その者、マイペースな天然系ボケなり ※挿絵あり
なんとなく、男性主人公と木刀にちなんだ話が書きたくなったので書いてみました。
淡い藤色がほんのりとかかった銀色の背中の中央まであるストレートロングの髪
ブルーゴールドストーンを彷彿とさせる色をしたぽんやりとした印象を持たせる瞳
健康的ながらも思わず守りたくなるほど華奢で細い体に白い肌
子供にしか見えないくらいの低身長と、童顔。
あらゆる光を吸い込みそうなほどに漆黒に染まった木刀・・・と言いつつもなぜか燃えず、折れない謎素材の武器であり、やろうと思えば鉄くらいなら切り裂くことも一応可能で、どこに置き忘れても持ち去られても、数秒後には真の使用者の手元に戻ってくる謎機能付きの謎が謎を呼ぶ木刀。
性別判断の難しいシンプルながらも洒落たデザインの白と水色で縁取りや柄の描かれたグレーの着流し
編み上げの焦げ茶のロングブーツ・・・ただし、足跡がなぜか人の靴跡ではなく肉球マークになってしまう謎の靴
そして、金の瞳に白い靴下の長毛種の黒い猫・・・ただし、尻尾が1メートルはあるが体格は通常サイズに見えるが、長毛種のため、正しくは子猫サイズ。
そんな組み合わせの2人?・・・1人と1匹はぼんやりと草原のど真ん中で大の字に仰向けになって空を眺めていた。
ちなみに、猫はへそ天状態。
「僕たちってこんなところで何やってるんだろうね?」
「にゃう」
猫にぼんやりと呼びかけるとそんなもん知るかというようなリアクションが飛んでくる。
「だよねー。というより、ここどこだろう?」
「にゃー」
こっちに聞くなというような反応を猫がする。
「それもそうだよね。・・・いつまでもここにいても変わらないし移動しようか」
「にゃう。」
「とは言ったモノの、どっちに行こう?」
のっそりと仰向けから女の子座りになってぼやぁっと首を傾げつつ周りをくるりと見渡すが、どこまでも続く草原しかなかった。
あるモノと言えば、様々な草と見上げるようなサイズの岩があちこちに転がっているくらいだ。
ちなみにこの2人は、迷子であった。
おまけに、目的もなければ希望もない。
ただし、手持ちにはなぜかブレスレットに変化する深掘りのフライパンと、水以外何も入らないが体積を無視してどこまでも収まる水筒くらい。
ちなみにこの水筒、どんな水を入れても謎機能により安全でおいしいお水に変える機能が付いている。
そこで猫がどこからともなく小枝を咥えて持ってきた。
とりあえず、小枝を受け取った後、
「にゃう」
「これで行く方向を決めるの?」
「にゃう」
「それもそうだね。」
ぽいっと自身の真上へ小枝を投げると風に流されちょうど自分の背中側へ飛んでいき、2時の方向を指すように地面に落ちた。
「じゃあ、あっちに行こうか。」
「にゃう」
猫は当然のようにその者の肩の上に飛び乗る。
そのときによって右肩だったり左肩だったりするのは気分らしい。
ちなみに、見た目の半分も重さのない謎の猫だ。
それと、この2人はなぜか意思疎通が普通に出来る。
理由はその2人自身がわかってないので説明出来るはずがない。
「さて、3日前に偶然見つけた川でたっぷりと水を汲んでたし、そこで魚を釣って干物を作ってたおかげで餓死しなくてかろうじて済んでるけど、さすがに水はともかく食糧が尽きそうだね。」
「にゃー」
「確かに僕と君が小食だったのと、無駄に体力を消費するようなことが起こらなかったのが不幸中の幸いだね。けど、一応太陽の向き的にはグルグル回ってることもなく進めてるはずだけどいつになったら人のいるところにたどり着くんだろう?」
「にゃー」
「だよね。さすがにいつまでも同じ景色だと飽きるよね。まぁ、君とこうしてのんびりとお話するのは楽しいけど。」
「にゃう」
「照れるって?僕もこういうときくらいしか恥ずかしくて言えないよ。」
「にゃー」
「え?今度照れさせてやるから覚悟しろって?えぇー。」
ちなみに、この2人10日ほど道なき道をタダひたすら歩き続けていた。
方向音痴ではないが、目的が皆無のため、先ほどのように適当に進む方向を決めて進んでいるため、まっすぐではなくジグザグだったりぐねぐねだったりものすごく適当に進んでいる。
運も良くはないが悪くもないため、餓死しない程度に川にたどり着いたりしているので特に苦労してなかったりする。
後は、猫による野生の勘でそこら中に生えている草で食べれそうなものを採取して食べたりもしていた。
その中に解毒に使えたり傷薬に加工出来たりするモノも混ざってたりするが、食べることに害はないので気にしないし、この2人は気付いてない。
10日より前は20日ほど森の中をさまよってたりするので、軽く30日は人と遭遇してないのは、面倒ごとに遭遇しないという意味で運が良いと言うべきか、それとも助けにも遭遇しないので運が悪いと言うべきかは考えないようにしているらしい。
そんな感じで更に10日ほど草原を気の向くままにジグザグにうねうねと進んでようやく、馬車が通ったであろう道らしきところにたどり着いた。
「やっと人っぽい証拠と遭遇したね。」
「にゃう」
「え?森の中でそれっぽい跡があったって?あれって、人というか人型の魔物の暴れた跡っぽかったんだけど。その本体とは遭遇しなかったけど。」
魔物。
それは、魔法と呼ばれることが存在するこの世界に存在するとても危険な生き物である。
一部の人はそんな魔物と仲良くなったり、従わせたりすることも可能だったりするらしいが基本的に出会ったら自身が相当な強者でない限りは問答無用で襲ってくることが多い。
姿形も生態も能力も数に特性も性別の有無も強さも非常に様々だ。
ちなみに、魔物を倒せば魔石と呼ばれる魔法を扱う際に必要となってくる魔力が結晶化したきれいな石と、様々なモノを落とす。
それは、骨だったり爪だったり肉だったりと、食料に出来たり武具に出来たりと姿形や特性に合わせたモノが手に入るため、目的に合わせて特定の魔物を探し、倒す人は少なくない。
それらを加工したり、売ってお金を手にする職業である冒険者はこの世界で最も多い職業だ。
とはいえ、出来高制のため収入が不安定なので副業として他の仕事をする人は少なくない。
つまり、何が言いたいかというと魔物遭遇していれば食料が手に入る確率が高いのにこの2人は遭遇しなかったので、こうしてひもじい思いに微妙になってたりする。
とはいえ、戦闘を逃れることが出来たことを喜ぶことにして現実の空しさから目を背ける。
「馬車の跡があるってことはどっちかに行けば、少なくとも町か村はあるよね?」
「にゃう」
「どっちに行くかって?さっきまで右にしたから左にしようか。」
ものすごく適当である。
しばらくフラフラと進みつつ通りすがりの木陰でお昼寝したりとものすごく気の抜けるような慌てるという言葉を捨て去った迷子二人だが、ふと猫の耳がピンと何かの音に気付いた。
「どうしたの?」
「にゃう」
「え?爆走する馬車っぽい音とヒャッハーなゲスイ声がいっぱいする?あっちから?」
尻尾で指し示す方向を見てみるとちょうど脇道がこの二人が進もうとしている方向で合流しそうな道だ。
そんな脇道をのぞき込んでみるとものすごく豪華ないかにもお金持ち!という感じの馬車とものすごくごつくてでかくて足の速そうな馬っぽい何かがその馬車をものすごい速度で引っ張っている。
「あの馬?・・凄く強そうだね。」
「にゃう」
「え?4割はサイで3割がアルマジロで残りが馬の特性を持った馬っぽい魔物なんだ?・・・割合的にサイが多いのに馬の扱いなの?」
「にゃう」
「そんなもん知らんって?・・そりゃそうだね。なんで僕が人で君が猫なの?って言われてるとの同じだね。」
「にゃう」
「あ、そうだった。ホントだ、あの馬車を狙ってものすごい速度で追いかけてくるゲスくていろんな意味で汚い人たちがいる。・・・と言うか凄く脚速いねあの人たち。」
「にゃう」
「悪事に染まってる気配がするけど、どんなことにも苦労があるって?・・そっかぁ。悪いことするのも大変なんだ・・悪い人は嫌いだから賛同はしないけど人生大変なことが多いって言うのは賛同する。」
「にゃう」
「どうするかって?んー、あの馬車の人を助けたらお礼に町までの道を教えてくれたりしないかな?」
「にゃー」
「そうだね。そのくらいなら教えてくれるよね。」
「にゃ」
「え?あ、馬っぽいのが脚をやられて馬車が止まっちゃった。あ、汚い集団に囲まれた。急いで助けた方が良さそうだね。」
「にゃ」
「うん。落っこちないでね。」
そう言うと猫はくるりと首に尻尾を巻き付け痛くない程度に服に爪を立てる。
「さて、悪い人って確か生きたままだと良い値段で売れるって聞いた気がするし、動けない程度にボコれば良いね。」
そう言って真っ黒な木刀を腰から片手に握って構え、ぐっと脚に力を入れて踏み込む。
そこに人がいれば、短距離ほど瞬間移動をしたと思ったかもしれないほどかなりの速度が出たが地面は靴跡でへこんだりしてないのはそう言う技術である。
「!?いきなりどこから手前ぇ現れやがった!」
「えぇっと、あっちから?」
汚い人たちの集団のボスっぽい筋肉むっきむきのザ山賊!って感じの人が御者をしていたおじいさんを馬車から片手でたたき落として足蹴にしかけてたのでその間に割り込むように踏み込んでみたらそんなことを言われたので素直にやってきた方向を指差す。
「そういうことを聞いてるんじゃねぇ!」
口にはしなかったが聞かれたので素直に答えたのに理不尽だと思う二人だった。
「ちっ!さっさとどけな。今ならお前らには手を出さねぇでやるよ。」
「それって、この高そうな馬車の持ち主さんたちを大変なことにした後で僕たちもやっちゃうって順番が変わるだけで見逃す気ないよね?」
「お、良くわかってるじゃねぇか嬢ちゃん。」
「・・・まぁ良いけど。どのみち襲われるなら無抵抗で目の前でおじいさんをいたぶられるのは趣味じゃないから全力で抵抗させてもらうね。」
「はっ!この人数差でたかが木で出来た棒っきれでか?」
「ボス!よく見たらその嬢ちゃん胸はないけど可愛い顔してますし、捕まえて楽しませてもらいましょうよ。」
説明するのが面倒だから言わないけど、胸があるはずがないし、お嬢ちゃん言うな。
「それもそうだな。それに高く売れそうだ。」
人数は30人ちょっと?
どの人も無駄にむっきむきで斧とかメリケンサックとかハンマーとか剣とか持ってゲスイ笑顔だ。
そこで、僕の後ろでおじいさんが僕に叫ぶ。
「お嬢ちゃん!わしのことは気にしなくて良い!すぐに逃げなさい!君のような心優しい他人を巻き込む訳にはいかん!」
凄く出来た人だ。
絶体絶命という状況で他人の心配をするなんて凄く良い人だ。
「そんなことを言われたら余計に逃げたくなくなりますよ。」
「だが!」
「それに、こう見えて僕は強いんですよ?」
「はっ!お嬢ちゃん1人で何が出来るってんだよ。」
「え?もうやりましたけど。」
「は!?・・はぁっ!?」
このボスの汚いおっさんは、わりと隙だらけだったため握ってた木刀で近くにいた部下を5~6人頭を殴り飛ばして意識を奪ってた。
ちなみに、こっちに関しては技術もへったくれもない。
手早く殴り飛ばしただけである。
「てめぇら!全員でかかれ!多少痛んでも構わねぇ!やっちまえ!」
敵全員「おう!」
「おじいさん、向こうに逃げれそうですか?」
「・・足手まといで済まないが両足をやられてしまってな。」
「あらら、じゃあそんな感じの戦闘に切り替えるので大丈夫ですよ。」
そう言うと、ほぼ同時に敵がほぼ全方位から襲いかかってきた。
とはいえ、全員が全く同じタイミングで襲いかかってきたわけではないため、一番最初に飛んでくる武器から順に手首を砕いていき、次の攻撃が来る前に手首を砕いた人たちの顎を木刀で殴り飛ばしたり脚で蹴り上げたりして敵の攻撃をその人たちを使って障害物として利用し、そこで隙が出来たところで殴り飛ばす。
右利きでも左利きでもなく両利きのため、そのときの状況に合わせて木刀を右手と左手に持ち替えて軽やかなステップを踏んで次々に殴り飛ばしていく。
そして、華奢な見た目に反してそれなりに強い脚力を持っているため木刀で攻撃する合間に蹴り飛ばす。
猫と様々なやりとりをしていたことが影響しているのか音や気配に異常に鋭いため、死角からの不意打ちもきちんと反応して反撃。
そして気付くとボス以外全員がやられていた。
あちこちの骨が砕けてたりするが全員死んではいない。
「なっ・・」
「なんと・・・あの人数差であっという間に・・」
「貴様・・何者だ。名を名乗れ。」
「名前かぁ・・・」
「んだぁ?名乗るほどの名はねぇとでも言う気か?」
「と言うより、僕って自分に関する記憶が皆無なので文字通り名前がわかんないんですよねぇ。」
2人「は?」
「ホントだよ?ね?」
肩にしがみついてた猫に尋ねるとそうだというようににゃーと鳴く。
「は?いやいやいや・・は?」
「ホントだよ?」
「ギルドタグでわかるだろ!?」
「何それ?」
「は?まさか持ってないのか!?」
「うん。たぶん記憶が無くなる前になくしちゃったんじゃないかな?手元にはそれっぽい首飾りとか板とかなかったし。」
「マジか・・・どこの田舎者だよ。と言うか、名前がないと色々困るだろ・・。」
「え?」
「え?って、困ってないのか?」
「うん。今こうして出会った貴方方が初めてそういうツッコミを入れた人間です♪」
にっこりと微笑みながら堂々と言ってみたら2人揃って珍獣を見るような目で見られてしまう。
「そんなに見つめたら照れますよ?」
いやん。
「いやいやいや。そう言う問題じゃないだろ。なんで記憶がないのにそんな脳天気なんだよ。」
「困ってないですし?ね?」
「にゃう」
「ほら、この子もそう言ってますし。」
「いや、俺は猫の言葉なんぞわからんし・・ってぇ!どうでも良い!とりあえず手前ぇはとっ捕まえてその可愛い顔を俺の手で恐怖とエロスで歪ませてやるよぉ!」
といきなりものすごく大きい斧を両手で振りかぶって襲いかかってきたので、木刀を両手で握り、ぐっと脚に力を入れて一気に懐を通り過ぎる。
数秒後、
「マジ・・・か・・よぉ。」
そう呟きながら汚いおっさんは意識を失った。
懐を守っていたであろう金属の鎧と、頭を覆っていた兜にはへこんだ後ではなく、砕けた跡が残っていた。
通り過ぎるときに脇あたりのお腹と頭の後頭部をしっかりと木刀で殴っておきました。
そして、木刀なのに剣と普通につばぜり合いしたり金属を殴りまくったのにヒビどころか歪みすらない。
とりあえず、脅威は去ったので木刀を腰に仕舞う。
「敵っぽい汚いおっさん集団はやっつけましたよ。大丈夫ですか?」
「あぁ・・ホントに勝ってしまった。ホントに助かった。どうお礼をすれば良いのやら。」
「あ、1つお願いしても良いですか?・・ってその前に治療ですね。・・何かあるかな?」
猫に尋ねると、馬車の中から若い女性の声が聞こえる。
「でしたら、緊急用の治療セットがあるのでこれをお使いください。」
豪華な馬車に乗ってたらしい、金髪碧眼のスタイル抜群の美少女がいた。
見た目と身長的に20歳は届かないくらいのように感じるけど、その服装は少々露出が凄いから谷間がしっかりと見ようとしなくても見えてしまうからチョイスする服を間違ってると思う。
「えぇっと、これどう使うんですか?」
セットと聞いたのにあるのは、ただの杖とサークレットの2つ。
なりきりセットみたいなモノだろうか。
あなたのハートになんちゃらーキャピ♪とかウインクしながら言うべき?
それよりも、あの男のロマンの塊の谷間から出てきたんだけど・・どうなってるの?
「このサークレットを頭に付けて杖に魔力を流すと杖をかざした相手に【回復魔法】と【治癒魔法】が発動するんです。まぁ、効果は弱いので応急処置程度ですが。」
「回復?治癒?」
何それと言いたげにきょとんと首を傾げていたので苦笑しながら美少女は教えてくれる。
「回復は怪我を治して、治癒は病気や毒などの状態異常を治すのよ。」
「へぇ、便利ですねぇ。とりあえず、やってみますね。」
言われたとおりサークレットを頭に付けるとすっぽりとちょうど良いサイズに勝手に変わった。
サイズもフリーサイズに勝手になってくれるらしいので、とことん便利だと思いつつ魔力を杖に流し込むとほわわんと柔らかな光がおじいさんに吸い込まれていく。
すると、痛々しい見た目に腫れ上がっていた両足は歩けないだろうがかなりマシな程度には治っていた。
「おぉ。」
とりあえず、これ以上は効果がないらしいので治療セットを返品して聞きたかったことを聞く。
ちなみに、返品した2つの品は再度谷間の中に仕舞われました。
女性のお胸には、夢と希望が詰まってるそうだけど一緒に謎の空間も詰まってるらしい。
「とりあえず、お礼代わりに教えて欲しいんですけど・・」
「良いわよ?何でも良いわよ?」
「どっちにどのくらい歩いたら町っぽいところはありますか?」
2人「はい?」
「えぇっと?道をわかって進んでたんじゃないのかしら?」
なぜか痛そうに頭を抱えながら美少女は尋ねる。
「その前に、ここに来るまでに何があったか経緯を教えてもらえませんか?先ほど記憶がないと聞きましたが。」
「えぇっと、ふと気付いたらこの格好でとりあえず気の向くままに適当に世界中を放浪してたある日、10日ほど森の中をうろつき、しばらく進んで草原にたどり着いて、そこから更に20日ほど適当に気の向くままに進んだところで馬車が通ったらしい道らしきモノを見つけて、なんとなくこっちの方向に進めばその内何かあるだろーって勘で進んでたら、追われてるっぽいこの高そうな馬車を見つけて助けたらお礼に道を教えてくれるかな?って欲に身を任せて今に至ります。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「?」
「不思議そうに首を傾げてるけど言っても良い?」
「どうぞ?」
どうして頭痛いという表情になってるの?
「通りすがりに魔物とか冒険者とかに遭遇しなかったの?」
「森に入ってからはしませんでしたね。魔物がいた跡っぽいのはいくつかありましたけど」
「記憶がないから名前がわからないのよね?さっきのやりとりは聞こえてたけど。」
「そうですね。」
「何で名前がなくて困ってないのよ。」
「話す相手はこの子だけでしたし、名前を呼ばなくても互いに意思疎通は普通に出来ますし?」
「少なくとも人と遭遇してるなら名前で呼び合ったりするでしょう?」
「お店の人とお客さんという仲でしかなかったので、呼び合わなくてもどうにかなりますよ?」
聞かれはしなかったけど、おまけは結構な頻度でしてくれたけど。
「・・と言うより、猫としゃべれるの?」
「しゃべれると言うよりお互いに言いたいことがなんとなくわかるだけです。」
「その猫とはいつから一緒だったわけ?」
「気付いたら一緒にいて、傍を離れないので記憶喪失になる前から一緒だったんじゃないかな-?と言うことにして一緒に行くことにしました。」
「その猫としゃべれるなら記憶をなくす前から一緒なのか聞けば良いじゃない」
「過去のことは振り返らない主義で、細かいことは気にするなだそうです。」
「気にしなさいよ。ってか、目的があって進んでたんじゃないの?」
「ないですよ?」
「記憶を取り戻したいとかは?」
「なくても困ってないので無理して戻したいとは思ってないですねー」
「何でそんなに強いのよ?魔法すらも使わずに木刀だけで、と言うか何で木刀なのに金属を軽く上回る頑丈さなのよ。」
「記憶がないので知りませんね。」
「何でやねん!!!」
ものすごく力強いツッコミをもらってしまった。
「えー」
ホントのことを言ったのに理不尽だ。
「えーじゃないわよ!迷ってるなら適当に進むんじゃないわよ!というか悩みなさいよ!!と言うよりも、人助けしておいて求めるのが道案内って!せめて町まで連れてってとかお礼に何かくれとかあるでしょう!!」
「いやー町まで連れてってもらうなんて贅沢なこと小市民な僕には敷居が高くて無理ですよ。」
「小市民って記憶がないんでしょう!?」
「あ、これまた一本取られちゃいましたね、あはは。」
「あははじゃないわよ!!はぁ・・・疲れた。」
「さっきまで大変だったんですもんね、しっかりとゆっくりと休んでください。」
「疲れた元凶はあんたのボケのせいよ!!ぜぇ・・ぜぇ・・。」
肩で息するほどの魂のこもったツッコミお見事ですとかさすがはツッコミマスターとか言ったら怒られるかな?
「・・・ツッコミマスターとかアホなこと言ったら、その場で全身ひん剥いて全裸にしてお嫁さんに行けない体にして私以外に何も感じられない体にするわよ。」
すっごいジト目でわりかし本気な雰囲気を醸し出しながらそんなこと言われた。
ジト目で見られても、喜ぶ性癖じゃないよ?
後、スタイル抜群の金髪美女にそんなことされるのは男女問わずご褒美な気がする。
「わぁお。考えてることばれちゃった。・・・でも、僕はお嫁さんにはなれませんよ?」
「・・正直者なのもアレね・・はぁ。あら?何か過去にあったの?」
「記憶がないので知りませんね。」
「めんどくさいツッコミはいらないわよ!で?」
ホントのことを言ってみたらさっさと揚げ足取らずに答えろと言いたげな目でにらみつけられる。
にらまれて喜ぶ性癖じゃないよ?
「だってねぇ?」
見てわかんない?と目で訴えてみるが通じなかった。
「ねぇ?じゃないわよ!ねぇ?じゃ!さっさと言いなさい。」
「やぁん。エッチ♪」
過去に、宿屋のおじさんがそう言ったら宿代でご飯代をサービスするよって言ってたからやってみたら大好評で宿代がタダになったことがあったし喜んでたから言ってみた。(その後妻っぽいおばさんがおじさんをボコってお詫びにクッキーくれたけどその場にいた男性陣は凄い顔がデレて同行者の女性にボコられてた)
その後、なーんちゃってと加えて言おうとしたらブチッと何かが切れる音がした。(発生源は美少女)
そしてふと気がつくとものすごい表情で、ものすごい勢いで馬車の中に強制的に引きずり込まれもの凄い勢いで馬車の扉は閉じられた。
・・・・・・・
しばらくして、驚愕!と言う表情で馬車から出してもらった。(手首はがっしりと握られ逃げられない)
「お嬢様?どうかなさいましたか?この方が無礼なことはしないとは思いますが・・・」
おじいさんには、良い人認定されました。
よかったよかった。
美少女に強引に引き留められるのはご褒美と思うけど、握られてる手首がちょっと痛いです。
せめて全身をやさしく抱きしめる感じにしてもらった方がうれしいです。
「え?・・・え?あ、あんた、そんなきれいな髪に肌に可愛い顔しておいて男!?・・・確かに下についてたし反応はキチンとあったし温かかったし」
「は!?」
おじいさんが嘘だろ!?って顔してこっち見てる。
このお姉さんが、淑女としてはダメな台詞はスルーしちゃうの?
それとも、聞かなかったことにしただけ?
「え?女だと言ってないですけど?」
「けど、あの汚いおっさんにお嬢ちゃん呼ばわりされたとき否定してなかったじゃない!」
「でも、肯定もしてないですよね?」
「だぁぁぁぁ!!!」
自分の頭をわしわししながら叫ぶ美少女。
ちなみに、全裸にされたときしっかり下半身にある男の象徴は見えてたしそれで男だとわかるはずなのにしっかりと抵抗もさせてもらえずに確認されました。
それと言い忘れてましたね。
よく女の子扱いされるので、否定するのも面倒で無視ししてたけど男です。
世間では男の娘というポジションが正しいと思う。
おまけで言うと、記憶喪失ゼロ日目?から数年は軽く経過してるけど身長も伸びる感じはないのでギリ子供?大人に辛うじてカウントされ・・・・・る?くらいの身長のままで、肌も髪もなぜか白いままで痛まないので見た目的には大人と認識される確率の方が低いです。
まぁ、そのおかげでお店で買い物したら大抵おまけしてもらえるけど服装から見た目、身長や体格、後声も男にしては高いとよく言われるので余計に年齢から性別まで判断が付かないと悩まされます(周りが)。
後、腰が細かったりお尻の形が良かったりするせいなのか何なのか胸があると言われたりするけど微乳でも貧乳でもなく男だから無乳です。(納得してくれなかったけど)
でも、信じられなかったらしく男だってわかったはずなのに定期的に男の象徴をのぞき込んだりするのはやめた方が良いと思う。
一応男としては、いろんな意味でご褒美かもしれないけど世間一般的には周囲からの知名度が変態さん認定されるからやめた方が良いよ?
何度確かめても変化はあるはずないから結果は一緒なのにね?
それと、どうしてひざに乗せられ、馬車に引きずり込まれてるのだろう?
そして、なぜ説明もなしで問答無用で連行されてるのでしょう?
それと凄い全身をくまなく撫で回されて色々と確認されてる。
「お嬢様・・・」
おじいさんは足以外は無事だから動かさなければ御者が出来るということで無理しない程度に馬車を進めてもらってるけど、御者のところから馬車の中に移動出来るように扉があるけどそれは今開かれてる状態です。
僕がいるから気にしなくていいということとおじいさんに無理させないように見るためと言う理由もある。
で、おじいさんが苦いものを嚙んだような顔をして美少女を見る。
「何よ。」
「膝に彼j・・・彼を乗せるのはもう何も言いませんが、服の隙間から異性の・・それを見てはいけません、はしたないですよ。」
今、彼女って言いかけなかった?
慣れてるし面倒だから訂正しないけど。
「だって、しょうがないじゃない。確かめでもしないと性別が迷子なんだからこの子。・・・確かめても性別迷子だけど。」
よく言われます。
そして、男の人によく愛の告白されて男同士はお断りと告げるお断りマシーンになってます。
後、公共のお風呂にそんな理由があって行ったことがないです。(正しくはスタッフさんに許されたことがない)
「いけません。それでしたら旦那様もお持ちでしたし、幼いころは一緒にお風呂に入ってた頃に見てたと思いますが。」
「何年前の話よ・・けど、お父様のはこう・・この子のとはなんか違うのよ。」
馬車に引きずり込まれ、説明も自己紹介もなく進んでいく間、ずっと膝に乗せられてるのは良いとして、僕の男の象徴から視線が服越しだったとしても離れないのはどうにかして欲しい。
なんか、落ち着かないし
「淑女は異性のそれは視線を向けることすらしないものですよ。男性が胸を凝視するようなものですよ。」
「男からは処刑ものよ。でも、女性からだったらセーフよ。だって、男からしたらご褒美じゃない。」
男に厳しい・・けど、否定できない。
どこかのお店のおじさんがそう言っておばちゃんに蹴り飛ばされてたし。
「はぁ・・・淑女教育を増やしておきますね。」
「えー!!」
ちなみにこの後、美少女は馬車に酔ったらしく僕の膝枕にすり替わり、そのまま眠ったためようやく落ち着くことが出来ました。
「はぁ・・・お嬢様が申し訳ございませんでした。」
「いえ、なんだかんだで町らしきところまで連れてってもらえるならその運賃ということで。」
「ホントに欲がないですね。」
「そうですか?十分強欲だと思ってるのですが」
「いえ、普通なら報酬に膨大なお金や貴重な品を要求したりするのが普通だったりするのですよ。場合によっては、お嬢様を嫁によこせとか」
「それは、過剰な例では?」
「・・・・割と多いですよ。」
どこか嫌そうに告げるおじいさん。
「・・世の中大変なことが多いですね。」
さっきのことと言い。
「そうですね。自己紹介ですが、貴方様は名前がわからないのでしたね。とりあえず私はセバスチャンと申します。セバスとでも呼んでください。そして、彼女はリリィ。リリィ・フォロスト。フォロスト公爵家令嬢ですよ。」
「公爵っていうのが、よくわかりませんけどとりあえず偉い人ってことで良いですか?」
「そうですね。貴族の中でもトップでありその上にいるのはせいぜい王族くらい・・そのくらい偉い人だという認識であなた様でしたら大丈夫です。」
「はーい」
この美少女は偉いけど淑女の皮をかぶった行動派(意味深)なツッコミ令嬢だと・・了解です。
「ですが、名前がないと不便ですね。・・ギルドにたどり着けばわかると思うのですが。」
「ギルドですか?」
「えぇ。ギルドで冒険者として登録すればギルドタグを発行してもらえるのですが、そのタグがあれば自身の様々な情報がわかるので記憶を取り戻す手助けになるのではないかと。・・ところで数年ほど旅をしていたのであればギルドでギルドタグを作ろうという考えは出なかったのですか?」
「なくても困らなかったんですよ。食べるものがあれば良いのでお店の人が物々交換してくれましたし、町に入るときもなぜか頭を撫でながら苦労してるんだなって言いながら通してくれましたし。」
「あぁ・・・」
どうして孫を見るおじいちゃんのような顔をこっちに向ける?
数時間ほどして町にたどり着きました。
ちなみに、ぼっこぼこにした汚いおっさんの群れは、町の門番さんにプレゼントしたところ金貨を3枚くれました。
どうやら、あの汚いおっさんたちはかなり悪いことで有名だったらしい。
あ、お金は一番下が銅貨で1枚でパンが1個買える。
銅貨が100枚にあると銀貨、
更に銀貨が100枚たまると金貨と言う感じ。
その上もいくつかあったりするけどなくても困らないからスルーです。
それと、金貨と一緒になぜか飴玉をくれたんだけどどうして?
・・割とあちこちでよくもらうけど、おいしいけど。
あ、やっと町っぽいところが見えてきた。
いやぁ、長かったねーって呟いたら、おじいさんがかわいそうなモノを見る目で僕を見てたけど気にしない。