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第3章 第15節『転移者と雷神の密会』

 アヴニール王国、大通り。


 夜も遅くなり人通りが少なくなってきた道を、オリエとマルティは歩いていた。


 道端に設置された街灯のおかげで、人が少なくともあまり寂しさは感じない。

 この世界に来る前に住んでいたところと比べたら流石に薄暗いけどな、とオリエは思っていたが。


 シャンソン宅での夕食会が終わった後、オリエ達は一度宿に戻ったが、時間を示し合わせた2人は数分後に外で落ち合った。


「悪りぃな、こんな夜遅くに」


「いいよ。みんながいたらできない話か?」


「んー、まぁそんなとこ」


 マルティはオリエに視線を合わせず、歩を進める。

 暫しの無言の後、彼女は口を開く。


「俺……さ、自分が何のために戦ってんのかよく分かってねぇんだ」


「戦うのが楽しいんだと思ってたが」


「あーいや、楽しいってのは間違っちゃいねーんだが……」


 マルティにしては珍しく歯切れの悪い回答を聞いたオリエは、夜空を見上げ、頬をかいた。


「"俺は俺のために戦う"って俺、お前に以前言ったよな? あの時はそれが本心だったんだけど、今はそうじゃねーなってなったというか……」


「……その時は何が自分の目標だと思ってたんだ?」


「あの時は……唯一神になること。神の国のてっぺんに立つことだ」


「今は違うのか?」


「……死んだ親父との誓いなんだ、それは。親父はあの国を変えようとしてたから、国を変えるならトップに立つしかねぇかなって。……けど、俺、てっぺん立ったところで自分が何したいか分かんねぇなって気付いちまった」


「やりたい事とかないの?」


「親父は、不老不死のために下界の人間を殺すことに反対してた。だからそれを無くすために動いてた。けど俺は……それのためには動けねぇ……。で、それに変わる何かも未だに見つけられない……。いや、そもそもてっぺん立つこと自体にあんまり興味が湧かねぇ……」


 マルティは立ち止まり、オリエを見た。

 オリエの目には、力無く笑うマルティが映る。


「……お前のこと見てて気付いちまった。死ぬかもしれねぇ時でもお前がラパンのために立ち上がれるように、俺はその誓いのために立ち上がれるかって思った時に……あぁ無理だな、ってさ」


「マルティ……」


「なぁ、オリエ。俺はダメな娘だろうか。親父との誓いも守れねぇ出来損ないの娘だろうか。いや、娘どうこうじゃねぇ……(ひと)としてダメだよな……俺は……」


 マルティは俯く。

 オリエの目には、顔に掛かるくすんだ金髪の隙間から、街灯に照らされて光る何かが見えた。


「親父との約束……か。俺はそういうのなかったから、羨ましいとは思うぞ」


「……お前の親父はどんな奴だったんだよ」


 か細い声がオリエの耳に届く。


「俺の親父はなー、激しい人だったかなぁ」


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


 ーーオリエは過去を思い出してみる。


 自分はクローゼットの中にいる。


 扉の隙間から外の光が漏れ出していて、そこをぼーっと眺めていた。


 光の向こうでは低い怒声と高い怒声が響きあう。


 さらにその奥でもっと高く、耳を突くような喚き声が反響している。


 自分に妹は助けられない。

 力では親父に、口では母に勝てなかったから。


 それよりもっと前、離婚はしないのかと聞いたことがある。


 お前がいるのにできるわけないだろ。それが答えだった。


 自分さえいなければ、この2人はもっと幸せな人生を歩んでいたのだろうか。

 そう思ったことを思い出す。そしてやっぱり同じ結論に至る。薄暗いクローゼットの中の自分。


 自分にはなんの力もなかった。だから、何もやりたいと思わなかった。

 それはこの世界に来たその時まで、ずっと変わらなかったーー。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


(マルティも同じなのかな……。無力感、無気力感……以前の俺と……)


「……親父はあんまりいいやつではなかった。まぁ、なんだ……ちょっと聞いてほしいことがある」


 オリエは、自らの過去をマルティに話すことにした。

 そんなことを話すのは初めてだ。ラパンにだって言ったことはなかった。

 なぜそれを話そうと思ったのか。オリエ自身にもわからない。


 マルティに話す。


 両親の仲が悪かったこと。

 毎日、怒声が飛び交う家庭だったこと。


 自分の身体が大きくなるまでは、親父に殴られたり、窓から投げ飛ばされそうになることが日常茶飯事だったこと。

 母は毎日ヒステリーを起こして、思い通りに自分を操ろうと、言葉の刃物を振りかざしてきたこと。


 自分にとってそれは当たり前のことで、これが普通の家庭だと思い込んでいたこと。

 友達の親からも立派な両親と言われたから、自分は恵まれているんだと思い込んでいたこと。

 両親が世間体には人一倍敏感であったことにいつの日か気付いたこと。


 そして、そんな家庭から妹を()()()ことができなかったこと。


「ラパンと出会うまではさ、何にもやる気でなくてなぁ。友達ができても長続きしないし、根本的に人としてダメなんだなって人生に諦めてたっつーか……。まぁ、そんな感じだ。だから……マルティにも俺にとってのラパンが現れたら、きっと幾らでも変わるよ」


 オリエの話を黙って聞いていたマルティは、ジッとオリエの目を見る。

 それは、真剣な眼差しだった。


「俺の親父は俺が12の時に死んだ。下界にいた時に事故で死んだって聞いてる。詳細はわからねぇが」


 マルティは、オリエの言葉への返答ではなく、自らの過去を話し始めた。

ご覧いただきありがとうございます。


良かったよーという方はブクマ・評価いただけますとめっちゃ嬉しいです。


重いですね、今回。"世界に生きづらさを感じているマイノリティな登場人物が自らの目標(幸せ)のために頑張る"というのがこの話のテーマの1つなので、ご容赦いただけたらと思います。


気分を明るくするために元気になれる言葉を連呼しましょう。


男の娘のち〇ちん! 男の娘のちん〇ん!! 男の娘のちんち〇!!!


……ふぅ。元気出た!!(小学生か……)


次回は明日(5/30)18時頃の更新予定です! よろしければご覧ください!

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