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雷霆の神獣・上

 俺の名前はアレク。雷霆の神獣だ。

 俺が今居るのは絶海の孤島にある屋敷。ディックが珍しく手を貸して欲しいと電話があった3日後に、今度はシンバから連絡が来た。急遽屋敷に集合して欲しいっと。


 大会があったから最初は断ったが、内容がマスターのことだったから大会の方は断念した。まぁそれはいい。次の大会で結果を出せばいい話だ。問題は予定の時間になっても全員揃っていないし、大分時間が経っていることにだんだんとイライラしてきた。


 あと来てないは自由奔放なタルと放浪癖のあるリルだけだ。ぜってぇ来ないだろアイツら!


 シンバが携帯を取り出すと深い溜息を吐き口を開く。


「タルは俺から伝える。リルには悪いけどディック頼まれてくれるか?」


「了解!」


「よし、じゃあ始めるか」


 皆んなの視線がシンバに集まる。


「今日集まってもらったのはディックの所でバイトしてる子がマスターの魂を微かだが確認した」


「はいはーい!私確認したよ!」


「ぼ、僕も確認したよ」


 茶髪のショートに花柄のカチューシャを付けて白い可愛いドレスを着た活発な少女ライと同じく茶髪のショートに黒いタキシードを着た大人しめな少年が手を挙げて答えた。


 こいつらは俺らと違って担当の地域がないから自由に姿をその時代に合わせて変えていたが、少年少女って見た目詐欺だろそれ。


 そう思っていたらライがニコっと笑顔でみてくる。なんとなく察した俺は視線を逸らし外を見た。綺麗な青空だ……。


「現在マスターは2人になる。どちらも同じ魂だから実施1人だが、方針は変わらず見守る続けるのは変わらない」


 ただ、とシンバは言ったあと少し間を置き話す。


「マスターが2人以上いる可能性が出てきた」


「それは、本当なのですか?」


 銀色の髪に翡翠色のした瞳。黒いドレスを着ている妖艶な女性二アが驚きながら尋ねる。


「ああ、かなり高い。エルは俺がマスターにあげたネックレスを」


「シキはマスターに預けていた海の心を何故か持っていたんだ」

 

 シンバとディックの話しを聞いた紺色のスーツ姿の好青年ニクスが言う。


「何かしら俺たちと繋がる何かを持ってるてこと? てことなんだよね?」


 各々記憶を遡る。俺も遡ったが思い出せない。何かが邪魔して記憶を消している感覚がする。


「……思いつかない、というより思い出せない」


 静寂の中最初に口を開いたのはグリ。


「グリも? 私も思い出せないわ」


「僕も思い出せないや。白い霧みたいな靄?の様なものが邪魔してて無理」


 二アとニクスも同じことを言う。それに続いてライ、ダク、俺も同意した。

 神獣の俺たちにこんなことが出来るのは1人しか居ない。

 ライがお菓子を頬張りながら言う。


「何かの記憶を忘れる魔法が気付かないうちにかけられていんだね!マスターのことだから少しでも転生出来る確率を上げる為なのかな? うーん、マスターの魔法特殊だから分からない! ダク分かる?」


 ライに尋ねられ隣で紅茶を飲んでいるダクは答える。


「ライが分からないないなら僕じゃあ分からないよ」


「そうだよね。こんな面倒くさいことしないで私達に頼ればよかったのに……」


 そう言ってライは口を尖らせて文句を言う。

 俺はふと思ったことをシンバとディックに聞く。


「お前らは忘れていたのか?」


 そう尋ねると先に答えてのはディックだ。


「正直に言うと海の心を見るまでは忘れてた」


「俺は……微妙だ」


 複雑な表情をするシンバ。


「確か、マスターにあげたネックレスだっけ?」


「ああ、そうだ……」


 忘れてはいけない思い出を実は忘れていた可能性があったんだ相当ショックなんだろう。

 こいつは1度落ち込むと、とことん落ち込むから無理やり俺は話しを変えた。


「てことは俺たち神獣は全員で10柱。今見つかっているのは2人。残り8人はいるって事だな!」


「そうなるね」


 ディックの言葉に全員が頷く。


「なら引き続きマスターの探索は継続でいいな?」


 皆んなを見渡し、


「よし、これにて解散!」


 そう言うと各々席を立ち部屋を出て行く。部屋に残ったのは俺、ディック、シンバの3人になった。

 俺も部屋を出ようと思い席を立とうとしたらシンバが話しかけてくる。


「アレク、今日来てくれてありがとうな。この後予定あるか?」


 今から行っても大会には間に合わない。地元のレース場借りて走ろうとは思っていたけど、まぁ後回しでも問題ないな。


「急ぎの用はねぇなぁ。なんかあるのか?」


「そうか! アレクが良ければでいいんだけど食事でもどうかな?」


 パーッと顔を明るくさせ食事に誘ってくれた。


「タルの愚痴は聞かないからな?」


「ぐっ……わ、わかった言わない」


 こいつは昔からタルにいじられているから見てて気の毒だとは思うがそれに付き合う気はない。


「よし決まったな、ディックの店に行くぞ」


「えー俺の店なの?」


「おめぇの料理が美味いのが悪い、ほら行くぞ」


「それ褒めてるの?」


「100%褒めてるだろう。あー腹減った……」


 俺たちも部屋を出てディックの店に繋がっている魔方陣に乗り、一瞬体が浮き上がり気がついたらディックの店に着いた。

 店内に行くとテーブルを拭いていた2人目のマスターがこちらに気がつく。


「あ、皆さんおかえりなさいっす!」


「シキただいま〜。特に問題なかった?」


「はいっす!さっきまでお客さんいたっすけど特に問題なかったっす!」


「そういえばエルは?」


 周りを見渡しエルがいないことにシンバが尋ねた。


「エルさんなら地下室で足りなくなった食材を取りに行ったっすよ」


「手伝ってくる」


 そう言いシンバは駆け出した。どんだけ過保護なんだよ。


「アレク、席に座ってて。シキ手伝いお願い」


「はいっす!」


 俺は奥の席に行くのも面倒だったからカウンター席に座った。

 ディックとシキはほとんど話さず息ぴったりに料理をしていた。まるで舞でもみているようだった。

 地下室から階段を上る足音とシンバとエルの声が聞こえた。


「エルの分も持とうか?」


「これくらい大丈夫です!」


「だが怪我でもしたら……」


「本当に大丈夫ですので獅子堂様は、アレク様の隣で座ってて下さい」


「う、うぬ」


 少しだけ怒っているエルに気圧され俺の隣に座ったシンバに俺はさっきの会話に対して正直に言う。


「お前、ドン引きするレベルだぞ今の会話。確かエルは18歳だろう? 」


「19歳だ。エルは先日誕生日を迎えて19歳だ!」


 シンバは間髪入れずに答えた。


「そんなのどうでもいいわ!俺が言いたいのは! 」


「よくない! 1歳年をとることは俺たちにとっては些細なことでも人間のエルには大事な事だ!」


 俺とシンバは睨み合い席を立ち上がった。


「いっぺん表に出ろや臆病ライオン?」


「望む所だバイクオタク」


 ドアに向かおうと歩き出そうとした時、


「2人とも、これ以上やるなら出禁にするし料理も作らないよ?」


 笑顔だが目が明らかに笑っていないオタマを持ったディックが言い放つ言葉に、俺とシンバは冷や汗をかきお互いに顔を見合わせてくるっと回る。そして、


「「すみませんでした!」」


 90度に頭を下げ謝った。

 なんとか許してもらい少し早めの夕食をとっていると入り口ドアに付いているベルが鳴り1人の男性が入ってくる。


「いらっしゃいませってヨウ?!」


「おっすーシキ! シキの姿が見えたから寄っただけなんだけどここでバイトしているのか?」


「うん。って言っても1ヶ月ちょいしかまだ働いていないけど」


「へぇー」


 どうやらシキの知り合いらしい。俺は気にせず食事を続けた。

 すると、今度はディックが尋ねた。


「こんにちは、シキの知り合い?」


「友人でクラスメイトのヨウっす」


「春野ヨウっていいます」


「俺はソウ。一応この店の店主。シキの友人なら安く提供するけど食べてく?」


「いいんすか!? あ、これからバイトがあったんだ……ソウさんまた今度でいいですか?」


「構わないよ。いつでも来てね〜」


「ありがとうございます! じゃ俺はこれでーーえっ? アレックス・レーガンさん?」


 俺がたまたま時計をみていたら今代の名前を呼ばれ振り向く。


「俺のこと知っているのか?」


 そいつは目を輝かせ頭を何度も上下に動かす。


「はい、もちろん知ってます!俺、アレックスさんの大ファンなんです! ここで憧れの人に会えるなんて……すっげぇ嬉しい……あの、握手してください!」


「お、おう」


「わああああ、握手してもらった……夢みたいだ……」


 よほど嬉しかったのか手をまじまじと見つめている。


「ヨウ、バイトの時間大丈夫なの?」


「……え、あ! やっば! アレックスさん握手ありがとうございました! それと食事中にすみませんでした! じゃあなシキ」


「また明日!」


 慌しく足早に去っていった。


「よかったじゃんアレク」


「うっせぇー」


 揶揄ってくるディックをスルーして中断していた食事を再開した。



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