拾い物
春の季語の続きです。
春先に、私の家で鍋を食べる事になりました。
朝から雨が降っていましたが、やんで良かったです。
駅で彼女と待ち合わせて、近所のスーパーで鍋の食材を買いました。
二人で並んで歩いていました。
雨上がりの道の真ん中に、それは佇んでいました。
「なにあれ? 何かいるよ?」
あれは、『ウシガエル』かな。12cmくらいのが、のっそりいました。
私が住んでいる場所は住宅街で、川や林はありません。
ハエや蚊もほとんどいない、不自然な所です。
「カエルだね」
「大きいよ。すごく大きいよ。あんなのいるの?」
「ウシガエルはあれくらいの大きさかな」
あそこにいたら、車に引かれてしまうな。
助けてあげようと、近づきました。
冬眠から覚めたばかりなのか、動きが鈍すぎて簡単に鷲掴み出来ました。
あれ? 彼女がいなくなった。
まあ、いいや。長く掴んでいるとカエルが弱ってしまいます。
近所に、庭にでっかい浴槽を置いている家があるんです。
浴槽の周りは庭木が植えられ、覆いかぶさる様に配置されています。
浴槽には水草が生い茂り、色々飼っているみたいなんです。
そこから脱走したカエルが車に引かれているのを、たまに見たりしているんです。
庭にカエルを放しました。
突然、彼女にスーパーの袋を取られました。
「カエルを触った手で、袋つかんでないよね?」
なんだよ。びっくりするな。
「つかんでないよ」
「信じられない。信じられない。カエル掴めるなんて」
「ウシガエルは毒が無いから平気だよ」
「えっ。毒があるカエルがいるの?」
「家にあるぬいぐるみのカエル、人が食べたら死んじゃうよ」
「もう気持ち悪い。あのぬいぐるみ捨てようよ」
絶対にイヤだ。
カエルを掴んだ手をじっと見て、彼女の顔をじっと見た。
そしてもう一度、手をじっと見た。
彼女はダッシュで逃げだしていた。
しょうがない、手を洗ってから帰ろう。来た道を引き返しました。
スーパーで手を洗って家に帰ると、彼女が怒って待っていました。
「どこに行ってたの?」
「スーパーで手を洗って来たよ」
「直ぐにお風呂に入って!」
「ええ~~」
問答無用で風呂に入ることになりました。
出ると鍋の準備は出来ています。
「カエルのぬいぐるみは捨てないよ。勝手に捨てたら、本物飼うから」
「本物とか無理。しょうがないね、我慢するよ」
アマガエルとかヒキガエルは毒があるので、触ったら手を洗いましょう。
ヒキガエルは皮膚に毒があるので、特に触らない様にしましょう。
子供には注意が必要です。
カエルを触った手で、目を擦ったりしちゃいます。
カエルを触った後で、痛みや腫れたりする場合があります。
即、病院へ行きましょう。
病院で見せるために、触ったカエルの写真も撮っておきましょう。
ほとんどのカエルは毒を持っているので注意が必要です。
カエルのぬいぐるみに手出しは出来ません。
手を出せば、本物が待ち構えているのです。
本当にツノガエル飼いたいの。




