かくれんぼとマドレーヌ
さわやかな風が時折に吹く。揺れるこずえの葉は、緑が陽の光に輝いていた。空は青く、白い雲がふわふわ浮いている。気持ちの良い初夏の昼下がり。
いつものように子供たちに誘われて、僕は面倒を見ながらも一緒に遊んでいた。
今日は公園にて。小学校から神社への道の途中にあるのだ。散歩をしていたら、そこから子供たちに呼ばれたのだった。まだ早い時間だからか、低学年の小さな子たちばかりだ。
ちょうど一区切りついたところ。次は何をして遊ぼうかと話し合いをしている時だった。
「い、入れてくれないっ?」
別の子たちが、相談の輪の中に声をかけてきた。
直感でわかる。あやかしの子供たちだ。僕は町の子ならみんな知ってるし、この前来た化け猫の子たちも交ざっていたから。
よにんいる。完全には化けきれていなくて、狸や狐の耳としっぽが視える。
今日は視える子がいなくて良かった。新しく増えた遊び相手を、子供たちは嬉しそうに仲間に入れた。
そして決まった次の遊びは、かくれんぼ。あやかしの子たちもいるので、全部できゅうにん。けっこうやりごたえがありそうだ。
じゃんけんで決まった鬼役は、こちらの町の子。この公園だと、僕が隠れられるような場所はないから、鬼のお手伝いで参加する。
「ねえねえ、葵様。あの子たちって、葵様のおともだちなんだよね。どこの子?」
僕の少し前を歩く、鬼役の女の子が聞いてきた。それに反応して、僕の耳はぴるんと動く。
「おとなりの町から来たんだよ」
「おとなりかぁ。だから学校で会わないんだね」
「他のお友達より会えなくても、仲良くしてくれる?」
「うん!」
この子はマイペースなのんびりやだけど、優しい子だ。ちょっと変わったあやかしの子たちとも、普通に接してくれるだろう。
「あ、みーつけた」
最初にみつかったのは、化け猫の男の子。しっぽが少し強めにぶんぶんと振られていて、悔しそうだ。それでも人の子と遊ぶのは、やっぱり楽しいみたい。
「あっちさがそ。おれ、さがすほうがうまいから!」
「そうなの? じゃあ、頼りにするね」
手をつないで、遊具のある方へ駆け出すふたり。人間とあやかし。これが僕の町で、僕が守りたい風景。
ほほえましくて、しっぽが揺れる。走るふたりの歩調と同じ、ぱたぱたというリズムで。
「ほら、ここにいた! みーつけた!」
「ほんとだぁ! すごいねっ」
化け猫の子が、自慢げに胸を張る。でも、僕とこっそり目配せする。実は、今みつかった狸の子の、ふさふさなしっぽが物陰からはみだしていたのだ。
それでも、女の子は尊敬の目差しで彼を見つめる。
「おともだちになろう。お名前、おしえてくれる?」
「綾斗、だよ」
「あやとくんね。わたし、真季。よろしく」
初々しくて、かわいいやりとり。つられて、僕のしっぽもふぁたふぁた揺れる。
その後も、みつけた子たちを加えながら探していく。それでも、そろそろ経つのに全員はみつからない。
ふとその時、誰かの足音に僕や他のあやかしの子たちの耳がぴるんと反応した。そして、甘い匂いがただよってくる。
「どーもー、葵様とみんな。あれ、見ない子もいるねぇ」
現れたのは、駄菓子屋のお兄さんだ。ちょうどこの公園から近いのだ。
手には小ぶりのバスケットを持っている。いつものエプロン姿も、今はカフェ店員さんみたいに見える。
「何持ってるの?」
「葵様、いい質問ですよ。駄菓子屋さんの気まぐれサービス、始めました記念~。試食ですが、ぜひどーぞ」
お店に来る人たちに、ちょっとしたお菓子をプレゼントするサービスを始める予定らしい。何なら作れるかとかいろいろ試行錯誤して、これも試作品だとか。
「マドレーヌは、貝の形でかわいいでしょ? 葵様も洋菓子お好きだし」
「そうだね、かわいい。みんな好きそうかも」
今いる子供たちは、駄菓子屋さんに駆け寄ってマドレーヌをもらっている。甘いバターの香りがする、かわいらしい貝の形のお菓子をほおばって、おいしそうに笑い合った。
さて、他の子たちも呼んであげないと。
「まどれーぬ、食べたい人は出ておいでー」
「はーい」
「食べるー」
あちらこちらから、隠れていた子たちが出てくる。かくれんぼに強くても、甘い洋菓子には勝てないみたいだ。




