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第3章 第2節『神と村娘と女子会』

 ディオン大通り。喫茶店"アントワネット"。


 時間はやや遡り、午後3時。


 ともに20歳前後程の女性2人が、窓際の席で高さ30㎝はあろうかというストロベリーパフェに挑戦している。


「すごい!! こんな大きなパフェ初めてです! 村から出てきて良かったぁ」


 目をキラキラと輝かせる茶髪の女性はソレイユ・クーシャン。

 2か月ほど前に田舎の村から出てきたばかりの彼女は、まるで子供のようにはしゃいでいる。


「こいつは食いごたえがありそうだ」


 色気より食い気と言わんばかりの金髪紅眼の女性はマルティコラス。

 甘いものに目がない彼女の目は、キラキラというよりもギラギラと光り、口からは大量のよだれを垂らしている。


 15分と立たずにそれを平らげた2人は、紅茶を飲みつつ、優雅に会話を……


「まさかマルティさんが来てくれるとは思いませんでしたよ」


「お前がしつこいからだろうが。来るつもりなんて毛頭なかったっつーの!」


 楽しんでいるわけではなさそうである。


 この"女子会"を企画したのは当然ソレイユだ。

 戦闘狂気質のマルティはこの手のイベントにはまるで興味関心がなかった。


 だが、一度決めたら折れないソレイユに根負けし、いやいやついてきたのだった。


「けれど、パフェは美味しかったでしょう?」


「そりゃあ、パフェはそうだけどよ……。ってか、女子会ってのは女同士でパフェ食う会なのか?おれこういうのしたことないからわかんないんだが」


「それだけじゃないですよ! 女子会といえば、そう! "恋バナ"です!!」


 マルティは飲んでいた紅茶を噴き出した。


「こ、恋バナァ!? 俺がそんな話持ってるわけねーだろうが!!」


「えー。好きなタイプとか、それくらいはあるんじゃないですか?」


「好きなタイプ……。ね、ねーよそんなもん! お前はどうなんだよ!」


「私ですかぁ? 私は、そうですねぇ……王子様みたいな人が好きです。眉目秀麗で、声がきれいで……いつか白馬に乗って私を迎えに来てもらいたいです!!」


(オリエが言ってたけど、確かにこいつ物語の中に生きてんな……)


「私は言いましたよー! マルティさんはどうなんですかぁ?」


「あ? あー、俺はなぁ……」


(こいつがカミングアウトしたのに俺が言わないのも悪いかな……)


「……うるさくねぇやつ……かな……」


「どういうことですか!? 詳しく詳しく!!」


「え……詳しくってもなー」


(正直、考えたこともなかったから無理やり絞り出しただけなんだが……)


「えーとな……俺がやりたいことに文句言わないやつがいいなとか……、色々言われるとうるせぇし……俺、口喧嘩はあんま強くねぇから口うまいやつと話してると心折れかけるというかな……」


(俺何言ってんだろう……。好きってなんだ……? っていうかなんか言わなくていいことまで言ったな!?)


「マルティさん、何言ってるのかよくわからないんですが?」


 怪訝な表情でマルティを見つめるソレイユ。


「おいこら。恥を忍んで言ったんだぞこっちはよぉ! そもそも誰かを好きになったことなんかねーっつーの!!」


 声を荒げるマルティに対し、ソレイユは華麗にカウンターを決めていく。


「お父さんもですか? 私、初恋の人は父だったらしいんですよー。記憶はないんですが、死んだ母から教えてもらいまして」


「おと……!! おま、それは好きとかそういうんじゃねーというか、もっと絶対的な存在だろうが!! ……親父はノーカンだノーカン」


「わざわざノーカンを強調するということは身に覚えがあるんですね?」


「おま! なんでそういうとこは察しいいんだよ!? ……っていや! 違うぞ! 俺は親父のこと好きとかそういうんじゃねーからな!!」


 マルティは慌てた様子で席を立ち、外に出ようとする。


「あ、待ってくださいよー」


 ソレイユは急いで会計を済まし、後を追いかけた。

 席を立ったマルティの顔が赤くなっていたのを思い出したソレイユは、彼女のことを少しうらやましく思うのだった。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


「マルティさん……やっと追いついたぁ」


 息を切らしながら走ってきたソレイユ。


「おぉ、意外と早かったな。もっとかかるかと思った」


「もう。マルティさん酷いですよ。今日は1日私に付き合ってもらう約束なんですから」


「へいへい。次はどこ行くんだよ」


「次はですね! マジックアイテムショップです! ほしいアイテムがありまして」


「ふーん。何が欲しいんだ?」


「それは行ってからのお楽しみです!」


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


 ディオンホテル街。午後6時。


 宿に戻るソレイユの足取りはたどたどしく、背中は哀愁を漂わせていた。


「目当てのもんなかったからってそんなに落ち込むんじゃねーよ」


「うう……。シャムルにもなかったからここならと思ったんですが……」


「いやいやいや、シャムルにないならこんな田舎街にあるわけねーだろ……。……で、結局何が欲しかったんだよ?」


「うう……。内緒です!! 王都に行けばきっとあるはずですから!! 皆さんが知らない間に手に入れてびっくりさせますから!! 期待して待っててください!!」


「いや……正直あんまり興味ないからどうでもいいんだが……」


(っていうか、こいつが欲しいもんとか嫌な予感しかしないんだけどなぁ……)


「あ! オリエ様にラパン君!」


(こいつのテンションの上がり下がりついていけねーわ……)


 この数分後、ラパンの声にならない絶叫が、街中に響き渡ったのだったーー。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※


 ディオン。とある宿。午後7時。


 ラパンの部屋に4人は全員集合していた。


 ソレイユはラパンの看病をするため。

 オリエはラパンがボロを出したときにフォローするため。

 ラパンは顔を赤くしてベットで横になっている。たまにもぞもぞ動く。

 マルティは、なんとなくだった。


 ラパンを除く3人が談笑していると、突然、ラパンの腕時計に似たマジックアイテムが起動した。

 王都を出る際に、無理やり渡された通信のためのマジックアイテムだ。


「ラパンテッド様、オリエ様、夜分遅く申し訳ございません。私は騎士隊第7部隊長のガテムレックス・マクシミリアンと申します」


 腕時計型通信具の上方に映し出されたヴィジョンには、そのガテムレックスが映っている。

 さらさらの桃色の髪に凛々しい目をした、王子様という概念が形になったような、眉目秀麗な男だった。


「マ、マルティさん! あの人! すごくタイプです! あぁ……イケメン最高……」


「お、おう……。そりゃあ良かったな……」


 女性陣、というより主にソレイユが騒ぎ立てている。


「国王様より、魔獣の発生予測が発表されたために連絡するものです。場所はリヨン。日時は明後日の午前11時です。具体的な座標はこの通信終了後に端末に送信します。それでは、ご健闘をお祈りしています」


 通信が切れる。


(王都の人間にしては、ラパン相手でも礼儀正しい人だったな……。まぁみんながみんな視野が狭い人間ばかりではないか……)


「……だそうだ。リヨンなら明日になってからの出発でも十分明後日の11時には間に合うな。明日の10時出発にしよう」


「はい!」「おう!」「う、うん……(オリエくん、なんとかして2人になれない? という目)」


 三者三様の反応を見て、お開きにしたオリエ。

 ラパンには悪いと思ったが、準備もあるし部屋には戻らなければならない。

 夜中になったらな、という目配せをラパンに送り、オリエは自室に戻ったのだった。

ご覧いただきありがとうございます。


良かったよーという方はブクマ・評価いただけますとめっちゃ嬉しいです。


ソレイユの好みは王子様系ですが、元王子様のラパンはかすってすらいません。どんまいラパン君。

そしてマルティはただの憧れだけでなく、ファザコンの気が見えかくれしてますね。


次回、第3節より、第3章の物語が少しずつ進み始めます。


次回は赤い翼の美少女ガルダちゃん戦。明日(5/13)21時頃の更新予定です。よろしければご覧ください。

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