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修学旅行とお土産ラスク

 高校二年生、秋。私達の学校では、この時期に修学旅行がある。旅先である京都周辺は、そろそろ紅葉の時期だからだ。

 旅行という特別感、何より仲の良い友達との泊まりは楽しかった。神社や寺社仏閣は紅葉に映え、けれど神社うちも思い出してどこか馴染み深さも覚えた。

 

 そんな数日を終えて、家に帰ってきた。学校まではツアーのバスだったが、神社までは距離がある。五十鈴ちゃんのお祖父さんが迎えに来てくれて、一緒に車に乗せてもらったのだった。

 

「葵様、ただいま帰りました」

「双葉っ! おかえり!」

 

 玄関で声をかけると、即座に飛んできた葵様に抱きしめられる。これだけ近いのはちょっと久しぶりだ。

 ぴこぴこ動く耳を間近で見て、帰ってきたことを実感する。安心して気が抜けるくらいには、私も寂しかったらしい。

 

「やっぱり、こっちは寒いですね。葵様があったかいです」

「そうだね。あっちは、今が秋真っ盛りなんだもんね」

 

 くるりとしっぽも巻きつけられる。もふもふしていて、心なしか数日前よりもボリュームが増しているようだ。こちらは本当に寒かったのだろう。

 

「玄関じゃ寒いよね。部屋に入ろ、あっためてあるから」

「はい」

 

 散々地面についたスーツケースを持ち込むのにはためらったが、葵様がタイヤが床につかないよう運んでくれた。おかげで私が自分で持ったのは、軽い土産物くらいだ。

 

 居間ではストーブが焚かれていた。いつのまにか、こちらでは暖房が当たり前の季節だ。

 急ぎの物は特にないので、そのまま座って話をする流れになる。台所から葵様がホットミルクを持ってきたから、私が帰るのを心待ちにしていてくれたのだとわかる。

 

「葵様、私の留守中は大丈夫でしたか?」

「ええー。帰って一番に聞くことそれなの?」

 

 不満げにぼふぁんとしっぽを一振りしつつ答えた葵様によると、神社の運営はうちの親戚がいてくれて問題なかったとのこと。家事は普段私がしているが、掃除以外は葵様も進んでやる。

 

「だけど、やっぱりちょっと寂しかったかな。だからかな、いろんなひとが来たよ」

 

 最も多く来たのは朔くんで、いつもより長くここにいてくれたそうだ。あちらも、五十鈴ちゃんがいなかったからだろう。

 いつもの来客や子供たちの他には、先日知り合った妖の町の薄氷さんも顔を出したらしい。案外、葵様と気が合うようだ。

 

「それだけ、葵様が大事に思われているんですよ」

「うん、うれしいことだよね。双葉はどうだった? 旅行、楽しかった?」

「はい、とっても。あ、伏見稲荷にはあいさつに行きましたよ。五十鈴ちゃんが付き合ってくれて……」

 

 持参したカメラで撮った写真をふたりで眺めつつ、そこでの出来事を話す。葵様は、ふぁたんふぁたんとゆったりしっぽを揺らしながら聞いていた。

 そこでふと、思い出す。お土産の中に溶けるものがあったのだった。

 

「あの、葵様へのお土産の一つにラスクを買ってきたんですけど、チョコがかかっているんです。溶けそうなので、和室にでも置かないと」

「ラスクって、洋菓子だよねっ。ありがと、双葉。僕が行ってくるから、もう休んだら?」

「いえ。まだもう少し、葵様といたいです」

 

 言っていることが、なんだか支離滅裂だ。たぶん、疲れているせいだろう。

 葵様の大きなしっぽに手を伸ばす。触れると、いつも通りの暖かさに、もふもふした手触り。そのまま、まふっと抱きついた。

 

「寝ちゃってもいいよ。部屋までつれてくから」

「じゃあ、お言葉に甘えます……」

 

 一撫でしたしっぽに、もふぁんとした心地よいもふもふを感じて、私は眠りに落ちたのだった。

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