第4章 プロローグ
ーーんっ……うおえぇぇぇ……
ーーラパン、大丈夫か?
オリエは、振動を与えないように、優しくラパンの背中をさする。
ーーう、うん……ありがと……ゔっ……おえぇ……
――おえぇぇぇぇ……
ラパンとは逆の方向からも、嗚咽と、それに遅れて水っぽい音が聞こえた。
ーーマルティさんもですか!? しっかりしてください!
マルティの背中をソレイユが力いっぱいさする。
ーーるせぇ……はぁ……はぁ……
ーー2人とも一体どうしたというのでしょう?
唐突に嘔吐した2人を見て、ソレイユは頰に手を当て考え込む。
ーーいやぁ、あれを見たら仕方がないでしょう。正直、私もいっぱいいっぱいです。
ガテムレックスは口元を押さえながら、今いる路地裏から通りに目を向けた。
5人の視線の先、この街のメインストリートには、"異形"が闊歩していた。
この世の生物とは思えない"異形"が。
神の幻獣化を見ている彼らでさえ、その容貌は異質なものだと認識した。
"異形"は一体ではなかった。小さいものでも3メートルを超すそれらの身体の様子は様々で、イモムシのような昆虫型から、ヒキガエルのような両生類型など幅広い。
しかしそれらに頭は無く、代わりに赤や紫のぬめった触手があちらこちらと蠢いている。
個体によっては頭以外の部位からも、内臓が飛び出たようにうねうねとした異物が暴れていた。
だが、彼らの脳が、身体が、受け付けなかったのは何も見た目の話だけではなかった。
"異形"共の異質な動き。
その生命体は"共喰い"を、していた。
どうやら知能は低く、本能のみで行動しているらしい。
触手同士が奏でるぴちゃぴちゃとした水音。レンガ造りの建物を這い回る爬虫類型の魔獣。それを喰らう、鳥類型のそれ。辺りに立ち込める生臭さも相まって、オリエ達は、まるでこの世の終末を見届けているような気分だった。
彼らの脳が、視覚から、聴覚から、嗅覚から、抑え込めようもない恐怖を知覚する。
脳髄が食い荒らされるような寒気を感じる。
ーーーーーーーー!!
一体何処から声を出しているのか、"異形"の1つが絞り出すような咆哮を上げ、その場に倒れ伏した。
オリエの視線の先には、胸元を大きく開いた黒いシャツにスキニーデニムの1人の女。
長い黒髪を後ろで1つに纏めた彼女は、異様な光景の中にあっても尚、清廉な雰囲気を纏っていた。
彼女の手には、一振りの刀。鍔は無く、細身の刀身と柄は透き通るように青く、煌びやかに月明りを反射している。
まるで薄暗い森の中を舞う瑠璃のように、彼女は"異形"を斬り伏せていく。
青く輝く刀は、羽ばたく翼のように。
彼女が刀を振るう度に現れる青薔薇の花弁は、舞い散る羽根のように。
おぞましい視界を静寂な濃青の世界へと染め上げていく。
オリエはその場に立ち竦み、只々、彼女の幻想的なショーに見惚れるのみであったーー。
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あらすじを章ごとにしてみました。
また、キャラ設定①(オリエ、ラパン、マルティ)を活動報告にアップしました。
第3章までの各キャラの設定をまとめたものです。
随時更新予定です。
次回は今週土曜(6/6)18時頃の更新予定です。よろしければご覧ください!




