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船旅は楽だけどお金も動きまくるらしい

港町で色々あったけどどうにかこうにか船は無事に春の大陸へ出発することが出来た。

船を作るための素材を大量に無償提供したお礼として最高級のお部屋をタダで使わせてもらえることになり、ありがたくその気持ちを受け取ることにした僕たちは、春の大陸に向けて出発しました。





僕は、シャルを膝に乗せた状態でテーブルに広げた紙に歌詞と楽譜をさらさらと書きながら、合間合間で歌ってみてシャルとリリィさんに感想を聞きながら修正してを繰り返していた。

リリィさんは穏やかな表情をして僕を見つめている。(後に深窓の令嬢っぽいと言われた僕です)

彼女が言うには、僕が合間合間で歌いながらうれしそうで、真剣な表情をしている姿を見るのが好きでいつまでも眺められるとか言いながら僕の邪魔をしない程度にリベラを背もたれにしながら撫でつつ眺めている。

「チェルニの声って凄く聞きやすいわよね。それに、凄く幅が広い。」

「そうなの?」

歌わずに楽譜とかだけを書きながら耳だけリリィさんに向けて話を聞く。

リリィさんも僕が視線を向けずに話をするのに気にしないどころかどこか微笑ましげに眺めつつ話を続けてる。

「えぇ。声がきれいに中性的って言うのもあるけど、音程を下げればちょっとだけ高い男性の声に、音程を上げればちょっとだけ低い女性の声になるんだもの。」

「確かに限度はあるけど大抵の声は出せる気がする。」

バスとかソプラノみたいな男性パート側のトップと女性パートのトップは無理。

むせる。

過去に無理矢理出し続けすぎて吐血したことがあったけどあのときは凄かったなぁ・・周りが。

主に阿鼻叫喚で・・僕に対する過保護さで。

けど、バリトンとメゾソプラノまでなら普通に問題なく出来る。

・・・無意識だったけど確かに、僕って音域が広いんだと今気付く。


ちなみに、リリィさんはメゾソプラノ以下の音程が出ない代わりにソプラノの音域が得意だからリリィさんにお似合いの歌とか作ったらすっごいよ?(ちなみにやろうと思えば声だけでガラスを割れるくらい高い声が容易く出せるのである意味狂気)

それと、セバスさんは逆にバリトン以上の音域が出ない代わりにバスが超得意な超低音ボイスの持ち主でこちらも同じくセバスさんお似合いの歌を作るとすんごい。(メイドさんたちがぼんやりとした状態で見惚れたままフリーズする勢い)

それもあって、僕が中央付近、上位辺りをリリィさん、下位辺りをセバスさんが担当してくれるとこの3人で全域の音程を表現出来るのですごく盛り上がった。

リリィさんもすごく良い声してるけど男としては(ほとんど娘扱いされてるけど男だからね!?)、セバスさんのバリトンボイスはあこがれである。



「それに、声が大きいわけじゃないのに凄くはっきりと距離があっても聞こえるのね。」

「それは、声を出すときにちょっとしたコツがあるんだよ。」

覚えたのは、何の因果かレストランとか喫茶店とかのウェイトレスをさせられたときに僕をバイトさせるために引きずり込んだお姉さん方に教えてもらい、後は実戦で自力で工夫して身につけた。

「へぇ。そう言うワザもあるのね。・・・それに何よりあなたって歌が凄く上手いのよ。」

ちなみに、最近のリリィさんのお気に入りはなぜか僕のボイストレーニングを横で聞くこと。

一応毎日ボイストレーニングはしてるんだよ?

声が出せないと歌を作っても確認出来ないから。

まぁ、ボイストレーニングと言ってもその後で複数の音域で様々なパターンの歌を歌うんだけど。

呼吸法だの何だのと声を出したり歌わずとも出来ることは色々あるのでそれらは実は私生活を送りながらさりげなく実戦してたりする。

それが、リリィさんが僕の声が良く通ると言ってくれる根源だったりするのです。

ちなみに歌うときに指揮を執ってくれるのはシャルである。(指揮棒なんてないので尻尾)

そして、凄く上手で、リリィさんもツッコミを入れたいけど入れたら負けという顔でシャルの指揮の下良い声で歌ってくれるしセバスさんも微笑まし下な表情をしながらも良い声で歌ってくれるので好評。(リリィさんからは凄い微妙な表情をされるけど・・なんなのこのにゃんこと言いたげな顔で)

「そう?」

そう言えば、良く歌って欲しいという人が酒場にいたような気がする。

・・酒場は色々と騒がしくてあまり好きじゃないし、お酒も好きじゃないけど良い情報が集まるし、おつまみがおいしいんだよねぇ。(大抵近所の席の人がくれるけど)

「えぇ。セバスも父様に母様も言ってたけど抜群に上手いわ。どのジャンルの歌も凄く聞き惚れちゃうモノ。」

「そうなんだ・・。」

そう言えば、朗読して欲しいとか言ってくるメイドさんもいたっけ?

後、子守歌を歌うと8割くらいの人が爆睡することもあったような?




そんな中、船長さんオーラをこれでもかと醸し出すおじさんがやってきた。

「船長さんオーラって何よ・・・気持ちはわかるけど」

相変わらず僕の頭の中を当たり前のようにツッコミを入れつつのぞき見るツッコミマスターである。

「うっさいわ。おとなしく歌作ってなさい。」

「えぇっと・・お忙しそうなところで申し訳ございません。今回のこの船の件で多大なる音がある方と聞いておりますので一言ご挨拶を思ったのですが出直した方がよろしいでしょうか?」

凄く出来た人である。

ちなみに見た目も船長さんって感じがする。

「構わないわ。気にしないでちょうだい。」

「ではありがたく。本日この船の船長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。それと、今回ほぼ無償で素材の提供をして下さったと伺っております。本当にありがとうございました。そのお礼としてこちらの最上級の部屋を提供したと伺っております。春の大陸までも1月の間、ご満足いただける船旅をお約束いたしますのでよろしくお願いいたします。」

凄く丁寧で良いおじさんである。

そして、見た目も中身も身分的にも完璧な船長さんだった。

「こちらこそよろしくね。それと素材提供に関しては気にしないでちょうだい。こちらもあの量の素材を持て余していて困っていたのよ。それに、困っていたモノを有効活用してもらったところで膨大なお金をもらってもそっちも持て余して困ってしまうわ。」

「左様でございましたか。何かございましたら私か近くのスタッフをお声がけ下さい。他にお客様はいらっしゃいませんので。」

「え?私たち以外誰もいないの?お客さん。」

「えぇ。」

「えぇ・・・さすがに私たちだけで独占ってやり過ぎでしょう・・。」

「あぁ・・一部訂正させていただきますと、今回のこの船は試運転というのもあるのですが、春の大陸へこの船に積めるだけモノを積むために向かっているのです。なのでお客様とはいえ、人は少ない方がその分重さが軽くなるので速く進みます。・・という理由もあるのです。」

「あぁ・・・・船が動かせないならモノも入ってこないモノね。」

「そう言う裏話もあるのです。それに試運転ですのであまり多くのお客様を乗せて何かあれば問題ですので。ですが、今回の試運転は全く問題ないのは確信済みですが念には念を押したものになりますのでご安心下さい。」

「気遣いは不要よ。けどありがとうね。何かあれば遠慮なく頼らせてもらうわ。」

「えぇでは失礼いたします。」

そうして船長さんは去って行った。

「想像以上に丁寧な人だったわね。」

「それに道理で静かだと思った。」

シャルも頷いてる。

シャルは気配に敏感だからこのでっかい船にいる人たちの気配が想像以上に少ないって微妙に気になってたっぽかったからその謎が解決した。

「そう言えばシャルがそんなことをこの船が動き始めたくらいで言ってたわね。」

「だとしても、このでっかい船を独占って経験出来そうで出来ないよね。」

「確かに。実際にやるとしたらどれだけのお金が吹っ飛ぶんだか。」

「その間の出るはずの利益とか、動かせない分のお詫びの分とかって色々積まれるから想像もしたくない金額になるのは確かだよね。・・その独占した期間中のこれだけの大きさだからね。」

「えぇ・・。でも、ある意味面白い経験をしてるわ。」

「これってアレだよね。公共施設を独占状態で無駄にはしゃぎたくなるやつ。」

走り回ってもスタッフに遭遇しなければ迷惑をかけないという凄い状況。

「あぁ・・凄い気持ちがわかる。」

「あ」

「あってどうしたのよ。」

「これなら、お風呂には入れる。」

「は?」

「だって・・・公共施設のお風呂に僕入れたことがないんだもん。」

「なんで?」

「男風呂に入ろうとしたらみんな全力で止めるし、女風呂に引きずり込まれそうになるから僕が全力で拒否するって感じで。」

「あぁ・・・確かにチェルニの見た目を思うと確かにそうなるわ。一応混浴があるらしいけど。」

「・・・どうせ誰もいないんなら、男風呂に入ってみたい。」

「良いわよ。屋敷では一緒に入るのが当たり前だったわけだしこれも滅多に経験出来るモノではないものね。」

「うん」

ちょっとだけわくわく。

誰もいない状態だから屋敷でお風呂独占と似たようなモノと言えば似たようなモノだけどそれでも、お屋敷のお風呂はでっかい湯船が1つでこういうところのお風呂は湯船が大抵2つ以上なんです。

例え2つで温度の違いしかないとしても構わない。

それを経験したことがないんだから!!

男風呂に入ると痴女扱いされ、

女風呂に引きずり込まれそうになって変態扱いさせられるという

どっちに入っても嫌な未来しか見えない場所という認識しかないのです。


・・まぁ、記憶が無くなる前に入ってたかもしれないけどどうやって入ってたんだろう?

とすっごい疑問。



「そう言えばお風呂で思い出したけど、シャルって普通にお風呂平気なのね。」

「平気というか割とお風呂好き?」

「にゃう」

ヨゴレとくさい匂いは敵だとシャルが鳴く。

「なるほど・・にゃんこなのに珍しい。ちなみにリベラは?」

「がう」

「そっちもきれい好きだからお風呂は歓迎と。」

そのきれいなモフモフはきれい好きじゃないと維持出来ないモノね。

「リリィさん、猫って普通はお風呂嫌いなの?」

珍しい的なことを呟いてたけど。

「全部が全部ってワケじゃないけど大半はお風呂が嫌いなにゃんこは多いわよ。」

「へぇ。」

「全部じゃないけど好きな子はいるらしいけどかなり少数らしいわ。」

「そうなんだ。まぁ、体が濡れると思うように動けないからとか服着たまま全身濡れたら気持ち悪いからそう考えるとわからなくはないけど。」

「あぁ・・毛皮を私たちだと服を着た状態って例えるのか・・それなら嫌がる理由がわかる気がするわ。チェルニって結構長風呂だったわよね?」

「うん。野営中は川とか湖を見つけたら必ず水浴びするようにはしてたけど長期間は出来ないし、お風呂はしっかり体を隅々まで洗ってからのんびりするのは好きだよ。シャルもお風呂好きだから軽く1時間くらいは湯船に浮いてたりするし。」

なぜかわかんないけど大抵の温度でも不思議なことに逆上せないんだよね僕もシャルも。

「にゃう」

「そうだね。たまに上がってから再度体を洗ってもう1回入るなんてこともしてたね。」

「何でもう1回洗うの?」

「そのときはしつこく丁寧にとかじゃなくて、軽く洗い流す感じだけど気分的なモノ?湯冷まし的な?」

「・・まぁ良いわ。きれい好きって言うことにしておくわ。それで、歌はもう良いの?」

「うん、終わった。」

「・・・・」

なぜか絶句した表情になって僕・・の前のテーブルをみてるリリィさん。

「どうしたの?」

「いや・・そんな可愛く首を傾げられても・・。と言うか、あの短期間でどんだけ作ってんのよ。」

「え?」

「それに、修正は?」

「シャルがさっさと横で僕が書いてるペースに合わせてガンガン言ってくれるから凄く早く終わった。」

僕同様に謎の多い、楽譜も読めちゃう出来たにゃんこである。

「作詞作曲の修正も出来るのね・・そのにゃんこは。」

で、なんでテーブルをみて絶句されたかというと、こんもりとノート何冊分ですか?ってくらいの量の紙束が積んであるから。

歌自体は、フルバージョンでも5分を切るくらいで、短いモノは3分切るくらいで作ってる。

ジャンルも結構幅広くしてみた。

「それにしてもこんだけの量を良くもまぁポンポン思いつくわね。」

「気分が乗ればね。乗らないと中々出ないよ。後、セバスさんに最終調整してもらったら終わり。」

「セバスに?」

「うん。僕が作った歌をどういう人が歌った方がより良い感じになるかとか、どの楽器同士で演奏した方がより凄くなるかとかの調整が凄くセバスさん上手で理想的なの。」

「セバス・・そんなことも得意なのね・・さすがストリートライブで有名人なだけあるわね。」

通り名的なものはなかったらしいけど、世界を練り歩いてはギターを弾いて歌ってたらしく結構有名な人ではあるらしい。

通り名のないギターリストって感じでの有名人らしいよ。


「でも、この歌1曲分を渡すごとに金貨1枚渡されるのは高いと思うんだ。・・銀貨1枚でも高いと思ってるのに。」

「あぁ・・・どっちの気持ちもわかるわ。」

「何でこんなに高いの?」

「それはね・・それだけ利益が出るからよ。」

「出るの?趣味で書いてるだけだけど。」

「チェルニを基点として家の侍従たちが楽器の演奏を本格化し始めてチェルニが作った歌を演奏してセバスに選ばれた人が歌ってるんだけど、どうもかなり人気があるらしいのよ。それに、その歌を是非家も使いたいって音楽系のグループが結構な規模で言ってるらしくてねで、使用料を定期的にその歌関係で売れた利益の一部をもらう契約をするんだけど、想像以上らしいわ。」

ギルドを通じて僕が作った歌をセバスさんに渡してもらい、逆にセバスさんからの報酬やリリィさん家か等の手紙もギルドを通じてもらってるんです。

どうやら、手紙とかの紙束程度なら転移させることが可能な魔道具があるらしくそれを使ってるらしい。

人とか動物を転移させる道具は開発されてないよ。

生きて転送された人が未だかつていなくて危ないから。

で、その手紙でそう言う状態だって聞いたみたい。

ちなみに、僕宛の作った音楽の感想も届きます。

それらがちなみに僕が色々と新しく作る歌の作るときの注意点とか要望集的な感じで参考にしてるからかなりお役立ちです。

あのお屋敷にそれなりの人数がいてその人たちがおのおのが感じたモノを素直に答えてくれるから凄く参考にしやすいんだよね。


「そうなんだ。・・少しでも拾ってくれた恩返しになったら良いかな。」

「恩返しされる量が多くてこっちがもらいすぎよ。」

リリィさんが苦笑して僕にそう答えるけど。

「こういうのは倍返しが基本なんでしょ?」

やられたら倍にして返せってなんかで聞いた気がする。

「んー。合ってるような合ってないような。・・確かそれ、嫌がらせとか相手が攻撃してきた場合のやり返しの基本だったような・・まぁ、間違ってはいない気がするしまぁ良いわ。」

なんか微妙に僕が認識した意味違うっぽいけど、リリィさんが大丈夫って言ってるからまぁいいや。


で、歌を作るのに一区切りつけたところでリリィさんが最近毎日行っている奇k・・・儀式に戻りましょう。

「誰が儀式を行ってるって?それと、奇行って途中でやめてもわかるからね!?と言うか、あんだけ作ったのに一区切りなワケ!?」

相変わらず人の頭の中を見抜くエスパー属性持ちのツッコミマスターさすがです。

「うっさいわ」

一区切りって言ったのは、思いつけばどこまでも書けるから終わりがあるようでないから。

で、リリィさんが最近毎日行ってるのはシャルとの鬼ごっこのようなモノ。

実はシャルにタッチするという反射神経や動体視力に相手の動きを先読みとかするワザの特訓をするためだったんだけど、つい数日前についにきちんとタッチすることが出来たと思う。

なぜだと思うかというと、擦ってはいたけどきちんと触れられないという状態が続いてたわけだけど、シャルが1ステップ上にレベルを上げたから。

何をしたかというと、シャルが尻尾でリリィさんの手を弾いたり受け流し始めた。

シャルは相手の動きを見て感じて避けるのがものすごく上手いわけだけど、尻尾で相手の攻撃を受け流したりするのが凄く上手。

力が大して入ってないのに流されていく合気道みたいなやつ。


ちなみに、そのもう1つ上のステップはシャルが動き回ります。

最初のタッチの時はリリィさんが触れそうで触れない距離感を維持する感じで動き回ってたけど、その状態で尻尾で受け流すようになり、そして次のステップは行動範囲がリリィさんが走り回ったりしないと届かない距離感まで広がります。

まぁ、ある程度動き回れる部屋の中という限定的な広さだけど。


そこでだんだん行動範囲が広がっていったり、森の中みたいに隠れたりする場所がだんだん増えていくという感じでステップは上がっていきます。

そうして最終ステップにクリアするとどんなに潜んでてもどんなに素早く動かれても寝ぼけてても対処出来るようになるという感じです。

「ぜぇ・・ぜぇ・・それでチェルニが猫っぽい感知関係の技を色々と持ってたわけね・・。と言うか受け流すの上手すぎない!?」

「にゃう」(小娘がしょぼいだけ)

「・・・上等よ。今晩のお風呂では覚悟なさい?しっかりと洗った後湯船で抱き枕にした挙げ句肉球プニってひねもつけの刑よ。」

「がう」(リリィのご褒美にしかなってないし、シャルのお仕置きになってない)

「そっちも冷静なツッコミは不要よ」

「そうそう。ツッコミマスターにツッコミを入れたらツッコミ沼に引きずり込まれて帰って来れなくなるよ」

「がう」(それはリリィだけにして欲しい)

「あんたらうっさいわ。」

はーい。


とりあえず、お散歩がてら船の中を隅々まで探検しようと言うことになった。

まずは定番の甲版を船主から船尾まで一通り(当然屋上っぽいコンパス甲版もね)

「さすが豪華客船と言うだけあって凄く良い景色ね。」

「海まで凄く距離があるね。」

手すりにつかまって隙間から真下をチラッと覗いてみるけど凄く遠い。

それに、遠くを見るとどこまでも続く水平線とすっかり小さく見える僕たちがいた島。

「だとしてもさすがね、音がほとんどないわね。風もそれほど感じないし。」

「そう言うモノなの?」

「えぇ。普通は、船を動かす動力の音も凄ければ海は風が強いのに加えて向かい風も含むと風だけでもかなりのものになるわ。けど、そうならないようにいろんな魔道具を使っているのでしょうね。それだけでもかなり高価なものよ。」

「へぇー。その道具も僕たちが持ってきて放り捨てたあの大群で出来たんだから不思議なモノだよね。」

「あぁ・・確かにかなり私たちが強くなれたからあまり気にしてなかったけど、かなりランクの高いのだって普通に混ざってたわね。まぁ、当分あぁいうえげつないのはごめんだわ。」

「鍛えるためって感じでがむしゃらに魔物の大群という大群に首を突っ込みまくったもんね。」

「えぇ・・そのおかげでしばらく家のメイドたちに手負いの獣みたいな表情になってるとか言われたし。」

「うん。鍛えると言うより魔物を殲滅しないとって感じがすごかった。」

「まぁ・・・私の家って主にあの国を防衛して国民を守り抜くことを国に命じられている家系なの。だから、その血筋が影響しているのか困っている村や町の人たち・・あの国から多少離れててもあの国所属のところだとどうしても放っておけなくて。」

「ある種の職業病だよね。」

「そうね・・。けどまぁ、結果として強くなれたし守り抜くことも出来たから結果よしってことにするわ。」

「だね。・・・ねぇ、クリアネス王国って大国って聞いたけどどういう国なの?」

「そうね・・。実力者と正義の国?で、貿易が盛んなところって感じかしら。」

「後半は大国だからあちこちの国からいろんなのが集まるってわかるけど前半のは?」

「どう言えば良いのかしら・・。あの国って実力主義な連中が集まった国で。身分が上がればそれだけ知識も実力も優れているの。そして、大抵良くあるとか言われる国の闇ってやつが一切ないどころかあの国ではむしろ毛嫌いされてるの。」

「実力も知識もあるなら嬉々としてそういうのを除去してそう。」

「その通りよ。で、どういう感じで何百年何千年と国柄も一切変わることなく続く無自覚に正義の心を持った連中が増殖する国ってワケ。」

「なるほど・・。・・じゃあ、身分が高くて弱かったらあの国だと憎悪の対象なの?」

ちょっとだけ心配になって少し小声になって尋ねるとリリィさんは僕の気持ちを察して優しく抱きしめながら教えてくれる。

「大丈夫よ。例え弱くても心が穢されていなければ・・悪に染まらなければそれだけで大事にされるわ。体が弱く弱くても知識で補えば良い。それでもダメなら縁の下の力持ちとして雑用のスペシャリストになれば良い。強い人たちをただただ支えるために地味なことばかりをして表向きに活動出来ない人だっている。いろんな人がいるし、あの国では実力よりも悪の心を嫌い、正義の心をとても尊いモノとして扱うわ。あなたなら大丈夫。」

僕が今ここで第一王子だというのに国にいなくてシャルと2人で放浪している時点で国から捨てられた可能性を危惧してたことをリリィさんは察してくれた。

・・うん

「ありがと」

「えぇ。それに、あなたならあっちの通り名も含むとあの国だと大歓迎だと思うわよ。」

あっちの通り名というのは、義賊:殺戮猫キリングキャットである。

「あぁ・・あの国柄そのまんまの行動だった気がする・・今思うと。」

「ね?まぁ、なんとかなるわ。それに、あの国にとどまる必要なんてないし。私たちおとなしくその場にとどまるような性格してないモノ。」

「たしかに」

特に僕は放浪することが好きだし。

「さて、次を見に行きましょう?」

「うん。」

そして、甲版から中に入り、上から順に見て回る。

軽く運動するためのトレーニングルームに

ただただ遊ぶための広場

おしゃれな感じの酒場に

レストランにカフェ

お菓子屋さんにお弁当屋さん

魔道具や武具の修理店

刺繍から裁縫までしてくれる服関係のお店

広い広い銭湯・・と言うかスーパー銭湯

マッサージ屋さん

宝石店にアクセサリー店

薬剤店

劇場

と何というか・・・・

「冒険者から金持ちに道楽相手にしたのをあらかたぶっ込んだって感じね。」

「うん。しかも、換金するところもあるし、それらのお店で扱ってるモノならそこで買い取りもしてくれるみたい。」

「いたり付くせりね。」

「にゃう」

「専門店に売った方が普通よりも高く買い取ってくれるの?」

「おそらく、冒険者ギルドや換金する場を挟むと仲介料とかが発生したり、自分たちで価値とかの確認が出来ないからとかそういうのが混ざってくるのよ。」

「つまり、高い分は仲介料とかの抜かれなかった分がプラスされたのと、御贔屓にって次回は家のお店使ってねってアピール?」

「みたいなものね。店側としてもそういうのを売る相手が常連客になったらその分売り上げに直結するモノ。」

「なるほど。」

と言いながら、適当にざっと何のお店があるか見て回っただけだったけど、1か所だけ気になってちらちらしてみちゃう。

「宝石店に興味あるの?」

「宝石・・うん。」

「へぇ。チェルニってそういうの好きだったのね。」

「なんで?」

「いや、アクセサリーとか装飾品?とかって実用性のあるモノしか興味なさそうだったから。」

「まぁ、基本的に実践に役立つもの以外の無駄遣いはしないようにしてたかな。」

「ならどうして?」

「リリィさんと出会ってたぶん・・精神的に余裕が出来たからなのかな・・。そういうのに興味が出てきたんだ。」

「そっか。」

「宝石・・と言うより、加工されてない原石の状態のが個人的にはあれば欲しいかなって。」

「原石ね・・珍しいチョイスするわね。」

「なんていうかさ・・自然に出来たありのままの状態の方が、惹かれる気がする。」

「まぁ、確かに加工品は加工品で良いものだけど、原石の方がなんとなく気になってみちゃうのはわかるわ。じゃあ見に行きましょう?」

「良いの?」

「当然よ。それに、色々あってお金はあるんだから使わないとね。」

「うん」


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