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プロローグ
不法侵入した二世帯住宅のバルコニーで夜空に呟く。
明日からまた、顔を洗わない生活が始まると思うと寒気がした。
熱を帯びた頬を冷ます風は、時に荒々しく。民衆に統治国家の限界を告げたのか…
「今からなら間に合うだろうか」
そんな筈はないと分かっていながら、諦めきれないのだ。
発売日が明日、つまり2時間後にまで迫ってようやく決心がつくなんて。我ながら愚かしい。
このまま鉛筆を削ろう。何度そう考えた事か。
結局この夕飯時には結論に至らぬまま、我(余)は新宿駅を濡らした。