第3章 プロローグ
ーー俺は、1つの疑問を感じていた。神である、この俺は。
前方から、呼吸音が聞こえる。
目の前の男は、俺に腹を貫かれ、口からは鮮血を吐き、呼吸は早く、荒い。
それなのに、俺の腕を掴んでいる力はやたら強い。
こいつを突き動かすものは、一体なんなのだろうか。
今だけじゃない、王都近郊で俺と戦った時も、弱いくせに逃げずに仲間の盾になった。
シャムルでは、何の義理もない領民を助け、明らかに危険な女を自身の目的のために仲間にした。
ーー目的?
それがこいつをここまで動かす理由? ここまで強くなった理由?
わからねぇ。果たすべき野望はあっても、自身の目的がわからねぇ俺には、この予想があっているのかどうかわからねぇ。
だから俺は聞いてみる。
お前はなんでそこまで戦えるんだ、と。
目の前の男は答える。
自分が神に負けたら、いったい誰があいつを幸せにできるのか、と。
誰に負けても、神にだけは負けられない、と。
そして、そう話す男の眼光は、普段の穏やかなものとは全く違い、やけに鋭い。射抜かれるような眼差しだ。
少し、怖いと思った。少しな。
……大切なやつ、100%あのヒヨコ頭のことだろうが、あいつを幸せにってのがこの男の目的。
確固たる何かを持ってるやつは強い。
まぁ、そう相場は決まってるよな。
……俺はこいつに勝てるのか?
ふと、弱気な疑問が頭の中に浮かぶ。
そして、そう思ってしまった俺の身体は、もう動かない。
びびってる? この俺が? こいつ如きに?
いや、もう、"如き"ではないか。
正直、ここまで追い詰められるとは思ってなかった。
ーーーーー。
ん?こいつ今何か言ったか?
考え事してて聞いてなかった。
なんかよくわからねぇ黒い何かが、目の前の男を取り囲む。
ーーなんだ……こりゃあ……!?
そんな台詞がつい口からこぼれ出た。
そりゃそうだろ。これを見たらみんなそう思うさ。
"恐怖"そのものが、目の前にいるんだから。
あぁ、だめだ。身体に全く力が入らない。
目の前の状況も頭の中で整理できないくらいだ。
目の前の"それ"が、漆黒で巨大な右腕を振りかぶり、
俺を、貫くーー。
その漆黒には質量ってもんはないみたいで、身体が吹っ飛ぶことはなかった。ただ、意識を持っていかれるって感覚。初めてだなこんな感じ。
意識が落ちる寸前に、ふと、思う。
俺とこいつに差があるとしたら、やっぱ"確固たる何か"なんだろうなって。
俺は頭が悪いから、そんな、ふわっとした表現しかできねぇけど。
いつか俺も、それを手に入れられるだろうか?
なぁ。お前はどう思う? オリエーー。
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今回から第3章。テーマは各登場人物の能力的、精神的な成長。
比較的バトル多めの章ですが、第2節までは日常回になります。
もちろん男の娘分もがんがん?入れていく予定です!
次回は明日(5/11)21時頃の更新予定です。よろしければご覧ください。




