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巨大化虎じろうの謎



王城からの馬車での帰り道。


ユスターシュは3冊目の恋愛小説(教本)を読んでいた。



昔から活字が好きで、読書家のユスターシュだったが、実は恋愛ものは古典以外はこれまで殆ど読んでこなかった。



理由は当然、これ以上自分の能力を呪いたくなかったからで。



けれど、いざ自分にも人を愛する幸せが舞い降りた今は、大いに共感もしくは反発しながら読む楽しさがあり。



前に「お仕置き」という言葉にヘレナが反応した理由も、2冊目の本で理解した。



純粋に読書を楽しみたいところではあるが、今のユスターシュには残念ながら時間があまりない。


結果、試験勉強の様にカリコリとメモを取りながら読み進めている訳である。



正直、女性が喜ぶプロポーズの言葉を知りたくて読み始めただけだった筈が、それ以外の場面でも非常に勉強になる点が多い事にユスターシュは気づいた。



例えば、1冊目の本に出て来たヒーローの友人、彼の恋人への贈り物のチョイスの仕方だ。


高価な宝石やドレスなどをドカンと偶に贈るより、小さな小さな贈り物を日々贈る方が心に響くとか。



後は、2冊目のヒロインの幼馴染みの青年、彼は当て馬扱いなのだが、ユスターシュにとってはヤンデレヒーローよりも好感度が高かった。


結局はヤンデレに大好きな幼馴染みを持って行かれてしまうが、当て馬くんはその後に出会った女性と幸せになる。

その時、彼は自分の気持ちを表す花言葉の花を小さな花束にしては、その女性に贈るのだ。


お陰で、ユスターシュも少しだけ花言葉の知識がついた。



そして、そしてだ。



ただ今、絶賛初恋中のユスターシュは、早速本で学んだ事を実践してみようと思い立つ。



という訳でユスターシュが今、手にしているのは白いジャスミンの小さな花束。


花言葉は『あなたと一緒に』だ。


念のため、メッセージカードも花束に添えた。伝えたい気持ちが伝わらなければ意味がない。これもまた、その登場人物が言っていた事だ。



「ふう・・・」



ユスターシュは大きく息を吐いた。


23歳の大人だと言うのに、さっきからユスターシュの心臓はバクバクとうるさい。


本命のプロポーズの言葉はもっとリサーチを重ねてからにするとして、まずはちょっとでもそれらしい雰囲気を作りたい。そしてヘレナに異性として意識してもらうのだ。


『つがい』だからではなく、好きだから『つがい』としてでっち上げたのだと。




「よし・・・」



馬車が自邸に到着し、ユスターシュが花束を手に降りようとしたその時。



エントランスに出迎えに来ていたのであろうヘレナの心の中の映像を、ユスターシュはうっかりキャッチしてしまった。




自邸の屋根よりも大きくなったジャイアント虎じろう(覚えているだろうか、ヘレナが拾って飼い猫にした例の子猫ちゃんである)が、デデンと寝そべっている。

そしてその巨大化した虎じろうの前で、豆粒の様に小さく見えるロクタンがべこべこと土下座をしているのだ。




・・・え、なに? 


ヘレナに何があったの?




さっきまでのロマンチックな気分など、余裕で吹き飛ばすカオスな映像。


うっかり馬車の中にジャスミンの花束を置き忘れたユスターシュに、今回ばかりは罪はない。




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