係があると思っているのですが・・。」
ちなみに、このチェルニ捜索部隊の隊長になってるこの女性騎士はチェルニの崇拝者の1人だ。
「簡単に言えば、フォレスト王国のフォロスト公爵家の令嬢に浚われ、そのまま結婚したため、その妻となった者が責任を持ってこの国まで引きずってくると思うから後よろしくと言うことらしい。」
「は?・・・チェルニ様が結婚!?」
「うむ。ご丁寧に結婚しましたという証拠を協会を通じて契約書まで発行しておる。」
「・・・チェルニ様がお幸せなら。」
ちなみに、チェルニを崇拝している割に異性として意識はしてないので可愛い妹扱いがほとんどというかこの国では全員がそれである。
「で、どうして、チェルニ様は殿下なのに公爵家令嬢が引きずっていくので?」
確かに、普通なら思いっきり不敬罪だな。
「それが、どうやらチェルニは記憶喪失らしい。」
「はぁ!?」
「5年ほど前から記憶が自分の名前すら不明な状態で世界を放浪して、気が向くままに敵を始末して回ってたところを偶然フォロスト家令嬢が拾って強制的にギルドカードを発行させることで我が国の王子だと判明し、記憶探しのためにこの国に連れて行くことにしたらしい。」
「あの・・その言い方ですと5年前に記憶喪失になったけどそのご令嬢が実行するまでスルーしてたように聞こえるのですが。」
「うむ、実際タダの物忘れ程度に何を騒ぐ?という感じでスルーしてたらしい。」
「チェルニ様ぁ・・」
名前も含めて記憶が無くなることを物忘れ程度の扱いにしたらダメだと思う。
おかげで目の前の彼女が頭を抱えている。
「で、このまま放置すると冗談抜きで記憶がないまま人生を全うしそうだったので引きずってくることにしたらしいのだが、なんだかんだで一緒に過ごしていくうちに相思相愛となり、そのまま結婚したらしい。」
「な、なるほど・・・そのご令嬢は、同性愛主義者ですか?」
「気持ちはわかるがきちんと男性としてチェルニをみて、意識しているらしいぞ?」
「あの超絶美少女相手に男として!?」
気持ちはわかるが、あの子は一応・・・うん、一応男だぞ?
「まぁ、そんな感じ故にしばらくすればこの国に来てくれるらしい。」
「はぁ・・・チェルニ様がご無事で良かったぁ。」
「手紙によると相変わらずぽやっとしているようだが。妻である公爵令嬢に膝の上で撫で回されてるようだ。」
チェルニは、なぜか体格が全体的に小柄なのと童顔なのが合わさって非常に見た目が幼い。
一方チェルニの弟妹たちは真逆に凄く立派に体格も大きく育ってる。
「その辺りは全く記憶がなくとも変わらないのですね。ちなみに、チェルニ様のご兄弟や、妃様は・・」
「チェルニが行方不明となって全員が寝込んでいたが、この情報があれば復帰できるであろう。」
「・・こう言ったら不敬になりますが、親ばかとシスコン&ブラコンですからね・・。」
「うむ不治の病だ。そのせいでワシは子供に冷たいと言われておるが、ワシは普通だと思う。」
普通に妻を愛しているし、子供たちは3人とも大好きだ。
騎士たちやメイドや執事たちから聞く親子会話から察するにワシも十分可愛がりすぎていると言われる程度とは思うが、あの3人が過剰なんだと思う。
「距離感は確かに普通ですよね。」
妃・・と言うか妻は、可愛いモノ大好きなのに加えて、子供大好きのため、当たり前だが親ばかになった。
そして、チェルニが妃のストライクゾーンど真ん中だった(男なのに見た目が美少女という点もポイントが高いらしい)から必然的にそうなった。
で、第二王子と第一王女はというと、チェルニがなぜか中心となって嬉々として物事を教えたり、身の回りのお世話をしたり、手作り料理を食べさせたり、病気をすれば看病してやったりと色々とお世話をし続けていたことが影響しているのかシスコンとブラコンになった。
・・・実際チェルニはそういうのを教えるのも上手だったし、実績もあるし、そういうことをする技も知恵もあるからね。
頭に超が付くレベルで、やばいレベル。
そのため、2人は王位継承権なんて全く見向きもせずにチェルニを王にして自分たちは傍で支えるんだと張り切っており、勝手にそれ専用の教育メニューに変更していた。
・・・チェルニが影響しているのか勉強熱心なのは良いとして・・・なんで、こんな子たちになったのやら。
おまけで言うと、この3人は交代制でチェルニと一緒のベッドで寝てるのである。
やましいことはない。
親愛レベルでキスしたり抱きしめて撫で回したりするくらいだ。
ワシは、頼まれたらやるくらいで基本は自分から一緒に寝ましょう!なんて言わない。
その3人は気付いたと思うが普通に言うし、実行する。
幼い頃と言うより物心つく前からそれなので、チェルニはそれが普通だと勘違いしていたが、みんな困らないどころか良いことしかないと思っているので訂正しない。
そのため、チェルニが行方不明になった途端3人はその場で倒れて気絶した。
そして、今も寝込んで、部屋に引きこもっている状態だが、勉学や日頃の業務はきちんと引きこもったまましているのだからなんとも言えない。
おまけにこの国って、貴族も平民も全員は身分は割とどうでもよさげな人が非常に多く、この国のトップがこんなことになっててもあらら~くらいであーだこーだと言うことは全くないという非常に平和な国だ。
身分が上がったりもらったりしたら普通は喜ぶはずがこの国だともらったかーじゃあ頑張りますかーって感じがほとんど。
だが、責任とかはきちんとあるので仕事はきちんとこなすので、屑貴族は割といない。
その事実に他の国からはものすごく謎な国だと言われたが。
そのため、何か言いがかりを他国が言ってしまうと嬉々として始末しに向かってしまうが。
やり返しが完了すると戦利品をワシに渡されても困るから返しておくか、実行犯・・げふん、対処した者たち相手の貿易系で利益になるようにこっそり手を回したりしておいたり、公共施設の設備費とかに回しておくが。
後にこの手紙に書かれていたことを告げると、落ち込んではいたが一応立ち直ってくれた。
「その言い方なに?なんかワシになんか癖のあることってあった!?怒らないから言ってくれるかな?」
「昼行灯とか、色々平和そうな人だとか、戦闘中はバーサーカーにジョブチェンジするとか、絶倫で夜はベッドの上では世界最強とか巨乳好きの面食いとか、そのくせ一途とか」
「待って!?予想外なことばっかり言われてるんだけど!?確かに戦うときはちょっとはっちゃけてるかなぁとは自覚してるけど、それ以外は何!?と言うか最後辺りの夜の云々とか面食いとか何で知ってるの!?確かに一途だから妃以外は目の保養にはなってもきちんと線引きして対象外にはなってるけど何で知ってる!?」
「割と有名ですから。」
「有名なの!?どこで!?」
「主に、城勤めの女性メンバー限定で」
「それ以上はお願いだから漏らさないでね!?」
「承知いたしました。口止め料とかいかが致します?」
「それを、ワシの弱み握ってる側が言う!?くぅ・・何が望みだ。」
「いえ、何かあったときに1回助けて欲しいなぁと。」
「それが一番怖いから何かプレゼントするからそっちでチャラにしてくれない!?」
「左様でしたか。では、これを着て下さい」
「・・・・わかった」
ちなみにワシ、自分で言うのは何だけど結構なイケメンなわけよ。
おまけに童顔で、しわもほとんどないので見た目と年齢が合わないとよく言われる。
ちなみに妻も似たようなものだ。
で、筋肉も何かあったときや定期的に訓練するからそこそこあるわけで細マッチョなわけよ。
で、女性騎士に渡されたのはなぜか執事服。
いや、ホントなんで?
その後、執事服を着せられた挙げ句、しばらく執事&主なやりとりをさせられ、どうにか口止めは成功したのであった。
というより、チェルニが記憶喪失になったのとここからいなくなったのがほぼ同じタイミングっぽいのはわかったけど何で記憶がなくした後この国を出て行ったんだろうか。
わからなければ近くの者に声をかければ良いのに。
しかもいなくなった日の夜は普通に城のチェルニの部屋にいたのに。
それと、しょっちゅうあの黒猫と普通におしゃべりしてたし、そんな光景が凄く微笑ましかったからスルーしてたけど、なんであの子猫とおしゃべり出来るの?
時々野鳥とか馬(騎士たちが使う用のやつ)相手にも会話してたし・・ホント何なんだろうかと思う。
「そう言えば、チェルニ様が作成して歌った歌を録音した魔道具が手に入りましたよ。」
「何!それ欲しい!」
あの子、歌の才能もあったのか!
凄く可愛い声してるし、歌の腕前はワシが雇った優秀な歌手が太鼓判を押すほどだから当然と言えば当然だけど。
「そう言われると思いまして、複数複製しておきましたのでご家族にばらまいて下さい。」
「うむ!それで機嫌もだいぶ治ると思うから助かる!あ、経費として落としておくから申請しておくように。報酬として色も付けておくな。」
「かしこまりました。」