怠慢
冒険者という職業がある。
古代より似た概念は存在していたが、その概念が規定されたのは200年以上前に戻る。かつて暗黒の時代と呼ばれた世界に時代に魔王と魔王に率いられし魔物と呼ばれる存在が蔓延り、多くの国や街が滅ぼされた。
そんな時に現れた、当時2強と呼ばれる大国の1つ、レンオアム帝国から輩出された一人の男。
ブラディオン・フィクティティウス・ヘーリアント。
彼は勇者と呼ばれた者である。
勇者は圧倒的だった。瞬く間に各地の魔物を撃破していった。
更に勇者は人種以外を差別するレンオアム帝国出身でありながら誰にも平等に手を差し伸べた。
勇者ブラディオンが各地を回り様々な国や街を解放し、それに憧れ多くの人々が彼を真似て旅に出た。
その時の旅には出られないが後方で協力した市民、軍人、貴族、国を越えての機関を前身とし、今の形になったのが冒険者ギルドだと呼ばれている。冒険者ギルドは如何なる国家にも属さない独立した機関であり、またどの国にも融通する事はあっても基本的に肩入れする事はない。これは魔王という唯一無二の敵に対し、思惑はあれど殆どの国が協力しあった事からの名残である。
因みに国家公認の冒険者ギルドもあるにはあるのだがいずれも各国を跨ぐ大手冒険者ギルドに劣っている。
冒険者ギルドを登録した者を俗に『冒険者』という。冒険者は出身や地位、性別や種族の垣根も関係なく万人が登録する事が出来る。これは前述のブラディオンに憧れ旅に出た人々に特定の種族もなかった事が起因している。誰もが平等にチャンスを得る。それが冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドについてはその独自の権力と武力が国によっては完全に無視出来ないものであっても無理矢理従わせようとしたり解体する事をしない。いや過去に居たことには居たがその国からは冒険者ギルドは完璧に手を引き、そして魔獣の災害で滅んだという。
国としてもデメリットだけでなく、常にある魔獣被害などを冒険者ギルドにある程度任せる事が出来、その分自国の兵士の強化や民の生活を豊かにするのに力を回す事が出来る。故に警戒はしてもそれを解体するように呼び掛けることはない。
冒険者ギルドは正しく大陸随一の一大機関と言っても過言ではないものであった。
だが200年。そう200年である。
熟され続けた果実が腐るのを避けられないように。
流れがなければ水が濁るように。
風が流れなければ風車が動かないように。
冒険者ギルドでも腐敗は避けられなかったー
「ですから!」
ピカソは声を張り上げバンと受付カウンターに手を叩く。目尻は釣り上がり、怒りの表情で受付職員を睨みついた。
ピカソの予想通りこの村には冒険者ギルドがあった。そこまでは良かった。だが問題はその後の職員から話された内容である。
「これまでに討伐された魔獣の把握、依頼内容を把握していないとはどういうことですか!」
「そ、そう言われましてもこちらとしても連続しての魔獣被害や開拓による様々な事情が重なりそこまで手が回らなかったのです。
「魔獣被害が増えたのはここ最近だと村長さんから聞いています。確かにとどなる魔獣の被害に対応が追いつかないことがあるのは理解できます。しかし、それより前のデータはきちんと管理されていないのはおかしいじゃないですか」
「あ、そ、そのことにつきましては不幸な出来事があったというか何というか……」
言い淀む職員にバンっと依頼要請専用掲示板からとった一つの依頼書を叩き出す。
「それに何ですかこの依頼内容は! ≪突撃ワラビーの討伐。一匹につき報酬1500クローナ。妥当ランク2欠月≫
『突撃ワラビー』の妥当ランクは3欠月からのはずです。ですがこれには2欠月からになっています。明らかにギルド条例違反ですよ」
「中位の冒険者達になるとそのような依頼を受けぬようになり、しかし被害がある以上放置するわけにはいかず苦肉の策としてランクを下げたのです。その辺りの事情も理解して頂きたい」
「成る程、それは理解出来ます。しかし、それなら一通でも本部に報告を行うべきです。内容についてもせめて『2名以上推奨』など一人で向かわないよう考慮すべきではないですか」
2欠月は冒険者にとって初心者と中級の分かれ目であり振い落としの始まる重要な位置である。これを適当に行うとまだ若い冒険者が命を落とす事事態になりかねないため慎重に依頼を振り分ける必要があった。
「この状況では手が回らず、そこまで細かく気が回らなかったのです。それに魔獣の討伐自体は為されているのですから大丈夫でないでしょうか」
「だとしても最低限の討伐確認はしておくべきです! 此方の『森にいる暴力コングの討伐。7500クローナ』……この内容ではワラビーとは違い暴力コングが何頭いるのか書かれておらず、更には一頭当たりの配当なのか、群れを殲滅しての配当なのかわからないじゃないですか。それに、依頼された魔獣と同一個体かの確認もしてないとはどういうことですか! 同種の個体数もキチンと把握していないと、それが本当に依頼された個体かわからないじゃないですか。過去に報告を怠たり魔獣の暴走などの兆候を見逃し、取り返しにつかない事態に陥ったことを貴方もギルド職員ならば理解できるはずです」
「……そ、それは」
ピカソの糾弾に職員完全に沈黙した。
冒険者ギルドが出来てから200年。そう200年である。長く歴史あるものほど腐敗などが進むのは世の常だが冒険者ギルドも同様であった。
カウンターの奥を睨むも誰も目を合わせようともせず、逸らした。この分では他にも色々としているのだろう。
ピカソは小さい頭を抱える。それほどにギルドの怠慢は酷かった。
「……仕方ありません。これだけはしたくありませんでした。一時的にですが冒険者ギルドの権限を剥奪させてもらいます」
「な、それはいくら何でも横暴です!」
「このような状況でギルドを運営出来るとは思えません。証拠保全の為にも必要な措置です。それほどに貴方達の職務怠慢が酷いのだと理解して下さい」
ピカソとしては勿論こんな事はしたくない。だがこのままでは取り返しのつかない事態になりかねない。そう思っての判断であった。
「おうおう、話を聞いてたらそりゃ職権濫用じゃねぇか?」
揉め事を聞いて一人の冒険者がピカソに絡んできた。昼間にも関わらず、片手には酒ビンを持っており顔も赤い。冒険者は若いピカソを侮り、見下す視線を向ける。
「ただの一ギルド職員、それも在住調査官がギルドを封鎖なんて大層な事、出来るはずがないだろ?」
「ただのギルド職員ではありません。それに私は『特殊調査官』であって在住調査官とは別ですよ」
「特殊調査官? こりゃ驚いた! まさかこんな所でお目にかかれるとはな! 知ってるぜ、要請がなきゃ動く事のない『穀潰し』だってなぁ!」
冒険者は顔を醜く歪ませ笑った。
「俺たちみたいに剣も持てない、戦えない。あるのは知識だけ。調査官何てのはいちゃもんつけて俺たちの自由を邪魔する唯の邪魔者以外の何者でもねぇんだよ。分かったら早く帰れよ」
「そうだそうだ!」
「帰れよ!」
冒険者は荒っぽい。自らのテリトリーが使用できなくなるならそれに反発する。
受付職員は止めようとするも止まらない。一部の冒険者は調査官の重要性を理解しており加わることはなかったが面倒ごとに関わる気はなく静観していた。
ピカソが俯く。
泣いたかと酔っ払った冒険者が思ったのも一瞬、強い意志を目に込めてピカソは顔を上げた。
「訂正して下さい」
「何?」
「私のことは馬鹿に構いません。『絵狂い』なんて陰口を叩かれることもありますし自分でも変わり者だと思っています。だから馬鹿にされるのも仕方ありません。けど」
キッと可愛らしい顔に似合わず口を結び、そして口を開ける。
「調査官の事を馬鹿にしたのはやめて下さい! 私達は調査官に誇りを持っている。私達が権限を使い場合によってはギルドを封鎖したりするのは不測の事態で冒険者達の命を軽々に落とさない為であり、決して冒険者の自由を邪魔するためでありません!」
しぃんと静寂が走る。先程騒ぎたてた冒険者も口を閉じていた。
この場に誰もが小さく、歳も若いはずの少女に佇まいに気圧された。
「くそがっ! 調査官だからって舐めやがって!」
論破された冒険者は頭に血が上り持っていた酒ビンをピカソの頭に向けて振り上げる。
他の冒険者が止めようとするも間に合わない。
訪れるであろう凄惨な光景に誰もが目を瞑った。
「おい、お前何してんだ?」
横からがっちりと太い腕を掴まれた。
一人の獣人が二人の間に立っていた。
誰もいつそこに男が現れたのか分からなかった。
ただ扉だけが何かが通ったように開閉を繰り返している。
「何だお前……っ! いたたたたっ!!」
「お前は今、誰に、何をしようとしたんだ?」
「あ、がぁぁぁ! 腕が、腕がぁぁぁ!」
太い男の手を何事もないように捻りながら狼系獣人の男ーーベオルフが無表情で言う。
痛みに耐えきれず冒険者は持っていた酒ビンを地面に落とし、膝をつく。
「てめぇ……!」
「雑魚は黙ってろ」
仲間の危機に他の冒険者が反応するがベオルフからの殺気を受け途端に顔が蒼白になる。他の冒険者もギルド職員も突如現れたベオルフに何も言えない。言い出せない。圧倒的強者の気配に誰もが口を噤んだ。
ピシリと男の腕から嫌な音が鳴る。
「ベオルフ!」
いや一人いた。ピカソである。
「ベオルフ、駄目です! それ以上すると折れちゃいます!」
「……ちっ、運が良かったな」
舌打ち、パッと手を離すと冒険者は尻餅を着く。痛みに手を抑えながら戦慄恐々とした様子で顔をあげた。
「ベオルフ……? ベオルフって言やぁまさかあの『地竜降し』のベオルフ・ヴァンデルンクか!?」
男の言葉に静かだったギルドの冒険者達がざわりと騒めきたつ。
「例の『地竜下し』……!?」
「一人で新種の竜を倒したって言うあの」
「《魔獣の暴走》の時も一人で数十の魔獣を殴り倒し、その血肉を貪ったって噂の」
「《7欠月》の冒険者が何だってこんな場所に……」
「あん? 何だよこんな所にも知ってる奴がいるのかよ。つーか誰だ血肉を食べたって言った奴。さすがに火を通さなきゃ食わねぇよ」
ベオルフは自身に向けられる好奇と恐れの視線に居心地悪そうに頭をかいた。男は信じられないとばかりに目を見開き、左手でこちらを指差す。
「な、なんで《7欠月》の冒険者が『特殊調査官』なんかと一緒にいるんだよ!? おかしいだろ!?」
「俺がしようと決めたんだ。他人にどうこう言われる筋合いはねぇぜ」
「なっ、ぼ、冒険者なのにギルドの犬なんかになったのか! ギルドなんて俺たちの事を拘束するだけじゃねぇか! 特に『特殊調査官』になんて至っては居てもいなくても変わらないただの穀潰しだろ!?」
「その冒険者ギルドの恩恵を受けているお前が言うな。冒険者のモットーは自由。ならば誰と一緒に居ようと俺の自由だ。それに特殊調査官は居ても居なくても変わらないだと? お前だってギルドの魔獣資料を見たことがあるだろ? それを書いたのは誰だと思っている。その調査官達だ。分かったら喚くな見苦しい」
男の挑発をベオルフは歯牙にもかけなかった。だがっと食い下がる男をひと睨みする事で黙らせる。
「……お嬢」
「大丈夫。私は気にしていませんから」
ふぅと軽く息を吐き、ピカソは顔色の悪いギルド職員に向き直った。
「……近日中に、これまでの資料や依頼者との内容の確認を行い取り纏め次第提出して下さい。そうすればギルドの一時的な封鎖はしないことにします。ただし、此度の怠慢について中央への報告はさせて頂くのでそのつもりで」
それだけ言い、すたすたと出口へと向かう。ベオルフも追従する。
倒れていた冒険者はひっと、後ずさった。
ピカソは振り返らずにギルドを出た。最後にギルド全体をひと睨みした後、ベオルフも後を追った。
最後には嵐でも過ぎ去ったような静かな冒険者ギルドの場だけが残った。
「お嬢! 待てってばお嬢!」
足早に冒険者ギルドから離れるピカソに追いつき、ベオルフは尋ねる。
「どうしたんだよ、俺の言葉に反応しないで……。お嬢?」
「あぁ〜、こ、怖かったぁ〜。もう駄目腰抜けたよ〜」
心底安堵した声を出してへたり込む。
その様子にやっと元に戻ったとベオルフは笑顔を浮かべる。
「お嬢にしては頑張ったな。かっこよかったぜ」
「何でもっと早く来なかったんですか、下手したら死んでましたよ私。『子供より弱いピカソちゃん』って街でも有名なんですよ!?」
「悪りぃな、猟師達の話が予想以上に長引いてな。でも終わったら走ってすぐ向かったから間に合っただろ?」
「それはそうですけど……」
むぅとふて腐れた表情で口を尖らせる。しかし、頼んだのは自分なのでここでベオルフを責めても仕方ないと判断する。
ベオルフもピカソの様子に気付き、真面目な顔に引き締める。
「それにしてもよお嬢、良かったのかあんな甘い裁定で」
「甘くないですよ、少なくともあのギルド職員達は中央への報告によりこれから出世の道を閉ざした事になります」
「確かにそうだけどよ……。それよりもギルド封鎖するって話があったんだよな? 何で取りやめたんだ?」
「あれですか? ギルドの一時的な封鎖なんてのはただの脅しです。実際に封鎖されたのは過去に一度しかありませんし私よりずっと権限も信頼も上の調査員でした。それに閉鎖したらその後のギルド経営とか跡継ぎの要請に時間が掛かりますし、早急に解決しないといけない案件があるのにそんなことをしたら対応が後手に回っちゃうからデメリットしかありませんよ。それよりも」
くるりとピカソは立ち上がって振り返り、ぐいっとベオルフに前屈みに近付く。そしてぴんと指を立てる。
「助けてくれたのは感謝してます。でも折ろうとしたのは駄目です。冒険者は身体が資本なんですから、折っちゃったら仕事に支障が出ちゃいます」
「あぁいう輩は一度痛い目合わないと懲りねぇんだよ。後進の為にも一度鼻っ柱折っといてやっとかないといけねぇしあれで良かったんだよ」
「だとしても、です。ベオルフならそんな事しなくても相手を無効化できるでしょう? ならもっと穏便な方法があったはずです。私の為に怒ってくれたのは分かってます。でも私を庇ったせいでベオルフに悪名が拡がるのは悲しいですから……」
「お嬢……」
哀しげに顔を伏せるピカソに言葉が詰まる。ベオルフとしては暴力を振るおうとした冒険者に血が上りそのままへし折ってやろうと考えてた。しかしそれが逆にピカソを傷付ける結果となってしまった。
ギリっと不甲斐なさに歯を食いしばる。
この少女を守る。そう誓ったはずだ。
「分かったよ、次からは気をつける。……多分な」
「む、多分じゃなくて絶対ですよ」
ぷくっと頰を膨らます。
「努力はする。だが確約はできないな。悪りぃな、獣人は喧嘩っ早いんだ」
「むー、しょうがないです、ならこうしましょう」
ピカソが小指を立てる。
「何だそりゃ?」
「遠くの地では約束する時はこうやって指を絡めて言葉を紡ぐらしいですよ。前にウォレスのおじさまから聞きました。ほらベオルフも早く」
「お、おう」
細いピカソの指と太く爪が伸びたベオルフの指が絡み合う。
謳うように約束して小指を離す。
「はいっ、これで大丈夫です!」
「変わった内容だな」
「そうですね、確か約束を破った時に指を全部切り落としてゲンコツを一万発、更には針を1000本を飲ます落とし前をつけるものだと聞いています」
「んだよそれ怖すぎだろ!?」
予想外に恐ろしい内容にベオルフの肌が鳥肌立つ。
「今ではただの約束をする時の風習としての、内容なんで実際に破っちゃってもそんな事しませんよ。だからそんな怯える必要はありませんよ」
「あ、そうなのか。安心したぜ。だけどよ、そしたらこんなんに効力があんのかよ」
「あるにしろないにしろ、約束したと事実が大切なんですよ。それでベオルフベオルフ。猟師達の話はどうでした?」
「あぁ」
マジマジと小指を見つめてたベオルフだがその問いに佇まいを直した。
「猟師に話を聞いたがどうやらここから北西に大きな川があってそこからこの村や街に水を引いているらしいぜ。更に上に行くと他の森林より大きい木が沢山生えている一帯があるらしい。あと、そこから南の方にはいくつか小規模の湖があるって話だ。それに手描きだが地図も貰ってきた」
「地図を貰えたのは僥倖ですね、これで大体の位置と見て比べることができます。見せて貰えますか?」
「あぁ、これだぜ」
ベオルフから地図を受け取りふむふむと頷く。
「とりあえず、これを元にこれからこの村周辺の森を調べてみる事にします。冒険者ギルドが周辺の魔獣の生息状況を把握していない以上自らの足で見て回るほかありませんから」
「そうだな。けどお嬢はどの道自分で見て回るつもりだったんだろ?」
「えぇ、それは勿論! だって此処は新しい開拓村。いわば人の手が殆ど入っていない自然の宝庫ですよ! 探索しないだなんて損じゃないですか! あぁ、どんな植物や魔獣が存在してるのかなぁ。景色も気になります!山の上から見た風景も気になるなぁ。あ、もしかしたら妖精種とかも住んでるかも! うー、想像するだけでどう色を塗ったり描いたりするかインスピレーションが湧いてきます! こうしちゃいられません、早く、早く行きましょう!」
キラキラとした様子でまだ見ぬ景色に想いを馳せ、早く早くと急かす。
その様子が先程の姿とは似ても似つかわず、可愛らしいものでついベオルフは笑ってしまう。
「むっ、何ですか笑ったりして。おかしいですか?」
「いいや、別に。お嬢がおかしいのは何時もの事だしな。それよりもお嬢はそうやって笑ってるが似合ってるなって思っただけだ」
あんな哀しげな顔よりもずっと似合ってる。ベオルフは嘘偽りなくそう思っていた。
じとっとした目でこちらを見ていたピカソがその言葉にキョトンとした後、また華が咲くように笑った。
「うひひっ、ならもっともーと笑ってあげます! にひひっ、ひひ、でゅふ、でゅふふ」
「あ、その笑い方は気持ち悪いわ」
「何でですか! 笑ってる方が似合ってるって言ったのはベオルフですよ!」
「さすがにでゅふふとか笑ってるのを可愛いとは思えねぇからな。シャロットの野郎みたいだった」
「ふがー! 怒りました! もう怒りましたよ! 乙女心を弄んだ罪は重いのですよ! 食らえ、乙女の鉄拳!」
「おっとあぶねぇ」
ベオルフはピカソの頭を手のひらで押さえる。
ぐるぐると叩こうと何度も腕ごと回転させるがいかんせん身長差で届かない。ピカソの拳は虚しく空を切る。それを見てベオルフは楽しそうに、本当に笑う。
「むがー!! ふがー!」
「はっはっはっ、お嬢の身長じゃ俺には届かねぇよ」