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第3章 第5節『転移者たちと魔法適性』

 魔法学園中庭。


 講師であるシャンソンの前に、オリエ、マルティ、そしてソレイユの3人が立っている。


「さて、本日から魔法実技の講義が始まるわけだが、まずはそなた達の決意を聞いておこう。やる気がなければ、どれほど形だけの努力をしたところで無意味だからな」


 3人を見渡したシャンソンは冷静な口調でそう話した。


「当然強くなるためだ! 俺は、ガルダを倒し、最高神を倒し、唯一神になる。そのための力を手に入れる。だから、今の俺は寧ろやる気しかねぇぞ」


 初めに口を開いたのはマルティだ。

 決意に満ちた紅い瞳でシャンソンを見つめる。


「ふむ。我の家を出たあの時よりは、マシな面になったようだなマルティ。期待しているぞ」


「ったりめーだ! 言っとくが、テメェも俺の討伐対象に入ってっから気ぃ抜いてんじゃねぇぞ?」


「ふふ。楽しみにしている。まぁ、首輪がついている時点で勝負にならんと思うが」


「あ……」


「忘れていたのか? 頭も獣並みとは恐れ入ったぞ、我が下僕よ。まぁ、そなたが我に跪き、忠誠を誓うというのであれば、外すのを考えてやらんでもないが」


「誰がテメェなんぞに跪くかよ……!! いつかぜってぇテメェを殺す!!」


「ははは。まぁその時を楽しみにしていよう。……では、そなたはどうかな? ソレイユ」


「私は、救世主(メシア)のお役に立つためです! それ以外にありません!」


「救世主……?」


「救世主はオリエ様です! 私を救ってくださったオリエ様のため、私は神を焼き尽くします。そのために強くなります!」


 シャンソンは何のことか分からず、オリエの方を見る。


「あー、いや、なんというか……そういうことになってんだ。後で詳しく話すよ」


「ふむ。まぁ、意志が固いことは伝わった。ガルダとの戦いの映像を見たが、中々の火力だった。マナの使い方を覚えればさらに伸びるだろう。期待している」


「ありがとうございます! よろしくお願いします」


 ソレイユは深々と頭を下げた。


「ガルダ戦の映像?」


 オリエがシャンソンに尋ねる。


「あぁ。ガテムレックス殿が撮影していたものだ」


(あの騎士隊長、俺たちがやられてたの黙って見てたのかよ……)


「……ハジメ。そなたには強くなりたいという意志はあるのか?」


「俺は……もちろん強くなりたい」


「神を怯ませるほどのギフトを持っているようだが、あれ以上の力を欲すると?」


「欲する。あれは俺1人の力じゃない。神と一対一で戦える力でないと意味がない」


「ふむ。あの時から覚悟は変わっていないようだ。ラパンテッド様も良い出会いをした」


「シャンソン……」


「では、早速講義を開始する!」


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


「まずは、基礎のおさらいだ。魔法とはどうやって使うものか、ソレイユ」


「はい! 大気中のマナを取込み、自身のフィルターを通して再び外界に放出することで魔法となります!」


「完璧な回答だ。次に、ギフトとの違いをハジメ、答えられるか?」


「えーと……ギフトは先天的に持つ各人の才能みたいなもので、ある刺激によって偶発的に発現するもので……、魔法は修練によって後天的に身に付けるもの……だよな?」


「その通り。ちゃんと勉強しているな。ギフトも理屈としては魔法と同じだ。大気中のマナを利用している。しかし、ギフトには魔法には無い特徴がある。マルティ、わかるか?」


「あ? 俺はギフトなんざ使えねぇし知らねぇよ」


「自分が使えなくとも知ることには意味があるぞ。後で補習するから家に来い」


「んな……!?」


「……まぁいい。話が進まんから、我が話そう。ギフトには、さらに分けてリアルギフトとフェイクギフトの2つがある」


「それは初耳だな……」


 オリエとソレイユは熱心に耳を傾ける。

 マルティは大きく欠伸をした。


「リアルギフトとは、どれだけ修練しても身につけられない魔法に等しい。つまりは、発現した者のみが扱える能力のことだ。現在の魔法体系では解明されていない能力、と言い換えることもできるな」


 ちなみに、とシャンソンはオリエに目を向ける。


「ハジメの"(オンブル)"はこれに当たる。それはそなたにしかできない芸当だ」


「俺だけの力……」


「次にフェイクギフトだが、まぁ言うなればリアルギフトの逆だ。すでに現在の魔法体系に含まれている能力だな。こちらは、努力さえすれば発現者以外でも使用することができる。ソレイユの"英雄の灯火(ラ・ジャスティス)"はこれに当たる」


「私が(フェイク)?」


 ソレイユが怪訝な表情を浮かべる。


(まずい! 余計なことを言うなシャンソン! 学園が火の海になる!)


 オリエはシャムルでの大火災を思い出し、腕をワタワタと動かした。


「フェイクとは言っても、ギフトは基本的に発現した時点で出力がかなり高い。そなたの能力も上級魔法レベルだ。それに、フェイクギフトは鍛えることで後天的にリアルギフトに変わることもある。そなたはまだ発展途上なのかもしれぬな」


「なるほど! 私の力はまだ覚醒してないだけ……!」


(助かったー! ナイスフォローシャンソン!)


「……そういや、ラパンのギフトはどうなんだ?」


「ラパンテッド様の場合は……難しいな。どちらとも言える……と思う。10人に分身することや身体強化、感覚共有、位置の入れ替え等々、それぞれは現在の魔法体系に含まれるが……それを全て同時に発現するというのは例を見ない。明確な回答が出来ず済まないが、専門家でも意見が別れるところだろう」


「そうか……。さすがラパンだな! 後で教えてやろう」


 オリエは、"明確に分けられない"というところが、ラパンらしいなと思い、何故か少し嬉しかったのだった。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


「ではこれからそなたらの魔法適性についてテストを行う」


「魔法適性……。得意な系統は何か……みたいなもんか?」


「そうだ。マナを放出する時に通すフィルターの質は人によって違う。それにより、どの魔法が適しているかは各人によって異なるのだ」


「たしか、魔法は数多くあれど、その根源は大きく分けると7つほどだと図書室の本に書いてありました」


 シャンソンはソレイユに感心している。


「そなたは素晴らしいな。その通り。火、風、水、土、雷、光、闇の7属性だ。これらの組み合わせが数多の魔法をつくりあげている」


「その7属性のどれに適性があるかを調べるテストってわけか」


「うむ。ちなみに我は闇だ。ラパンテッド様は光。努力次第で他の属性のものでも使えるようにはなるが、短期間で習得するのであれば、適性のあるものを学ぶことがベストだろう」


 そう言ったシャンソンは、ソフトボール程の大きさの透明の球体を取り出した。


「これは魔法適性判別球(サーチボール)と言う。これを握り、意識を集中すると自動的に身体からマナを放出させ、対象者の適性に沿った現象を起こすというマジックアイテムだ」


「「「???」」」


 3人は首をかしげる。


「まぁ、実際に見てもらった方が早いだろう」


 シャンソンはその球を握りしめる。

 透明の球が黒く変色したかと思うと、黒い霧が発生し、シャンソンの手が見えなくなった。


「闇の適性がある場合は、このように黒い霧が発生する。そなたらもやってみるが良い」


「じゃあまずは俺だ!!」


 マルティが球体を握る。


 ーーーパチン


 透明な球の中で何かが弾けたかと思った瞬間、線香花火のように、黒い(いかずち)を放った。


「雷、だな。しかも黒い雷とは珍しい」


(やはり神は人間とは異なる力を持っているのか……?)


「雷! いいね! かっこいいじゃねぇか! よぉしお前ら、今日から俺はただの神じゃねぇ! 雷神だ! 雷神マルティコラスだぁ!!」


 マルティは、バチバチと黒雷を発する球体を掲げ、得意そうに宣言する。


「「雷神……マルティコラス……」」


((かっこいい〜!!!))


 オリエとソレイユは目を輝かせて、マルティを羨ましそうに見つめていた。


「次は私です! はぁ!」


 ソレイユは球体に意識を集中する。


 ……と、一瞬で球体は消し炭になった。


「あれ?」


 何が起きたか分からず戸惑うソレイユ。


「……出力が強すぎたのか……凄まじい火力だソレイユ・クーシャン……」


「すすす、すみません! マジックアイテム壊してしまいました!!」


 慌ててソレイユはシャンソンに謝る。


「いや、大丈夫だ。スペアは準備している。……そしてそなたはやはり火の属性のようだ。それに潜在能力も凄まじい」


「ほんとですか!? やったー! ありがとうございますシャンソンさん!!」


 ソレイユは満面の笑顔ではしゃいでいる。


「次は、俺だな」


 オリエは覚悟を決め、球体を手に掴んだーー。

ご覧いただきありがとうございます!


R18に該当していると思われる箇所を改稿しました。

これはこれでオリエとラパンの関係が甘酸っぱいものになってよかったかな?


そこが良かったのに!って方、もしおりましたら申し訳ございません。

これからは、直接的な表現に気を付けながら書いていきたいと思ってます。


中身的には、今回はある意味説明回でしたね。魔法やらギフトやら。

次回は若干話進みます。明日(5/20)21時頃更新予定です。よろしければご覧ください。

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