三題噺第28弾「月」「竜」「最初のトイレ」
“月”がきれいですね。
これ誰の言葉だったっけ?
アイラブユーを訳すときに日本人が『愛しています』なんて言葉は使わない。言うのは『月がきれいですね』と訳したのは覚えてるんだけど、誰だったかな?
おっともうこんな時間だ。早く支度をして学校行かなくちゃ。
“最初のトイレ”を済まして、朝食を食べて学校へ向かった。
「おはよう」
教室で友人に朝の挨拶を交わす。
「おはよう」
友人から朝の返事が返ってきた。
「ねぇ、月がきれいですねって誰の言葉だったっけ?」
「月がきれいですね? そんな言葉しらねぇぞ。俺は“竜”が出てくるようなファンタジーしか読まないからな」
「そっか」
友人は知らないようだ。国語の先生にでも訊こうかな。
「先生、月がきれいですねって誰の言葉でしたっけ?」
五十歳くらいの頭が少し禿げかかった男の先生に質問する。
「なんだ小林。誰かに告白でもするのか?」
「しませんよ、ただ気になっただけです」
「その言葉は夏目漱石だな」
「夏目漱石ですか、ありがとうございました」
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