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雷霆の神獣・中

 あれから1週間が経った。

 今俺がいるのは地元のサーキット場だ。次の大会で結果を残して本命に挑む為に調整中だ。

 タイム的には問題ないが、本番では何が起きるかわからないのが大会だ。油断はしない。全力でやるだけだ。


 っても油断したのは1回だけだ。

 俺と契約する為に神殿に来たマスターに、戦って勝てば契約してやると、余裕ぶっこいていたら……雷の結界を潜り抜けて痛恨の一撃をくらった。

 見た目で判断するからと笑いながらマスターは言っていたな。


 ベンチに座り缶コーヒーを飲見ながら休憩していたら懐かしい気配を感じ、視線を向けると銀色の髪を腰まで伸ばし、少し褐色よりの肌、白の道衣に紺の袴を着た女性がこっちに歩いてくる。

 放浪癖があるがひよリルだ。


「リルじゃねか。何百年ぶりだな。イギリスに来てたんだな」


「久しいのアレク。ここの近くで歩いていたら戦いを挑まれてな。途中で逃げおって追いかけていたらお主の気配がしての、寄っただけだ」


 リルは裏社会じゃ有名な格闘家だ。武器無しでアジトに乗り込みいくつもの組織を潰している。

 理由を聞いたら強い奴と戦えるだろう?と表情変えずにリルは言い切った。そのせいで命を狙われる羽目になってるが嬉々として返り討ちしてる。


「次は確実に仕留める」


 リルは不敵な笑みを浮かべた。怖っ!


「そう言えばディックから2人目のマスターが見つかったと知らせがあったが戦えるのか? 1人目のマスターはシンバがダメと言ったのでな渋々諦めたが、どうなのだ?」


 手を腰に当てながらリルは尋ねる。

 急に話し変えたと思ったら。


「2人目は普通の学生だ。絶対戦いを挑むなよ。そんなことしてみろ確実にディックがキレるぞ?」


「ふぬ、ディックを怒らせるのは得策ではないな。仕方ない諦めよう……」


 リルは心底残念な表情を浮かべ、俺の隣に座り落ち込んだ。


「まあ、マスターは他にいる可能性あるし戦える奴がいるんじゃねか? そいつ見つければーー」


 ものすごい勢いで頭をあげキラキラした目でリルは言い寄る。


「そうか、見つければいいのだな! そうとなれば日本に行かねば! 待っておれマスター!」


 立ち直り早っ!


「そうと決まればアレク日本に行くぞ!」


「俺も行くのかよ! 1人で行けよ!」


「ほら行くぞ!」


 俺の手を引きリルは歩き出した。そして、俺のバイクを置き去りにし魔方陣に乗りシンバの家に向かった。




「アレクにリル……来るなら事前に連絡しろよな?」


 魔方陣の光が収まるとそこには腕を組み不機嫌なシンバがいた。


「タルが来てたのか?」


 そう尋ねるとシンバの額がぴくっ動く。やっぱ来てたのか。シンバが不機嫌になるのは大抵ーーいや、絶対にタルが原因だ。

 するとシンバは深い溜息をつく。


「……そうだよ。さっきまでいたさ! 散々俺を揶揄ってな!」


 少し考え思ったことを口に出した。


「いつものことじゃね?」


「そうだのう。相変わらずだのうお主らの関係は。まあ見てて飽きぬがな」

 

「他人事だと思って……! はぁー……それでお前ら揃って日本に来るなんてどうした?」


 半分脱力したシンバに経緯を話した。


「そうか。探す気になったのは嬉しいけど……理由が……まあいいさ。しばらくリルは日本で活動するんだろ」


「そうだ」


「なら、空いている部屋貸すよ。エルー」


 シンバが呼んでから直ぐにエルがやって来た。仕事モードの執事服だ。


「お呼びでしょうか獅子堂様」


「リルに空いている部屋を案内してくれ」


 シンバの台詞にようやく俺たちに気づいたエルは一礼した。


「じゃ頼んだぞ」


「かしこまりました。リル様ご案内します」


「うぬ」


 エルとリルは部屋を出て行く。


「アレクはどうする?」


「せっかく来たしディックの店寄ってから帰るわ」


「今からディックの店行くのか? もう閉店しているぞ」


「は? まだ12時だろう?」


 腕時計をシンバに見せる。


「アレク、ここ日本だから。今20時」


 シンバの腕時計を覗きこむとPM文字に短い針は8を指していた。


「時差か、本気で忘れてたわ……」


「明日にしたらどうだ? 時間あるんだろう?」


「あるっちゃあるけど」


「今日は泊まって行けよ、3人で飯にしよう!」


「仕方ねーな」


 その後エルの料理を俺、シンバ、リルで食べた。エルも誘ったが仕事だからと断られた。真面目なんだから。


 そして用意された部屋に戻ると置き去りにしていたバイクを思い出し急いでサーキット場に電話し回収してもらった。


 眠るためにベットに入ったが寝れない。気がつけば夜中の3時になっていた。気分転換にシンバの駐車場にあるバイクを借り夜中の街に出た。


 ビルの明かりに照らされた街を俺は無心でバイクを走らせた。しばらくすると雨が降ってきた。視界も一気に悪くなり近くにあった屋根のある公園に避難した。ついていないぜ。弱くなるの待つか。


 暗い空を見つめていたら雨の中走る足音が聞こえた。その足音はこちら近づいてくる。


「うわ……服ビショビショ最悪……雨止むかな……とりあえず服絞んないと」


そいつはシャツを脱ぎ絞り出した。人がいるのに良くできるな。てか、気づいていないのか? 俺は声をかけた。


「おい」


「え……えっ!! ご、ごめんなさい!人がいるんなんて思っていなくて……本当にごめんなさい!」


そいつは慌てて服を着直した。てか、どっかで聞いたことがある声だな。日本で話したのはシンバとエル。ディックとシキと……あ、1人いたな。大ファンで握手を頼まれた奴がいたな。名前なんだっけな。


「ヨウ、か?」


「……え、なんで俺の名前をーーってその声アレックスさん!? な、なんでこんな所に!?」


「とりあえず落ち着け」


「いたっ」


慌てているこいつの頭を軽くチョップする。おかげで大人しくなったが意外と痛かったようで頭を抑えていた。手加減したはずなんだが。


「そんなに痛かったか?」


「たんこぶあった所だったんでめちゃくちゃ痛かったです……」


「悪りぃ……大丈夫か?」


「大丈夫、です」


それ以降会話はなくただ、雨の音を聞いて時間を過ごしていた。


「ハックション!……ああ寒い…….」


ヨウは身体を震わせ、だんだんと顔色も悪くなって来た。大分暖かくなって来たが濡れた服を何時間もきていたらな。


「おい、大丈夫か? ここから家は近いのか? 送るぞ」


「ここから、だと……電車で、30分ぐらい……です」


喋るのも辛いのか途切れ途切れに伝えてくる。腕時計を見るとまだ4時前、まだ電車は動いてなかったはず。


「バイクで送ってやるから家の場所教えろ」


「はぁ……はぁ……家の……ば、しょ、は……」


「もう喋るな」


手で口を塞ぎ中断させた。

ディックの所は、遠いし、近いのはシンバの所か。一般人を連れて行くは良くないが緊急事態だし、シンバも怒らないだろう。

よし、決まりだ。


「悪いけど目瞑っててくれないか?」


「? はい」


ちゃんと閉じてるか確認して、ヨウをお姫様抱っこする。


「え、えぇぇ!? あ、アレックスさん?!なんでーー」


「静かにしろ。夜中だぞ! 周りが起き出すだろうが」


「え……そういう問題じゃ……」


「はぁ?」


「いえ、なんでもないです。静かにします……」


「よし、目瞑ったな? ぜってえ目開けるなよ!」


ヨウは腕の中で頷く。

腕に力を入れしっかり抱えてから雷の速さで移動し、あっという間に玄関に着いた。


「着いたぞ、平気か?」


「……」


声をかけたが返事がない

寝てるのか? もしくは気絶してるのか? まあいいや今は急いで寝かせねぇと。


「アレク様? どうしたんですかそんなビショビショで! それにそちらの方は?」


「事情は後で話すから着替えの服用意してくれないか」


「わかりました」


部屋に向かっている途中でエルに会い服を頼むと駆け足で取りに行ってくれた。

そのまま俺は部屋に行き、ヨウをベットに寝かせた。


「アレク様、服をお持ちしました。それと薬も一応お持ちしました」


「サンキューエル!」


濡れた服を脱がし乾いた服を着させる。濡れた髪も乾かした。そして、濡れた服を一式を持ち部屋をそっと出た。


「本当に助かったぜエル」


「他にお手伝いすることありますか?」


「大丈夫だ」


「わかりました。何かあれば仰ってください」


一礼してエルは仕事に戻って行く。

俺はヨウの服を乾燥機にかけ、そのままリビングに行きふかふかのソファにねっ転がる。


「はぁー眠い……」


それを最後にいつのまにか眠ってしまい、そして、数時間後にあいつの叫び声で俺は目を覚ました。



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