熱中症
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!!
今年の目標の一つはこの作品を日刊に載せる事です!是非とも応援よろしくお願いします!!
ベオルフはすぐさまピカソを抱えて村に戻った。
此処では最も医療技術が発展しているであろう水上コテージ、サキリの元へと運ぶのが懸命だと判断だった。
サキリは事情を把握するとピカソを医務室に連れて行った。
治療を待つ間ベオルフは忙しなく家の中を動き回っていた。
座ったと思ったらすぐ様立ち上がったりとにかく挙動不審だ。ここが家じゃなければすぐさま通報されていただろう。
「終わったヨ」
やがてサキリが医務室から出てくる。
「サキリ! お嬢はどうだ!? 無事なのか!?」
「まぁまぁ、ちょっと落ちついテ。近いヨ」
鼻息の当たる距離まで近づいたベオルフを至って冷静にサキリは対応した。
ちょんっと唇に手を当てられながら、それでいてぐぐぐっとかなりの力で離される。鼻を押し潰されそうになり、ビックリしたベオルフは鼻を抑えつつもう一度尋ねた。
「大丈夫、今は寝てるヨ。ピカソさんのかかったのは病気でも何でもなイ。ただの熱中症だヨ」
「ね、熱中症? なら、今すぐ命に関わる訳じゃねぇんだな!?」
「熱中症も過ぎれば命に関わるけド……うン、今回は大丈夫。水分を取ってキチンとした休息を取れば明日にでも元気になるヨ」
その言葉にベオルフは安堵する。
この島特有の病だと思っていたからだ。下手をすれば
「慣れない環境デ、調子を崩したんだろうネ。マ、此処に来たばかりの人だったら良くあることだヨ。一つ聞きたいけど、彼女ちゃんと水を飲んでいたかイ?」
「……いや、水分を摂ってる気配はなかった」
「集中力は大したものだけど、それ以外の事が疎かになっていたようだネ。というか、本来ならそれはキミが気付くべきことじゃないのかイ?」
「……そうだ」
項垂れるベオルフ。
それに対してサキリは責めるような目になる。
「お嬢はバナナップルとかの果物を食べてたし、ある程度は問題ないと思っちまってた」
「あー、確かに果実でも水分は取れるけどそれでもやっぱり限度があるからネ。やっぱりちゃんと水は飲まないと。特に彼女は若いから、発汗量も多かったんだろうネ。……はァ、そんな情けない顔しないノ、君は彼女の護衛なんだからどっしりとしなくちャ。幸い命に関わるようなものじゃなかったんだかラ。わかっタ? これは此処に長く住む者からの助言だヨ」
「……そうだな。亀の甲より年の功か、わかっーー」
瞬間、頭に尋常でない衝撃が走った。
「……はっ!?」
ベオルフは目を覚ます。一瞬気絶していた。這いつくばった地面が冷たい。見れば、何時ものジト目が更に増したサキリが幾分不機嫌な様子で此方を見ていた。
「キミは失礼な人だネ。私は22歳。キミより歳下だヨ」
「マジで? 歳下だったのか……」
「獣人は途中で一時的に成長が止まる。私の場合は少し遅かったけど君も同じ獣人ならそのくらい分かるでショ?」
「それは、その……なんだ。すいませんでした」
素直にペコリと頭を下げる。
《7欠月》の自分が油断していたとはいえ反応できない速度で意識をかられた事に内心戦慄していたのだ。
亀系獣人のポテンシャルの高さは思ったよりも高いと、ベオルフは今回のことで覚えた。
後日。
サキリから呼び出され向かうとベットでピカソが立ち上がっていた。
「あっ、ベオルフ!」
「お嬢、もう大丈夫なのか?」
「はい、ご心配おかけしました!」
ピカソは何事もなかったように元気になっていた。
「サキリさんの迅速な治療のおかげで後遺症なく元気になりました! ありがとうございます!」
「漁村の人達にも、薬とか分けて貰っていたからネ。この辺りの病気なら大抵の事なら何とかなるヨ。本当に調子はもう良いノ?」
「はい! ゆっくり休んで元気いっぱいです! だからさっそく今日も調査に」
「ダメ」
有無を言わせない言葉が響いた。
「え、サキリさん何で」
「キミ、昨日倒れたのわかってる? 大事ではないとは言え昨日倒れた人を治ったから「はい、そうですか」とまた過酷な調査をさせる訳にはいかないノ。少なくとも今日一日は安静にすること」
「そ、そんな。お願いします!」
「ダメ」
「ほ、ほんの少しだけですから!」
「ダメ」
「う……」
「涙ぐんでも、ダメ」
サキリに譲る気がないと悟るとピカソはショボンと項垂れた。
「今回ばかりは仕方ないぜ。お嬢。休暇が出来たと思ってゆっくりしとけよ。最近忙しかったから良い休みになるぜ」
「ベオルフ。でも」
まだ未練がありそうなピカソ。
その様子にサキリは呆れながらも優しく諭す。
「はやる気持ちは分かル。けれド、それで無茶したらダメだヨ。君に何かあれば色んな人が心配すル。そこの男も昨日心配のあまり随分挙動不審な態度を取りまくってたからネ」
「おまっ、そういうことは言うなよ!? 」
あっさりバラしたサキリに目を向けると彼女はしてやったりと口の端をあげていた。どうやら昨日の年齢のことをまだ根に持っているようだった。
「ベオルフ……。そうですよね。いつも私が無茶ばかりして心配かけているんです。今日はきちんと休息します」
「それが良いヨ。それじゃ私は一度漁村の方に戻るネ。君も、きちんと言いたい事があったラ言っときなヨ」
サキリが部屋から出て行く。最後にベオルフの方を見て。
何が言いたいのかわかったベオルフは罰の悪そうな顔をして彼女に頭を下げた。
「お嬢、すまなかった。俺がお嬢の事ちゃんと見てなかった所為でこんなことになっちまって」
「いえ、私も見慣れない土地でテンションが上がってしまって自分の体調管理を疎かにしたのは私のミスです。ごめんなさい」
お互いに頭を下げる。その様子がおかしくて思わず顔を見合わせて笑ってしまう。
「それにしてもサキリさんって、あんな性格でしたっけ……?」
「な、俺も逆らえねぇわ。昨日一瞬とはいえ意識を刈り取られた」
「えっ、ベオルフが!?」
古今東西、優しい人は怒らせると怖いと言われているがその通りであると身を以て体験した。
「あ、そうダ」
「ひぃっ」
「な、何だっ!?」
ひょっこりと戻って来たサキリにドキッと二人して身構える。
話聞かれてないよなと内心ドキドキの二人に対し、サキリは首を傾げつつ口を開く。
「何でそんなにビビるのか分からないけド……。遠くに行くのはダメだけど休息を兼ねた遊びなら良いよ。特に昨日の砂浜なら良いと思ウ。勿論、水分補給は忘れずにネ」
「? 何でですか?」
「あそこならーー」
☆
ほんの僅かに離れたところに砂浜がある。ここでは魔獣が出て来ることなど殆どなく、漁村の子供達もよく遊ぶらしい。
7〜8mはある背丈の高い木の下でベオルフは汗をかいて俯いていた。
「やっべぇ、マジあっちぃ……」
恨めしく太陽を睨むが知ったことかとお天道様はかんかんと照りつける。
ちょっとは手加減しやがれと悪態吐くもそんなこと知りませんと太陽は照りつけるのをやめない。
こんな時ばかりは自分が獣人であることが恨みがましく思う。人とは違い一度汗をかいたら中々乾かずベタつくのだ。特に毛並みが長く豊富な狐系獣人や鳥系獣人なら、それはそれは非常に大変な事になる。
「だが、汗をかくのは美人の巨乳お姉ちゃんなら……ありだな」
男の蒸れた汗などノーセンキュー。しかし女の子、特に巨乳なら汗が首筋から垂れたのが胸の谷間に溜まったり、ヘソや胸の谷間とかに伝る様は中々のエロスを感じる。
特に牛系獣人や熊系獣人なら、何とは言わないがデカい。
そのように妄想をしていると
「ベオルフ、ベオルフー!」
「んぁ? お嬢、遅かったじゃねぇ……か…………」
やって来たピカソの格好は変わっていた。
頭にハイビスカスの花と髪飾りをしており、いつもの髪型を解いてストレートにしている。
胸や腰に身に付ける布はサキリや現地民が来ている幾何学模様と酷似していた。
健康的な白い肌に華奢な身体。
脚には火傷しない為に花を括ったサンダルを履いているピカソは一言で言うと可憐であった。
「サキリさんに見繕って貰いました! この地域での伝統的な水着らしいですよ!」
くるくると踊るように回る。その度に白い太ももがチラチラと眩しく見える。
「ベオルフ?」
「はっ!? なんでもねぇ! 似合ってるぜお嬢」
「本当ですか、やったぁー!」
嬉しそうにピョンピョン跳ねた後ピカソはグイグイと手を引っ張ってくれ、
「ベオルフベオルフ、一緒に泳ぎましょうよ! あまり激しい運動はダメなので水際で遊ぶ程度ですが、きっと気持ちいいですよ!」
「海は入ると身体がベタつくしなぁ。"海狼"とかなら良かったけど生憎と俺は陸の狼の獣人だしな。悪りぃけどパスだ」
「むぅ、一緒に泳ごうと思ったのにベオルフはケチです! もう良いです、ふーんだ。私だけでも楽しんできます」
「おーう、足滑らして溺れないようにな」
そんなことしませんよとピカソは叫びながら海に向かって行く。
「俺は巨乳が好きだ、おっぱいが好きだ。俺は断じてロリコンでは……っ!」
誤魔化す様に何度も何度も呟く。
あの時、ベオルフは一瞬ドキッとした。ピカソは大切であるがそのような対象として見たことは一度もない。
だからこそ、ベオルフ自身も抑える為に必死だった。
その為、こそこそ接近する気配に気付かなかった。
「うぉっ!?」
「にひひっ、隙あり! です!」
バシャンと頭に海水が被さる。ピカソが手のひらに海水を貯めてかけてきたのだ。
「お嬢、何しやが……ん?」
同時に何かが頭で動くのを感じる。
手に取るとうにょうにょと沢山の突起物のある柔らかい物体が粘つく液体を出していた。
「うぉぉぉっ!? 何だこれっ!?」
「"千手ナマコ"って言うらしいですよ。サキリさんに聞いていました。天日干しして乾かして溶かして食べると美味しいらしいですよ」
「これを食うのか!? どう見ても食う物じゃねぇだろこれ!? ぬぁっ、な、何か出してきたぞ」
「あ、それ千手ナマコの内臓ですね。外敵から身を守る為に出すらしいです」
「きめぇ! 魔獣なんかよりこっちの方が断然タチ悪いじゃねぇか!」
何度か手を振るも粘着質な千手ナマコは中々離れない。やがてベオルフは自ら海に飛び込んで"千手ナマコ"を海水で手放す。
「ぷはっ」
海面に顔を出す。身体が海水でザワザワするが同時に頭が冷えた。
この場所に来てからこんな事ばかりだ。
「おい、お嬢ーー」
怒ろうとしてふと気づく。確かにピカソは魔獣の事になると奇行に走る事はあるがこんなイタズラをすることは稀だ。
もしかして構って欲しかったのだろうか。
ピカソを見ると彼女はちろっと舌を出しながら此方を見ていた。それを見ると怒りも何もかも消えていく。
どうせ海に入ったんだ。なら楽しむとしよう。
「俺を怒らせた事を後悔しなぁっ!」
「きゃーー♪」
海で楽しそうな二人組の声が木霊した。
夜。
「うわーん! 肌が痛いよーー!!」
「あ〝あ〝あ〝ぁぁぁぁっ!! ふ、風呂で染みるぅぅぅぅ!!!」
「だから日焼け止め塗っていきなって言ったのニ……」
椰子の実の果汁(日焼け止めの作用がある)を塗り忘れた二人の泣き声が漁村に響き渡ったとかなんとか。
因みにサキリは泳ぐとかなり早いらしい。
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正直、思ったよりも伸びず悔しい思いをしています。是非とも皆様のお力を貸してください!よろしくお願いします!
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