七時間目 限界日常生活者
ただ困らない程度のお金があって特に大きな出来事もなく平凡に過ごすことができるならそれで充分幸せ、という話をよく聞く。つまり普通の生活を求めているということだろう。また、普通のことを普通にやるのはとても大変だという話もかなりよく聞く。
たしかにその通りだと思う。僕は男性+ある程度の年齢=おっさんというだけで平凡に過ごすことすらままならない。
差別のない社会なんてものは建前だ。実際にはおっさんは迫害していい、という風潮がまかり通っている。他の差別問題と同様に、本人が望んでおっさんになっているわけでもないのに性別と年齢を理由に不当な扱いを受けている。
そうでないというなら勘違いした自称フェミの方々が主張するおっさんに対しての言い分をそのままひっくり返しても問題ナシということになる。ちなみにもちろんちゃんとしたフェミさん達についてはむしろ歓迎。というか誰に対してでもいい人でありたいものだ。
「全てのおっさんはキモい犯罪者なので滅びろ」
「あたしが不快に感じたんだからあんたがどういうつもりだろうとそれはハラスメントだ」
「すれ違うのが怖かったから躊躇なく通報した」
同じことをおっさんが若い女性に対して言ったら即座に大問題となるだろう。そしてこれらの意見をよく考えて欲しい。仮にこのおっさんが僕だとして、僕は何かしているだろうか。ただ生きているだけだがそれすらも許されない。それが現代社会におけるおっさん差別の現状だ。
人助けしようにも困っている人が女性だった場合、声をかけた時点で通報される可能性もある。だからといって見て見ぬフリをしたらそれはそれで「これだからおっさんは」となる。
やはり平等なんてものは口先だけだ。みんな胸の内ではおっさんとは関わりたくない、忌み嫌われる存在なんだろう。
どこかに出かけた時、当たり前のことだが家に帰るだろう。事故の無いように気をつけて、なんて言われたりする。小さい子供だと怖い人がいたらすぐ大声を出して逃げましょう、なんて教わったりもする。
いいか、僕はただ家に帰るだけだ、誰もが普通にやる行動だろう。具体的には家に向かって歩いているだけだ。なのに何故前を歩いている女児がだんだん早歩きになるのか。そしてそのまま走っていく。ただ走ったのではない。走って逃げた、という言葉がぴったりな動きだった。
繰り返すが僕は歩いているだけで特に何もしていない。強いて言えば気遣って視線を合わせないようにしていたぐらいだ。
僕自身もいわゆるおっさんがやりそうな犯罪、というのは思い浮かぶ。「こういう犯罪は大抵おっさんである」というものは確実に存在するとは思うのだ。
だがそれは全てのおっさんが犯罪者である、ということにはならない。ごく一部の悪質なおっさんの話であって、少なくとも僕はそういった犯罪とは無縁だと自負しているしできる限り気遣いもしているつもりだ。
もしおっさんがみんな犯罪者やその予備軍だったとしたら、例えば電車内の全てのおっさんが痴漢ということになる。そんなわけがないだろう。そんな電車、アダルトな動画でも見たことがない。必ず無関心を貫く一般客がいるはずだ。
人権を与えられたおっさんの代名詞としては職人ではないだろうか。業種は問わないが、厳しく優しい職人は少なくともフィクションの中では人権だけでなく人望も人気もあったりする。僕としてはこの方向を目指していきたいと思っている。
努力はしているが、できているかどうかと問われれば自信はない。厨二病はいつまで経っても治らないし思春期もまだ終わった自覚はないのにどんどん寿命だけが縮まっている感覚だ。厨二病も生活習慣病なので、病気とうまく付き合っていくしかない。
交差点で食パン女子とぶつかって紆余曲折あって恋をする、というシチュエイションに今でも憧れはある。上記の通り初手からアウトなので妄想するしかないが、昨今では妄想するだけでもハラスメントだと言われたりする。
しかしながら可能性がゼロでない限り身嗜みを整える努力も怠らない。具体的にはちゃんと毎日風呂に入る、とかそういったものだが。ダンディでアダルトなアロマは耳の裏から発生するらしいので特に念入りに洗っている。
新陳代謝の都合で本当は若者のほうが足が臭い確率は高いのだが、風呂に入らないおっさんと不摂生な食生活のおっさんのせいでおっさんの足は臭いという風評被害もある。これに対応するためにもしっかり足も洗うのだが、慣用句としての意味ではおっさんから足を洗うことはできていない。
このように、平穏に過ごしていきたいだけなのに社会の風潮により日常生活に限界を感じている層がたくさんいるのだ。憤りを感じてもその愚痴を吐き出すことすら社会的に禁じられている。
衰えつつある脳でこの難しい状況でいかに生き抜いていくかを考えつつ、社会で生きていくために通常必要なことも考えていかねばならない。かといってボケ防止になるかといえばそんなこともないので心身ともに衰えていく自分に対する恐怖も抱えていかなければならない。
とにかくそんなわけで自分がおっさんであることに対する愚痴をここに吐き出せてスッキリした。明日からもまた頑張って生きていくことにしよう。
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