第2章 第10節『"7つの希望"緊急会議』
霊峰モンテオール山頂。神の国。
そこでは、"7つの希望"の緊急会議が開かれていた。
"7つの希望"は最高神とそれに次ぐ力を持つ6柱の神の集団であるが、現在は、最高神以外の6柱が円卓に腰掛けている。
議題は、『失踪したマルティコラスの処置について』。
「失踪ねぇ。ローズロッサ以来10年ぶりかぁ?」
興味なさげに言葉を発する赤紫色の髪をした男は、レイキ。
その大柄で豪胆な姿からは、やや傲慢な性格が窺える。
「そうですね。あの方はいまだに見つかりませんが……。もう一度会いたいものです」
「シルフィード。この席でその発言はいただけないぞ? 気をつけるべきだ」
「あ……。すみませんグレンデルさん……」
シルフィードと呼ばれた静かな声で話す眼鏡の女は、その調子に違わぬ青白く不健康そうな肌、透き通るような白銀の髪と長身が特徴的だ。
シルフィードを諌めたのはグレンデル。レイキ以上のガタイを誇る、"7つの希望"一のパワーファイターであり、そして、紳士だった。
「もーう。さっさと本題話して終わらせましょうよー。ワタシこの後ダーリンとデートなのよぉ?」
この神はアスモデウス。白桃色の髪をした両性具有であり、男女問わず多くの恋人がいる恋多き神である。
「それでは、本題に入ろうか。脱走したマルティコラスの処置について」
理知的なこの黒髪の男はヒュドラ。"7つの希望"のリーダーである。
実際に最高権力を握っているのは最高神なのだが、その最高神の「面倒くさいから」という一言で、"7つの希望"のリーダーを任されることとなった。
「マルティコラスは、神降し未遂でストックを没収された直後に行方をくらました。だが、下界に張り巡らせた監視網により、発見当時、ガルヴァドス領にいることが分かった。現在は、ガルヴァドス領を出て、ディオンの方面に向かっている」
「ディオンというと、あの娘の"ラヴィ"が負けたところね……。それ以外の情報は?」
マルティコラスをあの娘と呼ぶのは、赤銅色の髪をしたガルダ。マルティコラスの神降しをギリギリやめさせたあの少女だ。
「同行者がいる。下界の人間3人だ。黒髪の男、茶髪の女、それから金髪の……おそらく男? だ」
「男か女かわかんないってこと? ワタシ気になっちゃうわぁ」
「アスモデウス。あなた、自分で早く終わらせたいと言ったんだから横槍入れないの」
「あらー。ごめんなさいねぇガルダちゃん」
「話を続ける。現状それ以上の情報はないが、マルティコラスを野放しにしておくことは、神の国の安寧を脅かす危険性がある。処罰の是非はいずれにせよ、彼女を捕縛することは決定事項だ」
「それならば、その役目、是非私に」
「ガルダ。いいのかい? 君と彼女は仲が良いようだが」
彼女は眉間に力が入る。静かに一つ息を吐くと、目の前の無機質な円卓を見つめ、言葉を返す。
「別に仲良くはありませんよ。向こうが勝手に突っかかってくるだけです。情はありません」
「そうか……。では、彼女の捕縛は君に任せよう」
「承知しました」
「しっかし、やっぱ親父に似てんだな、マルティコラスの嬢ちゃん」
レイキは、静寂な空気を無視するようにガハハと笑う。
「ファイアドレイクさんですか? 下界から戻ってから、変わりましたよねあの方」
シルフィードが被せ気味に言葉を返す。
マルティの父はファイアドレイクという男だった。炎を吐くドラゴンに変化できた彼は、かつては"7つの希望"の一員だったこともある。
何を思ったか、国を出て下界に降りた後、価値観がすっかり変わった彼は、命のストックのために下界人を殺すこの国の慣習への反対運動をし続けた。
当然、自らもストックを貯めることをやめたため、事故であえなくこの世を去っているが、この一件があって以来、国の安寧を脅かすとして、国外への無断外出は原則禁止とされたのだった。
「捕縛後の処罰については、取調べをしてから再度会議を開き、決定することとする。異論はないかな?」
ヒュドラは5人を見回す。誰も言葉は返さない。
全員異論なしで、会議はお開きとなった。
ご覧いただきありがとうございます。
良かったよーという方はブクマ・評価いただけますと大変嬉しいです。
"7つの希望"の顔出しって感じです。
文字数的に、次回分と合わせて投稿しようかなとも思ったのですが、話の流れ的に分けました。
短くて物足りない!って方ごめんなさい。
そんな理由で次回、次々回は同じくらいの文字数です。
次回は朝投稿です。明日(5/8)7時頃の更新予定です。よろしければご覧ください。




