第2章 エピローグ『男の娘と森の中で』
ガルヴァドス領郊外の森。夜。
シャムルから退散してきたオリエ達4人は、森の中で野宿することにした。
マルティが見張りをし、他の3人は眠りについている。
ふと、オリエは、身体に違和感を感じて目が覚めた。
何やら、後ろから何者かに抱きつかれている。
(??)
寝ぼけた頭で状況を整理する。
後ろからは、耳慣れた息遣いが聞こえる。
(あぁうん。もう驚かんぞ)
そのまま眠りに戻る……という訳にもいかないと、オリエは後ろに向きを変えると、犯人はびっくりしてこっちを見ていた。
「ご、ごめん。起こしちゃった?」
そういう犯人、つまりラパンは、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにモジモジしている。
「え、あ、えーと、その……。オリエくん、一緒におしっこいこ?」
実際はオリエと二人っきりになりたいだけである。
1週間もオリエが眠り続けていた間、ラパンはずっとオリエと共に過ごす時間を我慢し続けていた。
それに、ようやく目覚めたと思ったらあの面倒ごとだ。シャムルを出ても2人きりにはなれず、ラパンのフラストレーションは、つい後ろから抱きついてしまうほどに限界まで高まっていた。
「お前、取り繕うの下手だな……」
ラパンの気持ちを察したオリエは、そう言いつつも、ラパンと共に茂みに入っていく。
「なんだあいつら? 小便か?」
見張りのマルティにバッチリ見られていたことに気づかずに。
茂みに入ると、ラパンは、オリエに抱きついた。
「オリエくぅん。1週間も放置されて寂しかったよぉ……」
「お前なぁ、俺、襲われたんだぞ」
「あ、ご、ごめん。大変だったのはオリエくんの方なのに……」
ラパンはしゅんとする。
「あ、あーいや、けどお前、俺のこと助けてくれたんだよな。ちゃんと礼を言ってなかった。……ありがとう、ラパン。俺が生きてるのはお前のおかげだよ」
「オリエくぅん………………」
ラパンは、潤んだ目でオリエを見る。
好きな人に感謝されることが、こんなに心に響くものだとは思っていなかった。
「オ、オリエくん……。んーー」
ラパンは、ここぞとばかりに爪先立ちになり、唇を突き出す。
(ん? あ、ああ、キスね。そうか、そういう流れかこれは)
オリエはラパンの肩に手を置き、突き出されたラパンの唇に向かって自身の唇をーー、
ーーガサッ
「「!!」」
唐突な物音に驚き、思わず抱き合った2人はその方向を見る。オリエは咄嗟に"淡"を使い、気配を消す。
(森の獣か……?)
茂みから現れたのは、
「おーい、どこまで行ったんだー?」
なかなか戻らない2人を心配し、探しに来たマルティだった。
「「〜〜〜〜〜!!!」」
まずいところを見られたと思った2人は声にならない声を出す。夜の茂みの中で抱き合っている、なんてシチュエーション、どうしたって言い訳などできない。
(まずいまずいまずい! 俺は"淡"使ってるからともかくラパンは丸見えだ!)
「……まぁいいや。あいつらだってガキじゃねぇんだ。そのうち戻ってくんだろ」
やれやれという表情を浮かべ、マルティは見張りに戻っていく。
(あれ……? 見えてない……? なんでだ……?)
オリエは考える。
(……もしかして、俺に触れてるからか? この能力って他人にも効果を及ぼせたのか!)
だったらシャムルを出るときももっと楽だったのに、とため息をつくオリエ。
「オリエくん……?」
「とりあえず危機は去った。これで心置きなく……」
「うん……んー……」
再びキスを試みる。オリエは、ラパンの肩を抱く腕から、彼の体温の高まりがダイレクトに伝わってくるのを感じる。呼吸が少し速くなる。
お互いの吐息が当たる程に、顔と顔の距離が近づいた、その瞬間ーー、
「やっぱ心配だわ。あいつら割と抜けてるからな」
「うぉう!!」
「にょわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
再度現れたマルティに驚いた2人はバランスを崩し、抱き合ったままの体勢でマルティの目の前に転がり落ちた。
彼女の目には、驚きで"淡"が解けた2人のあられもない姿がバッチリ映っている。
「お前ら……いい加減にしとけよ……?」
マルティのこめかみがピクピクと動く。どうやら彼女には、2人が何かいかがわしい事をしていたように見えたようだ。
「「ご、ごめんなさい……」」
弁解などできないと思った2人は全力で土下座する。地面におでこがくっつく程度には、全力を尽くしたキレのある土下座だった。
彼女は頭を掻きながら、うんざりするようにため息をついた。
「……別に俺はいいけどよ。他の誰かに見られたら大問題なんだろう? この国じゃ。余計な面倒ごとは増やすなよ?」
そう告げると、彼女はそれ以上は何も言わず、翌日も普通に接してくれた。
彼女の意外と優しい一面を垣間見た2人だったが、この2人にとっては寧ろそっちの方がこたえたのか、それ以降暫く、外でキスをしようとすることはなくなったのだったーー。
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次回は明日(5/10)16時頃に第3章プロローグを投稿予定です。よろしければご覧ください。
【5/30追記】幕間よりはエピローグかな、と思い、タイトルを修正しました。




