アソートチョコでほっと一息
年末年始の神社は、多忙を極める。雪がちらつくものの、初詣に来る参拝客はとぎれない。
私はアルバイトで来てくれている巫女さんたちに指示をし、お神酒や甘酒を配り、ときどき葵様の様子を確認したりと大忙しだ。
今はまだ、来てくれる親戚の人が先頭に立って仕切っているが、いずれ私がそうなるのだ。
「双葉ちゃん、明けましておめでとう」
「あ、はいっ。明けましておめでとうございます」
「双葉ちゃんはしっかりしたいい子だねぇ。昨日帰ってきたうちの孫もね……」
と話に付き合えば、ついつい長引かせてしまう。お守りや縁起物の販売の方でそれをしてしまうと大変なので、私はお神酒と甘酒配りや、案内の方に回っているのだった。
「お疲れー、双葉」
「毎年大変だな」
よく似た冬用のコート姿のふたりが近づいてきた。一見カップルだが、雰囲気は違う。趣味のよく似たふたりの幼馴染みだ。
「五十鈴ちゃん、朔くん。明けましておめでとうございます」
「おー、おめでとう。今年もよろしくな」
「双葉にとっても、今年は節目の年だな。実り多い年になるよう、祈っている」
朔くんは私と五十鈴ちゃんと同じくらいの年頃だが、あやかしだから「節目の年」と呼べるような変化は少ない。
置いていかれるような寂しさがあるものの、彼が私たちの進路を祝福してくれていることは伝わった。
「葵様にも、今年はもっと頑張って加護するよって言われてさ。心強いよな。だって神様が応援してくれるんだもんね」
「そうですね。その期待に応えたくて、もっと頑張れますから」
葵様はこの町の神様だが、本来は稲荷の遣いだ。私は高校卒業後、その総本山がある土地で修行することが決まっている。それもついに三ヶ月先に迫ってきた。
「努力家なのが双葉の美点だとは思うが、身体には気をつけてくれ。休憩はいつなんだ?」
「あ、そろそろです」
「ならちょうどよかった。差し入れ持ってきたんだ」
年末年始は、社務所が休憩所代わりだ。ローテーションを組んでいるので、アルバイトの巫女さんたちも数人いる。たたみ敷きの和室では、だるまストーブが室内を暖めていた。
「ちょっとしたものだけど、はい」
五十鈴ちゃんがショルダーバッグから取り出したポーチには、小さなチョコレートがいくつも入っていた。
「手軽に食べられるものが良いと思ったんだ。味も数種類あるらしい。双葉も、菓子は好きだっただろう」
「いやー、朔がお菓子売り場で悩んでるの、シュールだったなー」
「朔くんが選んでくれたんですか。ありがとうございます」
きっと、いつものようにいろいろ考えた末に選んだのだろう。そこまで考えてくれたことが、何よりうれしい。
どれも見た目は同じだが、味はそれぞれ違うようだ。
一つ、口にする。中はキャラメル味で、チョコがほろ苦くて大人っぽい。次の一つには、いちごのソースが閉じ込められていた。甘酸っぱさが、チョコの甘さを引き立てる。
「葵にも渡したのだが、洋菓子ならばなんでも喜ぶからな。双葉はどうだ? 市販品で悪いが……」
「おいしいですし、朔くんのその気遣いもうれしいですよ。きっと、葵様もそう言います」
「そうか。それならば良かった」
こんな時の甘いものは、疲れに効くというよりほっと一息つける合図のようだ。それが誰かからもらったものなら、その優しさに心がほどける。暖められたチョコが、とろけていくかのように。
「この後も頑張れそうです。ふたりとも、ありがとうございます」
いずれは私が、その優しさを返したり、誰かにあげられるようになりたい。
冬のわずかな晴れ間からふりそそぐ光に、私はそう決意したのだった。




